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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
序章 ~『十の権利』~
5/216

十の権利・その後 『青』の創造神

19/07/22 段落 修正

20/01/05 ちょっと修正

――『レーゼル・フロード』――



 名を与えた事で、彼はその名の身体を得た。


(どうにか事無きを得ましたね)


 何とか、あの個体に対する唯一神の依頼を全て達成することが出来た。


1つ、極限まで追い込み『死』を自覚させる事。

1つ、目的を与えずに転生する事。

1つ、特性に『身代わり』を付与する事。


(……退屈しのぎに戯れる事はありますが、限度があるでしょう)


 自我崩壊の危険を冒してまで『死』を自覚させる必要など無い。自世界と異世界の差異で混乱し、自壊する恐れのある個体には必要な措置だが、あの惑星の住人には不要だ。そのまま転生すれば、勝手に環境に適応する。


 目的は明示しなければ、此方の意図しない行動をとる可能性が生じる。目的と報酬があれば人は動く。比較的容易に操れる。何も指針を示さないなど論外だ。


 特性の『身代わり』も戯言にすぎる。あんなもの、何の役にも立たない。他者の代償を引き受けるなど何の益になるというのか。


(……少なくとも、彼の魂の得となる事は無いでしょうね)


 唯一神の指示をそのまま遂行すれば、あの魂は何も為さないまま失われただろう。


(唯一神がそれを望まれるとは思いません……)


 あの惑星の住人は貴重だ。科学技術に特化していながら、非科学的事象にも造詣を有する……相対する事象を受け入れる土壌を獲得した例外種。異なる世界でも発揮される環境適応力など、安易に使い潰して良いものではない。


 だから、依頼を踏襲した上であの魂を損なわず転生させるべく動いた。


 死を自覚させた後に『救い』、目的を『何をしても良い』とすり替え、特性を1つ追加して『釣った』。


(救わねば、そのまま失われてしまう……役に立たない特性では、転生者が働きません。調整個体として選定した意義が損なわれます)


 この点に関しては、自身の判断に誤りは無いと断言できる。


(……しかし)


『目的を与えるな』との指示だけは先が読めない。


 転生個体として選ばれた以上、何らかの役割を被る筈。


(己の為す役割も目的も告げられず、与えられた特性の片方は『身代わり』)


 彼は至るだろう。それに気付かないほど無能では無い。


(せめて、その対象が彼にとって価値を見出せるものであれば良いのですが……)


 そして、その対象が彼の魂の終わりに訪れるものであればいいと思う。


(……………?)


 ふと、『赤』から揺らぐ様な気配を感じた。



ーーーー不満。



 無貌の像から表情を伺う事は出来ないが、それに類する気配を感じる。



《……何かあったのですか?》


《……いえ、何も》


(……珍しいですね)



 人間が好きな彼女は、人間で『遊ぶ』。


 権利の行使とは、突き詰めればその人間の『欲』そのものに等しい。


 今回は10もの権利が与えられた。彼女であれば、その人間の全てを暴き、弄ぶだろうと思っていたのだが……。


(直前で虚偽を封じられたのが要因でしょうか?)


 あれは創造神側にとっては枷にしかならない。


 人間に伝達すべきで無い事象や知識が存在する。それらが流れないように、虚偽を混ぜて回避するのが常だが、それを封じられた。


(……弄ぶ間も無く、やり込められたのでしょう)


 人間は小狡い程強かに、そして貪欲に知識を欲する。限られた時間と条件は、時としてそれに拍車をかけ、こちらを上回ることすらありうる。


(その点で言えば、彼は従順でしたね)


 一問一答を避けたのは追求を逃れる為だ。複数の問いの中で1つでも回答すれば、当面の理解を得ることができる。


 先に身近な物を連想させ、それに当て嵌めて説明すれば、勝手に自身で補正し、納得する。


 どちらも(ウソ)は吐いていない。語らなかっただけだ。


 追求されれば、虚偽を封じられたこちらに逃げ場は無かった。



……で、あれば?



(『赤』が担当した者の中に、権利を用いて真理を追求し、神域に近づいた者がいる?)


 確認すべきだろうか。内容次第では世界に与える影響が大き過ぎる。



《無用の懸念ですよ》



 こちらが行動する前に『赤』に遮られた。



《少々乱暴ではありますが、手は打ちました。あの魂は成人前後で輪廻に還るでしょう》


《……それ程ですか?》



 他の担当の内容に触れるのは禁忌だ。詳しく聞く事は出来ないが、今の返答でおおよその検討は付けられる。


 つまり、成人するまでに排除する事が望ましい程の影響力を持った個体が、あの世界に転生したのだ。



《心配は要りませんよ。さあ、楽しみましょう?》


《……本当に趣味が悪いわ、あなた》



 転生者の行く末など楽しむものではない……が、再開の約束をした彼の人生には関心があった。



『赤』の言う通り、自身の享楽を否定出来ないまま、『青』は下界を覗んだ。

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