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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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ナスタ『事後処理 1』

 アーリスが寝入ったのを確認すると、ナスタは空核に向き直った。


 マナに自分の属性を付けて、空核に送り込み、中を全て埋めてから、自身に取り込んで回収する。



(…………まだ残ってたなんて……)



 空核は、ある人間が創った物らしい。


 一つの種族の在り方を変え、世界の様相を変転させた、その原因となった『魂を抜き取る珠』。


 本当なら破壊してしまいたいが、空核は『絶対に壊れない』。


 物理も精霊術も何一つ通じない。


 こんな物を、何故人間が『量産』出来たのか……、



「ナスタ嬢!」



 振り向くと、ランフェスとマークス、シャリアが駆け寄って来るのが見えた。


 その後ろに兵士達の姿も見える。



「アーリスは無事か⁉︎」

「アーリス様! アーリス様!!」



 泣きながら走るシャリアが痛々しい。


 主従の絆が育つには時間が必要だ。会ってまだ半日も経たないシャリアに芽生える訳がない。


……つまり、



(……ベタ惚れじゃないの)



 と、言うことになる。


 自分で画策したとは言え、『吊り橋』にここまでの効果があるとは思わなかった。



「ソシエ! 大丈夫よ!」


「ナスタ! でも「落ち着きなさい!」」


「水なんだから癒しは使えるわね? マナは私から出すから、外傷を塞いで」


「はい!」



 シャリアがアーリスの傍に駆け寄り、縋るように精霊を行使し始めた。



(体内のマナはまだ充分ある。怪我も打ち身が殆ど……シャリアだけで処置出来るわね。後は……)


「ソシエ、精霊杖の残りを使っていい、……ナスタ嬢、何故マナに余裕がある? アーリスは無事なのか?」



……正念場だ。アーリスの大量のマナを、ナウゼルグバーグの物と誤認させ、空核の存在を有耶無耶にする。



「……身体は無事よ。マナはナウゼルグバーグから貰ったわ」


「……ナウゼルグバーグから?」


「そうよ。魔獣に個体差があるとは言え、異常だったのは判るでしょう?」


「……ああ、すまない。こちらの予測を全て覆す驚異だった。まさか、作戦の実行すら許されないとは……」


「……誠に申し訳ありません。指揮を任されていながら、何一つ功を挙げられませんでした」


「……いや、今回の責は私にある。短期決戦に執着し、街壁の近くを戦場に選んだのは失敗だった。ナウゼルグバーグに、よもや街結界を発動させるだけの力があるとは……伝え聞く特徴とは、まるで異なる。侮りが過ぎた様だ」


「いえ、見た限り、死傷者は確認出来ません。靄の恐怖で気絶した者ばかりです。戦場を別にしていれば、戦力をアーリス様に随伴させねばなりません。……間違い無く、犠牲が出たでしょう」


「……しかし」



 ランフェスが拳を握って、言葉を探す。


 それを、マークスが首を横に振って否定した。



「加えて申し上げれば、あの規模の靄から、ソシエ嬢を守る事など不可能です。持久戦も難しい……マナが足りないでしょう。結界師、護り手、囮と全滅の予想しか出来ません」


「………………」


「お渡しになった精霊杖に、フロードの領紋が見えました。龍脈から直接吸い上げたマナが入っているのでしょう?」


(……怪我の功名ね。街壁から届かせる為に使用したんでしょうけど……)



 結界を越える事は出来ない。


……が、同質のマナだけなら、抜ける事は可能だ。


 街結界に使用されるマナは、龍脈で賄っている。


 結界を張る前に精霊を発動し、遠隔から簡易な操作を行うだけなら、精霊杖を用いれば実現出来るだろう。


 今回は、その条件に意図せず当て嵌った。シャリアのマナでは、結界の先の精霊を操る事など出来なかった筈だ。



「……反省会は後にしよう」


「ランフェス様に落ち度はありません。不甲斐ないのは私の方です」



 男どもは悔恨に包まれているようだが、慰める気も取り合うつもりも無い。



「あんたらの泣き言に付き合うつもりは無いわ。さっきの話に戻るけど、印を付けられた事でアーリスとナウゼルグバーグは繋がっていたの」


「……承知している。何はともあれ、印が消えた事に安堵しかないよ」



 本人は気付いていなかったようだったが、アーリスの印は既に消えていた。


 これは、ナウゼルグバーグ討伐完了と、アーリスが呪縛から解かれた事を意味する。



「ナウゼルグバーグが見えた時は驚いたわ。あんなにマナを内包した相手だとは、思っていなかったから……」


「ああ……だから、『逃げろ』と叫んだのですね……、いきなり何事かと思いましたが」


「ええ、その繋がりの対応で私は手一杯になったのだけど……結局、アーリスが倒したの?」


「いえ、正確には所属不明の子供らしき弓兵が仕留めました」


「……子供の?」



 ちらりと見遣るが、子供の弓兵など見当たらない。



「……そちらには私の方に心当たりがある。おそらく名乗り出る事は無いだろう。ナウゼルグバーグ討伐の功績はアーリスのものとなる」


「……政治は任せるわ。それで、倒した瞬間は繋がっているマナの流れでわかったから、そのまま引っ張って貰ったのよ」


「……精霊にはそんな事が出来たのか……」


「無理よ」



 ランフェスの呟きを即座に否定。検証されたらバレる可能性がある。精霊には出来ないと予め断定しておく。



「契約した者以外のマナを操る事など、五精族には出来ない。印で繋がっていたからこそ出来たの。……そうね、綱引きで相手がいきなり手を離したような感じかしら?」



 口元を覆って、ランフェスが笑う。



「穿った表現だな。わかりやすい」


「……それはどうも。そして、印か何かで繋がっていたとしても、その綱は契約によって縛られた精霊では、握る事すら出来ないの」


「……精霊自らの意思で手繰る必要があると?」


「ええ、そんな感じよ」


「ふむ、興味深い知見だ……が、とりあえずこの場の事後処理を優先するか……」


「マークスさん! 魔獣の核が見当たりません!」



 ランフェスが切り上げようとしたのと同時に、弓兵から報告が上がる。



「何だと⁉︎ ならばまだ何処かに居るのか⁉︎」



 兵士達が騒つく。


……ランフェスは空核を知っている可能性がある。ここを凌いで、当面の時間を稼ぎたい。



「ごめんなさい……それ、多分私だわ」


「ナスタ嬢?」


「さっき言った『綱引き』で引っ張り過ぎたのよ。全部引っ張っちゃったの」


「……魔獣の核ごとか?」


「ええ、おそらくね。魔獣はエーテルの塊だけど、食べたマナは核に溜めるから……紋章術で同じような事を人間もしているでしょう?」



 原理はまるで別だが、類似例を示して理解を早めてやる。



「……確かに。マナの無い武器で魔獣を仕留めれば核が残りますが、紋章を用いた武器では残らない事があります……本当に興味深いですね。五精族との対話は、人間にとって新しい見識を得る機会となりそうです」


「…………機会があれば、ね。悪いけど、自分の主人を優先させてもらうわ……ソシエ、どう?」



 すぐそこで奮闘していたソシエに問いかける。



「…………外傷は全て塞ぎました。ご無事です……良かった。本当に良かったです……ぐすっ」


「泣かないの、まったく……ランフェス、直ぐに運びましょう? ここじゃ落ち着かないわ」


「そうだな……マークス、指示を。見張り塔の医療室に頼む」


「了解しました。担架を用意しろ! 二班は……」



 マークスが輪を離れて、部下に指示を出していく。



「我々も移動しよう。諸々の処理が終わり次第、すぐに向かう。詳しい話の続きはそこで」


「わかったわ。ソシエ、着いたら教えて。それまでアーリスの中でマナを循環させるから……医師は呼ばないでちょうだい、邪魔になるわ」


「わかりました」



 担架に乗せられたアーリスの中に戻った。


 続きは街に帰ってからだ。

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