『種族特性』
全員で連れ立って、衝立から撤収した。
元のテーブルまで戻って、シャリアの紅茶でティーブレイク。香りを楽しみながら喉を潤し、止ん事無い感情の諸々を整理する。
(……は〜〜……安らぐ……)
色々あった……と言うかあり過ぎたが、取り敢えずシャリアの精霊で、精神欲求への対処が可能である事は確認出来た。
(なるべく早く、負担を掛けずに済むようになりたいけど……無理かなぁ、この娘ら個性光り過ぎなんだよね)
天然と純粋の2属性。勝てる気がしない。
2人でこれである。ランフェスがどれだけ手を回しているか、想像すると頭が痛い。
「……シャリア。座って貰える?」
「……はい」
……思い出させるのもあれだが、言わない訳にはいくまい。道理が通らん。
「……ごめんなさい。変なことさせて……」
「いえ……お気になさらないで下さい」
「なるべく……なんだ、負担かけないようにしますので、また何かあったら、宜しくお願いします」
「……アーリス様は、異種族に思うところは無いのですか?」
シャリアに質問された。本当に不思議そうだ。
残念ながら、質問の意図が読めない。
「その……騎士団の目的は、一部説明を受けてます」
「……あ〜、うん。無茶な事考えるよね」
頭の回路が常人とは異なる。追いつける気がしない。
「いえ、異種族を複数人娶ることに、アーリス様は抵抗が無いのですか?」
「……正直に言うと、抵抗は有るよ」
「………………」
「理性が保たん」
「…………え?」
「さっき手伝って貰ったばっかりだから、説明するまでも無いけど、欲求を抑えられる自信がありません」
「……いえ……」
「このまま成人したら、シャリアに襲い掛かるんじゃないかな?」
「……あの……///」
「いや、俺、自分の事『理性』の人だと思ってたんだよ。まさかこんなケダモノ的な本能が眠っているとは……」
「あの! 違います。アーリス様」
「はえ?」
「そうではなくて、異種族に思うところは無いのかと……」
……ああ、質問の枕は『娶る』じゃなくて『異種族』に掛かるのか。
……え? わかんねえ、何を聞かれてんだ?
「異種族と人間の婚姻が上手くいく事って、まず無いのよ」
ナスタ参戦。
「……え? 無いの?」
「よっぽどの富豪でないと無理ね」
「何で?」
「1番の原因は、マナに対する価値観……と言うか、使い方が違うの」
「使い方? なんだそれ?」
「睡眠でマナはある程度回復するわ」
「……まあ、不思議じゃ無いな」
マナを活力と考えれば当然とも言える。生きているだけで、消耗もしてるだろう。
「人間を1として、異種族は100」
「? 何が?」
「睡眠でのマナの回復量」
「うぇ⁉︎」
思わずリリアに目をやる。
あの娘は今、常人の100倍速でマナを回復しているらしい。
……全然休めてる感じがしない。
「異種族はそのマナを『生きる』為に使ってるわ」
「……人間と変わらんだろ、それ」
「違うのよ……『種族特性』。人間はそう呼ぶわね」
倭人族は『身体強化』。
長耳族は『長寿延命』。
獣人族は『五感強化』。
有翼族は『飛翔能力』。
「お〜、成る程! ちっこい身体の不条理パワーはそれが原因か」
「……『ずるい』と思われませんか?」
「え? いや、別に。謎が解けてスッキリしたけど?」
エルフが長命もよく聞く話だ……が、理由まではあまり見た事が無い。
まあ、そりゃそうだろう。理由も無く長命であったり、腕力が強かったりする筈もない。ちゃんと、人間とは違うところで、活力の様な何かを必要としていたらしい。
相応の効率・特徴を求めた身体になるのも、不思議ではない。
進化とはそう言うものだ。
「……アーリス様は不思議です」
「……へ?」
「何の徒労も無く優位にある者を、人間は容易に認めたりしません」
「自分より優れたものに、人間は嫉妬するの」
「多数の強者に迎合し、少数の強者は概ね排除の対象となります」
「基本的に、有事に備える生き物なのよ。だから、マナを溜め込む」
「異種族は、その能力の為に絶えず消耗しています」
「信じられない浪費家に見えるんでしょうね〜」
「外見もそうです。……これは、人間だけに限りませんが……」
「女なんか特に凄いわよ? 内心どろどろでしょうね」
「……フルボッコじゃねーか」
異種族の2人によってボロクソに叩かれる人類。
まあ、確かにせっせと貯金している隣で、豪快に使い捨てる様を見続けるのは……、
……キツイ何てもんじゃねーな、これ。普通に無理だ。
「……だから、馬鹿みたいにマナ持ってる俺に白羽が立ったのか」
「……それだけじゃないでしょ?」
「……まぁな」
貴族連中を黙らせる領主の息子という肩書き。
領葬でタイミング良く姿を消せる領主血族。
領民がひとまず納得する解りやすい理由もある。
「本気で隙が無いな……、どんな脳味噌だよ」
「……別の事考えたっぽいけど、まあいいわ」
「あぬ?」
別の事って何だよ?
「……アーリス様はよろしいのですね? 異種族を娶っても……」
「え……あ、うん。俺の方に不安はあっても、不満は無いよ。寧ろ、リリアとかシャリアが嫌がってないかの方が心配だ」
「私は大丈夫です…………あの……頑張ります///」
「何を」と、とても聞きたいが、セクハラだろう。
自重すれ、俺。
「……そういえば、ナスタ」
「何?」
「『風』の属性って何が出来「ん〜〜、よく寝た〜〜!」」
「……あれ、アーリスもう起きてる。おはよう〜」
リリアが起きた。手を振っておはようしてる。
……相変わらずデンジャラスな娘だ。溢れそうである。
シャリアに世話になったばかりだと言うのに、ここで瓦解する訳にはいかぬ。
ぐぐっ、と回復した精神メーターを使用して、鑑賞の欲求を耐える。
「リリア様、お召し物を」
シャリアが侍女としてリリアの世話を始めた。




