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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『正体不明』

*文字サイズ100%以下推奨です。

 俺の瞑想は、一点凝視瞑想に独自のアレンジを加えたものだ。



『瞑想する自分を後ろから見る』。



 思えば、俺の瞑想のやり方とさっきの弓のコツは、確かに酷似している。



 的を『焦点』に、


 自分の『後ろ』に線を引っ張って、


 その先から的を『見る』。



(……酷似どころか、まんまじゃねーか)



 当然だが、本当に自分の後ろ姿が見える何て事は無い。


 意識のズレ、たった1分しか保たない自分の客観視が、俺の瞑想の正体だ。



――俺は今、そのズレた場所にいる。



(……色が無くなるのは初めてだな。異世界効果?)



 降って湧いた貴重な経験。


 だが、それを堪能する時間も無いまま、ナウゼルグバーグが動き出した。



(間に合わなかったか……)



 左肩のダメージは大きいが、足はまだ動く。



(……次は躱してやる)



 意識がズレているとはいえ、身体との繋がりが切れている訳じゃ無い。


 指示すれば動かせる。



(まずは立て)

立つ               [――]

(腰を落として構えろ)

腰を落とす           [――?]

(……? 待て、何か遅い)

待つ             [――――?]

(さっきと違う?)

……            [――――――?]

(…………狙えるな)

……           [――――?]

(剣を抜け)

剣を抜く        [――――――?]

(奴の右目を狙え。そのまま貫く)

……         [――――?]

(……鈍いな? 水平に剣を上げて、右目を狙え)

……        [――――――ッ⁉︎]

(――ッ、早く!)

……       [――――ッ!]

(構えろ! 間に合わなくなる!)

剣を構える   [――――ッ!]

(水平に上げろ! 斜めに持つな!)

水平に持つ  [――――ッ!!]

(ズレてる! 右目を狙え!)

右目を狙う [――――ッ!!!]

(両手で持て! 動かすな!)

両手で持つ[――ッ!――ッ!!]

(やれ![――――――――ッ!!!!!!]

「嫌だ[――――ッ⁉︎]」






〈ドンッ!!!〉



 バラバラになるような衝撃と共に、世界に色が戻った。


 俺が右目を狙って構えた剣は、体当たりをしてきたナウゼルグバーグの『眉間』に刺さった。



「ぐふッ!」



 右半身にモロに喰らう。


 数メートル吹っ飛んで、そのまま地面に叩きつけらた。



「――ゲホッ!」



 回避を諦めて狙った一撃は、身体の反応の鈍さで失敗した。



「……なんだ、これ」



 仰向けに空を見上げて、ポツリと呟く。



――泣いていた。



 全身が痛いが、痛みの涙じゃ無い。


 ぼろぼろと溢れる涙の理由がわからない。



「いや、泣いてる場合じゃないだろ」



 矢を20も30も打ち込まなきゃ倒せない相手だ。



(……まだ、終わっていない)



 無理矢理立ち上がる。


 振り返ると、眉間に剣を刺したまま倒れ伏せるナウゼルグバーグが居た。



(……普通の動物なら絶対死んでるけど、たぶん奴はまだ生きてる。『リスク』で立てないだけだ。回復する前に倒せないと、俺がもうヤバイ)



 身体を引き摺るように近づいて、柄を両手で握りしめる。


 体重を込めて、刺さった剣で地面に抑え込む。



「……〜〜ッ! さっきからなんなんだよっ、これ!」



 涙が止まらない。


 こんこんと溢れてこぼれていく。


 意味がわからない。



 何で俺は泣いている?


 痛いからか?


 怖いからか?


 泣く理由はどこにある?



(……殺したくないのか?)



 唐突な自問に喘ぐ。


 馬鹿馬鹿しい、()らなきゃ()られる。


 今まで喧嘩もした事が無いくらい、闘争とは縁遠い俺だが、この状況で慈悲をかけるほど間抜けじゃない。



「……有り得ないだろ? おかしいだろ?」



 止まらない。


 理性は冷えてる。感情も静かだ。


 なのに、全然止まらない。



「――ッ、……知らない。ここでトドメだ!」



 剣で地面に縫い付ける。


 体重を落としてグリグリと突き刺していく。



「……痛い、やだ」



 深さが足りない。もっとだ。



「やだ、……うぁ、……ひっく……うぅぅぅっ」



 駄目だ。まだ足りない。



「やだぁぁぁぁぁっ!!!」



 何処かで俺が泣く。


 子供のように駄々を捏ねる。


 泣き叫びながら抉っていく。



「うわあああぁぁぁんっ!!」



 生き物を殺す苦痛か、別の何かか。


……忌避する。殺害を。殺生を。



『殺してはいけないと』。



「――ッ⁉︎ ――うぅっ、ふざけんなッ!」



 涙声を怒鳴って散らす。



――レーゼルを殺した奴だ。


――レーゼルに託された敵だ。


――ここで必ず始末する。



 正体不明の涙で歪んだ俺の瞳が、睨むように獲物を見据える。その先で、




――奴の右目が『黄色』く光るのを確認した。




(――ッ! コイツッ!!)



『回復した』。



「ひっく、くっそぉぉぉ!!」



 抑え込む。柄に覆い被さるように体重を乗せる。



(やばっ、強いッ! 返される⁉︎)



 跳ねるように暴れる魔獣を抑えきれない。


 刺さった剣が徐々に傾く。



(――ッ⁉︎ マズイッ! 抜けるッ!)



 立ち上がりつつあるナウゼルグバーグを、止める手立てがない。



(ぐぅぅぅっ!!)



 力を込めて押す事しか出来ない。



――そこに、



(――え?)



 矢が飛んできた。


 魔獣の前脚を貫く。


 ナウゼルグバーグの体勢が崩れて、巻き込まれる。



「わわっ⁉︎」



 ガクンッと落ちたと同時に、靄が噴き出した。



「んなっ⁉︎」



 その靄を切り裂くように、二矢、三矢と突き刺さる。



(なんだ⁉︎ 誰だ⁉︎ 脚だけ正確に射ち抜いてる!)



 今までと靄の濃度がまるで違う。レーゼルの時のような視界を遮る濃さだ。


 その所為で何も見えない。それは射手も同じだろう。なのに、迷う事なくナウゼルグバーグだけを正確に射抜いていく。


……この靄の濃さでは、誤射の可能性も出てくる。『離れる』という選択肢が頭を(もた)げる……が、



(……この射手の腕を信じる!)



 ナウゼルグバーグを剣で縫い止めるのを優先する。


 耳栓はまだ効力を発揮している。射手が「退け」と言っても、俺にはわからない。


……だから、



「――やれッ!」



 意志を告げた。


 応じるように淀みない連射が始まる。



(……マジかよ、とんでもねぇ)



 脚、腹、肩、頭、関節、と、急所部位をまるで見えているかのように、俺を避けて射抜いていく。




 囮の俺が、ナウゼルグバーグの動きを封じる。


 弓兵が遠距離から矢衾(やぶすま)に射止める。



 当初から計画されていた、ナウゼルグバーグ討伐の陣形が整った。




……今までの苦戦が嘘のように、呆気なく勝敗は決した。
































【「残り4つ」】

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