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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第二章 ~『原点』~
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『儲け話』

……可能であれば、この世界の流通、経済の流れを把握してからゆっくり、とか思っていたが、周囲の行動が思いのほか早い。


 のんびりしてると、置いていかれる。


 早急に、草案くらいは考えておいた方がいいだろう。



(……本腰入れるか)



――異世界で稼ぐ。



 前の世界で行われていた、異常な数の思考実験似た創作物の数々。その産物の1つ1つを検証し、潰していく。





 まずは『討伐』。普通に魔獣などの魔物を倒して、溜め込んでいた金品を回収する手段。依頼の達成報酬などもここに該当する。


 X……、俺に安定した戦闘能力が無い。加えて既にやらかしている為、許可も下りないだろう。特にシャリアが怖い。ぶるぶる。




 次は『調理』。料理で魅了する。


 X……、目玉焼きがスクランブルエッグになって、妹に指差して笑われた俺に、そんなスキルは無い。


 更に補足すれば、アスガンティアの食文化は、既にかなりレベルが高い。


 木や土の精霊で自由に栽培出来るようで、食材が豊富だ。製法もカレーとかが普通にある時点で、俺が入れる余地は無いだろう。




 次、『生産』。加工、創造、鋳造、細工。


 X……、不器用では無いと思うが、商用に出来る程とは思えないし、1人で作り続ける訳にもいかない。量産なら人を使う必要があるが、騎士団の性質から大きく離れる。




……『知識』。新商品や技術供与などなど。


 X……、無いよ! マヨネーズももうあるし、リンスとか化粧品とか俺が知る訳ねーだろ⁉︎


 仮に知ってても、『混ぜれば出来る』、何て物じゃないだろう。配合比は? アレルギーは? そもそも異種族は前の世界の住人基準で考えて良いのか? 同じ効能が得られる保証なんか無いぞ?






(……あかん、俺、マジで使えない)



 散々考えた結果は、散々だった。



(どーすっかな〜……この世界の需要は何だ?)



 アスガンティア、フロード領に足りないもの。



(……無いんだよなぁ)



 パッと、思い付くものがない。


……考えてみれば、あのアゼスターとランフェスが仕切っている領だ。そうそう死角が見つかるものではないだろう。



(くっそ! なら、逆だ。不足需要じゃなくて、必須需要で考えてみるか……)



 ここの領民が好むもの。日常的に使用していて、恒久的な需要がありそうな商品。



(……そんな都合のいいもの、あればとっくに誰かが………………あっ!)




『外で入浴とか、聞いたこともないわ』


『地面にお湯が埋まってる訳ないでしょ?』


『先程の入浴方法のような奇抜な発想で、儲け話でも考えてくれ』




……温泉。


 フロードの領民は風呂好きだ。


 男女別を徹底すれば、余地がありそうな気がする。


……ただ、このままだと、あっという間にパクられる。


 投資しても、『商品』としての寿命が短すぎて回収出来ない。だけど、



――『高級スパ』。



 こっちなら、様々な入浴方法やサービスで、長期的に顧客を獲得する事が出来そうだ。



(……いけるんじゃね?)



 それに、ナスタに精霊術と紋章術について、詳しく聞く必要があるが、パクリ抑止で使えそうなのが、1つある。


『ジャグジー』だ。


 おそらくこれは、水の属性だけでは再現できない。


 水を動かして大気を取り込む事は可能だろうが、複雑になるし、コストが大きくなるだろう……多分。


 対して、風なら簡単だ。送り込めばいいだけですむ。



(……水と同じ様に風も多分『作れる』。前にナスタは「風を起こせるだけ」って言ってたし……)


《言ったけど、それが何?》


(ぬお⁉︎)



 考え事に、ナスタが入ってきた。



(何で来れんの⁉︎)



 今まではここまで来れなかったのに⁉︎



《契約者……つまり、あんたが嫌がるだろうから、深いところには入らない様にしてたんだけど、なんか単語が凄いから気になって……》


(単語?)


《そこら中に書いてるじゃない。この間は本一冊あるの見つけて吃驚したわよ》


(『脳裏焼付』読めるの⁉︎)


《脳裏焼付って言うのね、これ。……神さま絡み? 私にも解る辺り、神域には届いてないみたいだけど……》


(……丁度いいや、相談があるんだけど……)



 かくかくしかじかで、思いつきを話す。



《…………こんな方法が…………》


(……ナスタ?)



 なんか、感動? してるっぽい。



《……凄い、凄いわ! これ! 他には無いの⁉︎》


(他にって?)


《思いついた事よ! 洗いざらい全部話しなさい!》



 興奮するナスタを宥めながら、前の世界の入浴施設にありそうな物を列挙して、脳裏に書き込んでいく。



 ジャグジー。

 打たせ湯。

 足湯。

 水風呂。 

 砂風呂。

 サウナ。

 マッサージ器具。



 これらを全て丁寧にナスタに説明した。



《ジャグジーは『風』。打たせ湯と足湯、水風呂は『水』ね。砂風呂は、自分で被れる様にするの? なら『土』で出来ると思うわ。サウナは水蒸気……これ、お風呂なの?……まあいいわ、全部に言えるけど、温度調節は『火』ね。後は……マッサージ器具? マナの供給量で駆動を調整するなら『木』かしら?》


(……全属性使うのかよ……じゃあ無理か?)



 想像以上に大掛かりだ。世の中そんなに甘く無いらしい。



《何言ってんの! 十分可能よ。全て紋章陣で解決するわ!》


(マジか⁉︎……って、それじゃあ即効でパクられるだろ)



 残念ながら、特許が獲得出来ないならNGだ。サービス業は基本的に模倣されやすい。



《……いいえ、この『ジャグジー』っていうのだけは無理よ。絶対に模倣出来ない》


(……風の紋章陣?)


《正解。行使は紋章術……つまり、紋章陣の起動になるけど、この風の紋章陣を描ける奴が、今の人族には居ないの……私達以外には、ね》



 製法じゃなくて、製造段階で制約が掛かる訳か……ちょっと想像と違ったけど、専有出来るならば問題はない。


……でも、



(1人も居ないって事は無いだろ?)



 このアスガンティアで、風属性の契約者が俺だけって事は無いはずだ。



《1人も居ないのよ。本気で需要が無いの、風属性って》


(………………)



 かける言葉が見つからない。まさか、そこまで敬遠されているとは思わなかった。



《ラッキーね♡》


(…………あれ?)



 消沈しているかと思えば、全然だ。



《この……高級スパ?、の設計って直ぐに出来る?》


(…………お豆腐で良ければ……)


《……豆腐?》


(四角いって意味)


《丸でも四角でもいいわよ……脳裏に書き込んで。計算するから。帰りの馬車でランフェスに話すわよ》


(……わかった)



 本当に、アスガンティアの住人って行動が早い。


……もっとのんびり生きるべきだと思います。

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