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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『支流の橋』

 街に出ると、外気が更に冷たくなった。シャリアが通用口から外套を出してくれたが、手を上げて遠慮する。慣れておかないと、動く時に困りそうだ。


 俺の意識では初めての街だが、悠長に見て回る余裕など無い。


 こんな時間だ。軽く見回して、人っ子1人居ないのを確認してから、馬車に乗り込む。


 騎手は、なんとカールネスだった。



「宜しくお願い致します。アーリス様」



 柔和に、にっこりと笑って会釈するカールネス。


……紳士笑みだ。カッコいい。なんて素敵。



「こちらこそ、お願いします」



 シャリアに不満がある訳では無いが、やっぱり執事もいいな〜、とか考えながら中に入ると、内部は詰めれば両側で合わせて6人程座れそうなスペースがあって、奥の方に剣と弓、矢筒が置いてあった。



「……これか」



 入っている矢は10本。


 走って逃げる役に、多く持たせてもしょうがないのだろう。たかが矢とは言え、束になると嵩張って、結構重くなるのだ。


 剣は前の物と同じ大きさ。子供用の長剣だ。



(……新品か)


《……新品の方が良いんじゃないの?》


(握りが滑るんだよ)



 子供の握力だと、余計に保持が難しい。



「……当て布が欲しいな」



 色々見分していると、シャリアが隣、ランフェスが対面に乗り込んだ。



「閉めるぞ、……出してくれ!」



 ガタガタという音と共に馬車が走り出す。


……結構揺れるなぁ。


 俺が馬車に乗るのは初めてだが、レーゼルの記憶にはある。


……まあ、今は急ぎの進行だ。過去のそれと異なるのは当然だろう。速度と状況が違う。



「……ここまで来れば、後は乗り切ったも同然だな」



 ランフェスが安堵の息をついた。



「2時を過ぎた頃に、物見から連絡が入った」


「物見……見張り塔ですか?」


「いや、発見は森の巡回だ。そこから見張り塔へ警笛矢が飛んだらしい」



 警笛矢は、文字通り警笛の付いた矢で、何かの大事を知らせる時や、合図で使う。


 結構コツが要るもので、下手くそがやると「ピヒョッ」とか情けない音がして終わる。ユーシャが初めて挑戦した時がそんなだった。


 本人の名誉の為に補足するが、今は一番上手い。3つくらいの位階の違う音を、狙って出せるようになった。努力の子だ。



「巡回の人は大丈夫だったんですか?」



 そんなデカイ音を立てて、襲われなかったんだろうか?



「ああ、見向きもされなかったそうだ。……既に居るからだろう」



……ナウゼルグバーグが付ける印は1人。俺が居る限り、他の人の危険は薄い。



「……なら良かったです。あ、そうだ。要らない布有りませんか? 接近戦するつもりはありませんけど、柄がなんか不安なんです」


「包帯で良ければこちらにありますよ?」


「お、ナイス! ありがとうソシエ。貰える?」


「どうぞ」



 貰った包帯を(つば)に絡めながら、ギュッギュッと柄に格子に巻く。ぐるぐる。



「ギルドの方々は?」


「そのまま待機だ。街壁を出る君の護衛に付ける」



 予定では15人のギルドの要員に同行して貰って、ナウゼルグバーグを街まで釣り上げる手筈だった。


 あちらさんからいらっしゃったので、マナが勿体ないとか言って帰すのかと思ったが、しっかり働いて貰うようだ。



「15人分は俺が出します」

(いけるよな?)


「……助かるが、いいのか?」

《言う前に聞きなさいよ。構わないわ》


「はい。自分の護衛ですし」


「いや、ナスタ嬢の仲介が必要だろう?」


「大丈夫です。今承諾されました」


「…………己の中の精霊……いや、すまない。……妖精と会話出来るのか?」


「へ? 出来ますけど……」

(普通出来ないの?)


「……そうか、了承を得ているのならば良い。頼む」

《精霊は喋れないの》


「へ〜……あ、はい」



 不思議そうな顔された。妙な返事になったからだろう。


……俺に10人は無理だ。処理速度が足りない。



「揺れます! お気をつけ下さい!」



 カールネスの警告。


 ガタゴトする馬車が、傾斜のある道を乗り上げたようだ。大きく車体が跳ねた。



「んなっ⁉︎」



 子供だという認識がまだ足りない。踏ん張りが効かず、軽い身体があっさり吹っ飛んだ。



「アーリス様!」



 シャリアが血相を変えて俺をキャッチする。


 救いを求めるように俺もシャリアにしがみついた。


 ドンッ! と、シャリアの胸に顔を埋める感じでしがみついてしまう。



「わわっ⁉︎ ごめん「離れないで下さい!」」



 慌てて離れようとする俺を、がっちりホールドして離してくれない。



(む〜! む〜〜っ!!)



 ふにふにして、いい匂いがするダメな空間だ。興奮ゲージがぐんぐん上がっていく。



(やばい! ちょっ、シャリア離して!)



 懸命にもがいて外そうとすると、「んっ///」と艶っぽい声が聞こえた。



「あんっ/// ダメです、アーリス様。まだ……」


(ナニがまだ⁉︎)



 こんな所でシャリアに火が付いてしまったのかと思いきや、また車体が跳ね上がった。



(うお⁉︎)



 むにゅっ、とクッションが働く。無茶苦茶柔らかい。……じゃなくて!



(支流の橋か!)



 この街の西側に、北から南にかけて川が一本流れている。


 途中で枝分かれて、また合流するような川で、その分かれた部分に、ゆるいアーチ型の橋が2つ架かっているのだ。


 頭の中で街の地図を描く。


 この双子橋の向こうは、区画が少し下がる。



(……もう一回段差がくる)



 それほど大きな高低差では無かったと思うが、この速度の馬車で通過して、どうなるか予想出来無い。


 囮の俺が、ここで変に足を挫いたりしたら、計画が頓挫する。


 遠慮せずギュッとしがみつく。


 更に深く抱え直された。



(……やっぱりシャリアって結構あるな)


《あんた、すごい役得ね》


(うん、開き直った。変に抵抗すると返ってマズイ)



 脳に固定された欲求は我慢せず、そのまま任せた方が良さそうだ。無理に止めようとして、制御出来なくなる方が困る。



(……むにむにってしてる〜。弾力あるな〜あったかくて、気持ちいいです。安らぎます。うりうり)


《……見えるとダメで、触るのは平気とか逆じゃ無いの?》


(視覚から得られる情報って、精神に多大な影響を与えるものなんですね……実感します。見えないと割と平気)


《今度から解消する時は、目隠しして触らせて貰えば?》


(……いや、それはちょっと……高度なプレイで刺激が強すぎるかと……うおっ⁉︎)



 ガクンッと再び揺れる。


 区画の段差だろう。ここからはもう大丈夫な筈だ。



「……プハッ、ありがとうソシエ。助かっ……た?」


「……///」



 真っ赤になったシャリアがいた。



《……あんだけぐりぐりしてバレない訳ないでしょ?》


「あっ……」


「……1日と経たずに随分と仲良くなったようだね。成人が楽しみだ」



 揶揄うような笑いの混じったランフェスの声。



「あの、ごめんソシ…「謝らないで下さいっ///」」


「エ?」

(何で?)


《……「わざとやりました」って自分で言ってどうするのよ》


(………………)



 とても気まずい。自業自得だった。



 カーテンのような遮蔽を軽く捲って、ランフェスが外を覗く。


「……間も無く、だな」



 支流と区画を抜けた。


 街壁はすぐそこだ。

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