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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『名前』

 寝台が騒がしくなった所為だろう。



「……ふわぁ〜。寝ちまったか、今何時だ?」



 ユーシャも目を覚ました。



「おそよう、ユーシャ。21時過ぎだ。任務失敗だな」


「うげ、やっちまったか。ごめん」


「早く直して下さい! 殿方がいらっしゃいますから!」

「あたし平気だよ?」

「ダメです!」

「起きたばっかりで、身体が熱いから着たくない〜」

「あ、動かないで下さい! ずれちゃいます」

「きゃはは! くすぐったい〜!」



……心頭滅却。きゃいきゃいする2人を、視界に入れないように精神を保つ。



「……なあ、あの娘誰だ?」



……そういえば、この2人は今まで寝てたから知らないのか。



「……あの、目に毒なイベントが終わったら紹介するよ」


「わかった。それじゃあ、続き読むか〜」



 ユーシャが、被ってた本のページをパラパラと捲り、再び読書を開始した。


……俺も何か読みたいな。シャリアに取ってきて貰うか?……いや、自分で探したいからいいか。


 終わる迄ゆっくり紅茶でも飲んでよう。








「…………終わりました……」


「きゃはは! 負けちゃった!」


「……お疲れ様、シャリア」



 本当にグッタリしている。


 子供とは言え、リリアはドワーフだ。腕力は人間の成人に匹敵する。相手にするのは骨が折れるだろう。



「ユーシャ、リリア、紹介するよ。ついさっき俺の専属侍従になった、ソシエ・シャリアさん」


「……あの、アーリス様。『さん』は付けないで下さい」


「あ、ごめん」



 貴族面倒い。敬称の使い方も勉強せねば。



「ソシエ・シャリアと申します。ソシエとお呼び下さいませ」



 相変わらず、美しいカーテシーで挨拶するシャリア。



「ソシエちゃん!」


「……え?」



 とてとてと歩いて接近。そのままシャリアの手を取って上下にブンブン振る。



「あたし倭人族(ドワーフ)のリリア! よろしくね!」


「え? あの……はい。宜しくお願いします?」



 リリアの勢いに、シャリアが押されている。ちょっと混乱気味だ。



「俺はユーシャ。よろしくな、ソシ……エ? あれ、さっきアーリスはシャリアって……何だよ、ソシエ幼名じゃん。成名じゃダメなのか?」


「領主一族にシャリルって一字違いがいるでしょ? 紛らわしいから、って成名の使用が制限されてんのよ、この娘」


「ああ、そういう事か。……ん〜、残念だけどしゃーないのか、今はシャリアでいいのか?」


「駄目よ」


「……え? 何で⁉︎」


「シャリアって呼べるのはアーリスだけなの♡」



 とても、とても意味深な言い方をするナスタ。


 赤面するシャリア。


 きょとんとするリリア。


 ニンマリするユーシャ。



「……へ〜〜、ほ〜〜、ふ〜〜ん。じゃあ仕方ないなぁ、うししっ」



 何が「うししっ」だコイツ……!


……かくいう俺も赤面中で反撃出来ない。すれば相手の攻勢を許すだろう。ここはグッと堪えるしかない。



「……ソシエちゃんもアーリスと子供作るの?」



 別方向からとんでもない一撃が来た。


……核弾頭かこの娘。



「えっ/// あのっ! 私はっ「そうよ〜、リリアも負けてられないわね!」」


「あたし、負けないよ!」



 グッと、ガッツポーズ。体育会系のノリで可愛いが、種目がヤバイ。



「リリアは真っ直ぐね〜、良い子良い子」


「えへへ〜///」


「……なーんだ、もう決まってるのか。つまんね〜の」



 揶揄(からか)う気まんまんだったユーシャが、両手を頭の後ろで重ねて、不満げにぼやく。


 リリアとナスタは、そのまま将来設計を本格的に見据え始めた。何人とか名前とかの単語が聞こえ、ユーシャもそちらに合流した。


……一方、俺とシャリアは避難を開始。


 もはや手のつけられない3人から距離をとって、静かに茶をしばく。


 美味え。



「…………アーリス様は……何人欲しいですか?」



……避難先(シェルター)にも刺客が居るとか、聞いてませんが。



「あの……シャリア?」


「あの、何人でも大丈夫ですから! いっぱいして……⁉︎ 違います⁉︎ 誤解なさらないで「落ち着け」」



 自分に精霊使った方がいいんじゃないかこの娘?


 あんまり挑発しないで頂きたい。


……揶揄いたくなるじゃん。


 むずっ、と湧いたそれを紅茶と一緒に飲み干した。







 きゃいきゃいと騒がしい3人。



「その辺にして紅茶でも飲めお前ら……シャリア?」


「はい、畏まりました」



 会話の間隙を縫って紅茶を勧める。


 楚々(そそ)と準備するシャリア。さっきの暴発から大分(だいぶ)立ち直った。



「あ〜実りのある時間だったわ。リリアといっぱい名前考えたわよ」


「ばっちり!」



 起きたばかりだからだろうか。


 充電MAXでいちいち元気すぎる。



「数だけは出たなぁ、候補は少ないけど」



……何だそりゃ?


 ユーシャが謎の感想を漏らす。



「……今から候補があれば、幼名決めるのに迷う事は無さそうだな。結局何人分作ったんだ?」



 リリアが元気に手を上げて答える。



「30!」


「励みすぎだろ⁉︎」



 どんなペースだよ!



〈カチャッ!〉



 食器がぶつかる独特な音がした。シャリアが動揺したらしい。



「……30人……⁉︎ アーリス様! 私「シャリアは早く2人の紅茶を用意して」」



 天然(リリア)のボケに真面目に応じる純粋(シャリア)


 寧ろ突っ込み(おれ)が30人欲しいよ。



「はぁ……まあいいや、それで? どんな名前なんだ?」


「リリア!」



……それは、あなたの成名だ。いきなり不安になった。



「リリム、リリエ、リリア、リリス、リリア、リリス「ちょっと待て! ナスタ⁉︎」」


「な〜に〜?」



 本案件の監督者を招集する。責任を追及せねばなるまい。



「リリアが3人いたんだが……」


「違うでしょ」


「え?」


「4人「五月蝿いよ?」」


「リリアが好きな名前なのよ? 否定出来ないじゃない」


「限度があんだろ!」



 そりゃ、成名に選ぶくらいだから思い入れもあるだろうが……、



「……ダメなの?」



 リリアがしょんぼりしている……が、ここで折れると、未来の子供の幼名は、全てリリアになりかねない。



「……その時に俺と考えような?」


「は〜い!」



 問題を先送りにした。


 まだ10歳だし、成長してもこの発想のまま、という事はあるまい。


 取り敢えず、さっき2回出た『リリス』を脳裏焼付でキープしておく。





[ーーーーーーーーーー!]





…………引き攣った。




「……どうしたの? 変な顔して」


「いや、しゃっくり……かな?」



……もう治った。


 何だったんだろう?


……よくわからん。

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