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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『洗礼』

 3人の漫談を、笑いを堪えて見ていたシャリアに、ランフェスが5色の棒みたいな物を渡した。



「……ソシエ、これを」


「……よろしいのですか?」


「許可は出ている。全て使って構わない、頼む」


「……わかりました。必ず」



……何か意味深な会話してる。



「何ですか、あれ?」



 側に居るマークスに聞いてみる。



「……おそらく『精霊杖』でしょう」


「杖? 短いですよ?」



 30cmも無いだろう。



「長い物もあります。精霊を扱う貴族の使用するものです。我々のような前線兵士には無用の長物ですよ」



 成る程。


 前線志望のレーゼルが興味を抱くような物では無い。知らん訳だ。



「内部の圧縮されたマナで、より精度の高い精霊の行使が可能となります」



……貴族が知らないのは、やばそうな代物なんですが。


 そー、とランフェスを見てみる。


……うん、いい笑顔だ。逃げたい。



「しかも、あの精霊杖は……いえ、急ぎましょう」



 スタスタと足を早めるマークス。


 子供の徒歩では追いつかないので、置いて行かれないように駆け足で頑張る。





 街壁の上には既に弓兵が並んで配置しており、門の前にはフロードの所属腕章を着けただけの、装備の(まば)らな集団が見えた。外部登録者達だろう。



「レドルは下を頼む。ソシエ嬢は私と上に参りましょう。アーリス様、御武運を」


「アーリス様、無理は決してなさらないで下さいね」



 敬礼と共に、2人は街壁の登り階段へ向かった。



「私は見張り塔へ向かう。アーリス、後で必ず会おう」



 ランフェスが南西の見張り塔へ歩みを変える。


 俺とレドルはこのまま直進だ。



(あれ? ジーグさんしか居ない……)



 門の開閉は2人で行う。


 この西街壁門はソギルとジーグの担当だ。


 どうしたんだろう? と、ジーグを見ていると、



……目が合った。



ーー『恐怖の混じった驚愕の表情』。



 直ぐに取り繕って、ぎこちない笑みを浮かべた。




『あんたは今領民に会うべきじゃない』




……そう言うことか。我ながら鈍い。




 遺体は西街壁門の道を通過した筈だ。


 この周辺の住民と、領主館の一部の者は知っているだろう。


『レーゼルは死んだ』と。


 その事実を知る者が、俺を見たらどう思うか。



『不気味』、

『気味が悪い』、

『異質』、

『異様』、

『異常』。



……その視線が、俺の負担になるだろうと思われたから、執拗に匿われた。




……保たなかったかも知れない。


 あの3連コンビネーションで叩かれて、打ちのめされていなければ、俺はここで折れていたかも知れない。


 苦笑を下に捨てる。


 顔を上げて、軽く手を振って笑みを返す。


 ジーグが目を見張った。先程とは異なる驚き。


……ちょっと爽快だ。してやった感がある。



《……ランフェスに同意するわ。あんたって時々想像越える》


(そうか?)



 俺は、もう『アーリス』だ。


 やる事は多い。


 いちいち戻って、同じ事を繰り返す暇など無い。



 可愛い嫁さんを2人もゲットした。


 専属の大蔵省付きだが、資産もある。


 領主公認の地位も用意された。


 世界救済なんぞと言う、途方も無い指標があるが、出来れば手を回す程度の認識だ。


 将来の展望は、相応に明るい。


 これで領民の視線如きに屈する程、俺は恵まれた生き方はしてこなかった。



(……あの3人組の方が、よっぽどたちが悪かったしな)



 ここで折れてやる訳にはいかない。




「紹介は省くぞ、このまま街を抜ける。オマエらは先に行け! 配置に着いて待機してろ!!……行くぞ?」


「はい!」



……遠かった。ようやく外だ。


 街を出る門の前で、ジーグを見上げる。



「ジーグ。『俺』が抜けたら、門を閉じて下さい」


「え⁉︎ あ、はい! 了解しました!」


「お願いします」


「………………」



 そのままそそくさ進む。


 ジーグの呆然とした顔がちょっと面白かった。


……揶揄いすぎたかな?


 機会があれば後でフォローしよう。










 街壁の門を抜けて、初めて『外』に出た。



「………………。」



ーーーー『圧巻』。



 改めて思い知らされる。


 ここは俺の知る世界ではないと。



 世界が広い。


 世界が遠い。


 見渡せば、見渡すだけ望める。


 何もかもが開いていた。



……両腕を広げて受け留める。




ーーーー異世界の洗礼を。





《……何してんの?》


(やる気がないとか思って、すみませんでした)


《はぁ?》


(すごいよ、アスガンティアさん……っぱないっす)


「……アーリス様? 何してんだ?」


「世界を感じています」


「………………本当に変わった子だな」



 一身にそよ風を浴びていると、



〈ピイーーーーッ!〉



 見張り塔から警笛が鳴った。



「構えろッ!」



 レドルの発破が響く。


 弓を持つ全員が矢を番える。


 俺は逃走準備だ。


 腰を落とすと同時に、耳に何か冷たい感触がして、スルリと中に入った。



(ひぇっ⁉︎ ゾクッとした!)


《シャリアの精霊ね。この距離を届かせるのに、杖が必要だったんでしょ》



 そっか、精霊の有効射程まで考えて無かった。


 そして、対策済みな辺りがランフェスである。



「見えました!」


「ナウゼルグバーグです!」



 次々と報告が上がる。


……俺にも見えた。


 まだ遠いが、森から出てくる黒い靄が見える。


 逃走ルートを頭の中でなぞっていると……、



《ーーッ⁉︎ 逃げてッ!!》


(え⁉︎ まだ合図が《ダメッ! 早くッ!!》)



 ナスタの慌て方が尋常じゃないが、まだ遠すぎる。


 囮は作戦の要だ。


 逃げるだけとはいえ、勝手気儘に動き回ればいいというものではない。


 充分に引きつけてからでないと……、



《ーーーーッ、無理ッ!『持っていかれる』ッ!》


(ナスタ⁉︎)


《あんたとアイツ、相性が最悪だわ!》


(何で⁉︎ どうし《マナが吸い取られるの!!》)


「ーーッ⁉︎」





 俺のマナは、ほぼ『無尽蔵』だ。





「逃げろーーーーッ!!!」





 張り上げた俺の声を合図に、黒い靄が『爆発』した。

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