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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『精霊建築』

 はたから見ていて、俺が考え込んでいるのがわかったらしい。


 シャリアとランフェスは、気を使って静かに見守っていてくれた様だ。



「随分と熱心に考えていたようだが……?」


「……帰りの馬車で話します。ちょっと長くなるので」


「わかった……とりあえずは、君の家だな」



 ランフェスの呟きに合わせて、丁度馬車が停止した。


 コンッコンッと、騎手側の窓が叩かれ、到着が知らされる。



「ランフェスの旦那、到着しましたよ!」


「わかった……降りよう」



 ぞろぞろと降りると、



「おお〜!!」



 綺麗な平原が広がっていた。未開拓の意味がわかる。本当に何もない。真っさらだ。



(地質が悪いってだけで放置されてたのか……勿体無いなぁ)



 支流の橋の北側、川沿いから少し離れた場所。


 今馬車が走ってきたのは、北西見張り塔に繋がる道だったようだ。



「広いな〜…………おっ! あそこに俺の家が建つんですか?」



 見回すと、資材が山積みになっている所が目に入った。



「そうだ、早速向おう。基礎を済ませてしまいたい」


「おっしゃ〜〜!!」



 晴天の空の下、何も無い平原を走り抜ける。


……行動が完全に子供だが、興奮せずにいられない。



(俺の家〜、いぇ〜い!)


《ふふふ、ほんとに子供みたいよ。あんた》



 ナスタに揶揄われつつ、程なく資材の前に到着する。



(…………甘かった……)



 呆然。



――『デカイ』。



 地面に描かれた紋章陣が、家の大きさになるのだと考えれば……、



(なんだあれ、50Mくらい? いやそれ以上か?)



 平面の広すぎる奥行きで、目測が効かない。



「……アーリス様〜、速すぎです」


「ソシエの設計だよな⁉︎ あの図面数字書いてなかったけど、大きすぎない⁉︎」


「え? そうでしょうか? 個室の数を考えると、これぐらいになると思いますけど……」


「……妥当な大きさだろう。仮にも騎士団長の邸宅だ。あまり小さ過ぎても困る」



 追いついたランフェスも、この大きさが適当であると評する。



(……土地面積って、まじで価値観変わるんだなぁ)






 領民、ないし国民の裕福度は、その国の内政もさる事ながら、土地面積が占める割合も大きい。


 広いとは、可能性と生産力だ。


 農場、牧場や工場、邸宅など、施設の規模はどうあがいても土地面積に左右される。


 だから、前の世界では戦争がなくならない。


 より豊かになりたければ、土地を奪うのが一番手っ取り早いからだ。



(……まあ、思想のズレとかもあるみたいだけど)



 隣憎しは、国家間でやるようなものじゃ無いと思うが、為政者の才覚と民度が問われる議題だろう。


……そういえば、俺の前の母国は、とある国に毛虫以下の如く嫌われていて、事あるごとに槍玉に上げられていた。


 あんな島国で、資源も土地も期待出来ない様な場所に、何故あれほどに執着していたのか……、



(……ま、どうでもいいか)



 考え始めるとキリがない。


 方向が逸れたが、要は土地が余っていると、建築物は総じて大きくなるという話だ。小さく構える必要がなくなる。


 蟻塚もかくや……な、集合住宅を基本で考えてしまう俺の頭では、眼前の建設規模に目眩しかしない。


 家賃、住宅ローンの単語が脳裏を巡っても、致し方ない事だろう。……そんな心配不要だけど。






「……ナスタ嬢、本当に大丈夫か?」



 心配よりも、純粋な疑問と言った感じだ。


 そのランフェスの問いに、先程俺の中から出たナスタが、片手を振って応える。



「平気平気、始めるわよ〜」



 超軽い。余裕すぎる。



《……ここね》


「……ナスタ嬢が手を置いた位置が、あの紋章陣の起点だ。紋章陣の起動は2種。あの様な『起点起動』と、陣の何処でもマナを受け付ける『陣発動』がある。部屋の結界などが、陣発動だ」



……そう言えば、見ながら説明してくれるんだっけ。しっかり忘れてた。



「起動しろ、発動しろ、などと言い分ける者も居る。覚えていた方が良いだろう……と、始まったな」



 ランフェスが顎をしゃくるので、ナスタの方を見てみると、紋章陣が光っていた。



「起点からマナを送り、紋章陣の上の資材を動かして建造するのが、精霊建築だ。…………驚いたな」


「……何がですか、って、ええ⁉︎」



 資材の壁が『立ち上がった』。



「早過ぎる……もう2枚目だ」


「うそん⁉︎」



 見ている間に、次々と壁なり板なりが組み上がっていく。俺の目にも、ナスタがとんでもない事をしているのがわかった。


 何かの冗談の様に壁が立ち上がり、スーッと滑ると、外壁らしき位置で止まる。



〈ガンッ! カンッ!〉



 石材と木材がぶつかり合って、心地の良い音が鳴り響く。


 見ていると、この邸宅の外壁は外側が石材、内側が木材の様だ。



(別にそれは良いけど、間に緩衝材みたいなのないの?)



 石材と木材。材質の違うそれを、問答無用で二枚重ねにして外壁にしている。絶対おかしい。



 そうこうしている間に、1階の外壁部分が完成した。



「…………本気で検討すべきか? いや、この為だけではやはり弱いな……」



 ランフェスが何か小声で言っているが、ナスタの方から意識が反らせない。



(……すげー、嘘だろ?)



『柱が石壁を持って立ち上がり、テラスになる』。


『板がくるくる折り重なって、階段になる』。


『壁が空を飛んで、屋根になる』。



 ド派手なポルターガイスト。


 豪快でホラーな光景が、北西未開拓地の一画で繰り広げられていた。周囲に人が居なくて、本当に良かったと思う。



「……段取りが滅茶苦茶なのだが……」


「……段取り?」


「精霊建築は1階の基礎だけだ。2階から上は職人が担う……アーリス」


「……はい?」



 至極真面目な表情で、ランフェスが言った。



「普通、壁は飛ばないんだ」


「大丈夫です。その常識は知ってます」



 真顔で返した。


……その事前も十分埒外(らちがい)だったけど。



「………………もう完成しそうですね」


「…………だな」



 30分もたってない。ものの20分程度で作業完了。


……俺の家が、屋根を除いてあっさり完成した。



「いや〜、良い汗かいたわ〜」

「どこにだよ⁉︎」



 余裕綽々でナスタが戻ってきた。



「フロードの資材職人は優秀ね。積み方とか配置とかがわかりやすかったし、動かす時二度手間になら無かったもの……でも、屋根の分が無かったんだけど?」


「2階から上の部分は、後日の工程だ。流石に本日全ての基礎が完了するなど、考慮されていない」


「後で持ってくる予定だったのね……私は風で飛ばせるから、関係なかったのに」



 けらけら笑いながら、ナスタが言い切った。予定組んで仕切ってるランフェスに、土下座すべきでは無かろうか。



「アーリスの追加分って、いつ頃になりそう?」


「……ああ、向こうの兵舎が完了すれば、資材が少し余るだろう。それを流用する予定だが……」


「ふ〜ん……ま、いいわ。これで内装にかかれるわよね?」



 得意満面のナスタ。その笑顔が言外に語る。「急げ」、と。



「……急ぎ手配しよう」



 呻くような返答。


 想定外の建築速度に、頭を抱えていた。

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