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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『邸宅視察』

 ナスタが作った俺の家に、早速入ってみる事になった。



「……これ、崩れたりしない?」



 おっかなびっくり。当然だろう。みんなは平気な顔して入って行くが、俺から見れば積み木に等しい建築方法だった。


 接合部がどうなっているのか、まるでわからない。



「……釘? そんなの折れるじゃない。危ないわね……マナで繋ぐ方が遥かに頑丈でしょ?」



 事もなげに言われたが、視覚から得られる安心感の重要性について、誰かナスタに説明してやってほしい。



(……押したら壊れたりしないかな?)



 試すのも怖いんだが……。



「……見事だ。ナスタ嬢には驚かされる事が多いな」


「建築は何度か見てたことがあるの。すごくまどろっこしかったけどね」


「……現在の手法は効率が悪いと?」


「仕方ないのよ。精霊は命令に忠実。命令されなければ動けないんだから」


「……成る程、あの早さの違いはそこか」


「指示が無ければ動けない者と、そうでない者の差よ。どちらが上とは一概に言えないでしょうけど……」



 ナスタとランフェスが話しながら、正面の階段に向かって行った。



「アーリス様は、どちらに向かわれますか?」


「ん〜〜」



 既に図面は脳裏に焼付済みだ。


 まだ建具の類いが付いていないので、正面の玄関扉すら無いが、2階にせり出したテラスの様な出っ張りの下を通り、入り口に入ると先ず、天井まで突き抜けた広い空間がある。


 目の前には正面階段。上がりきったところに中央通路があり、その先の部屋が俺の私室だ。2人が向かったのは多分其処だろう。


 そして、その中央通路の左側が浴室で、右側が寝所になる。



「……浴室が見たいな」


「かしこまりました。お伴します」



 今はただの通路だが、図面で見れば、この中央の通路は後で四方が扉で囲われ、関所みたいな縦長の部屋になる。


……それは、まあ別にどうでもいいが、浴室の対面の向かった先に、どでかい寝所があるとか……何を目的として配置したのか一目瞭然だ。



(やる気があり過ぎる……!)



 更に、この設計の主線を引いたは、シャリアさんだと仰る。



(……この娘、実は凄くエロいとか?)



 妄想が捗りそうなところで、領主館のレイアウトを思い出した。



(そっか……そういえば、領主館の浴室も私室に近かったな……)



 あれは多分、湯冷めしない為のものだ。これも同じ考えの配置だろう。


……ピンクなのは俺の脳味噌の方だったらしい。猛省せねば。






「おお〜! 空が見える!」



 注文通り、屋根の無い浴室だ。



「……あの、アーリス様? 雨天の時や戸締りはどうするのですか?」


「上の方に、紋章陣でブラインド作る予定〜」


「……ブラインド?」


「木の板を横に滑らせて塞ぐのですよ」


「ああ! なるほどです」



 雨天のお風呂もそれはそれで……とか、思っていたのだが、「開きっぱなしは駄目」と、ナスタとランフェスからNGが出てしまったので、妥協して考えたものだ。


 風呂円柱の方も、木材であれば組み方次第で上下に動かせるらしい。毎回マナが必要とか言ってたけど、問題ない。気にしない。全力だ。



「おお〜、早く入りて〜!」


「……外で入浴なんて恥ずかしいですけど、アーリス様がお望みなら……が、頑張ります///」


「いや、そんな頑張らんでも……慣れれば、そんなに気になるものでもないよ? 覗き対策も完璧だから」


「…………はい///」



……やっぱり、恥ずかしいのだろうか?


 前の世界では、当然の文化だったから、シャリアに意識を合わせるのが難しい。



(……『湯着』も検討するか?)



 湯着は水着と同じ様なものだ。高額の物……紋章術が付与されたものは、『水が抜ける』らしい。


 小耳に挟んだ程度だから確かではないが、流水を妨げず、着用感が無くなるとか話してたような……アスガンティア人も、中々に色々考えるものだと思う。



「……アーリス? 何処だ?」


「こっちです! 浴室に居ます!」



 ランフェスが探しているらしい。こっちから行こうか? と、迷う間に向こうが先に動いた。行動が早い。



「……見事に天井が無いな。本当にやるのか?」


「勿論です!……あっ、そうだ。伸縮の柱の横に、穴開けられます?」


「穴?」


「お湯をそこからも出したいんですけど……」



 と、簡単に打たせ湯の説明をする。



「……そんな事も考えていたのか」


「いけるわよ? 他はいいの?」


「ん〜、砂風呂は要らない。サウナは一部屋潰せば後でも作れそうだし、足湯も特には……」


「待て、何の話だ」



 帰りの馬車で話すつもりだったが、機会が巡った。いま説明してしまおう。



「…………何とも奇抜な発想をしたものだな」


「……厳しいですか?」



 ランフェスが顎に手を当てて、検討する。



「……需要はありそうに思える。目新しいし、興味を引くだろう……ただ、建築の規模が大きい。それに、ジャグジーと言ったか? 確かに君の紋章陣の複製は出来ないだろうが、1人で全て作るつもりか?」


「……複製出来ない?」



 どういう意味だ?



「あんたの紋章は『点状紋章』って言って、ちょっと珍しいものなのよ。一般的な紋章は『線状紋章』」



 ランフェスが、俺の紋章をコピーしたさっきの紙を取り出して広げた。



「君の紋章は、全てが点の群れで構成されている。この紋章で作られた紋章陣には、同様の特徴が出る。複製しようと思えば、職人はこの点を全て追わなくてはならない」


「うげっ⁉︎」



 嫌すぎる。聞いただけで、うんざりする作業だ。



「点状紋章は『職人殺し』とか言われてるのよ。物にもよるけど、複製には年単位の時間が掛かったりするわ」


「専有したい、という君の希望は叶うだろうが、その分生産の負担がのし掛かるぞ?」


「うう〜〜」



 内職の日々は避けたい……が、流布してしまえば、あっさり追い抜かれるだろう。



「…………やります」



 覚悟を決める。将来の安寧の為だ。



「当人にその意志があるのであればいいだろう。幸い騎士団の方も、君から離れて動ける体制だ。今ならばまだ自由が効く。生産に注力する時間はあるだろう」


(……すまん、副団長諸君。団長は内職に勤しむ事になった)



 給料でも弾んであげようと思う。



「しかし……こんな方法があったとはな……」


(……あれ? 何かデジャブった)



 ナスタも似た様な事言ってた様な……、



「……ランフェス、五精族の代表として、この事業に全力を賭す事を『フロード領』に要請するわ」


「ナスタ⁉︎」



 領に要請とか、なんかナスタが凄い事言った。



「……応じよう」


「ええ⁉︎」



 応じちゃったよ! 何で⁉︎



「この事業の成功は、フロードも得る所が大きい。この内容であれば、領主の説得も容易いだろう。……まったく、君達はよくよく私の仕事を増やしてくれるものだ」



 いや、そんな意図は全然無かったんですけど……。

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