表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
34/216

『成名の主人』

「彼女の扱いは君に任せる。良くしてやってくれ」



 さらり、と言いのけるランフェスが小憎たらしい。


……が、取り敢えず今はほっとく。カチコチのソシエをどうにかせねば。



「……すいません。無理強いするつもりはありませんので、宜しければ少しの間、侍従として付いて下さい」



 微笑を意識しながら、ソシエに伝える。



「……はい。畏まりました」



 仕事モードに入ったようだ。応対が最初の頃の彼女に戻って来た。


 立ちっぱなしも何なので、座ろうかと身体を向けたら、ソシエが先に動いて椅子を引いた。



「どうぞ」



……マジか。メイド凄え。


 当たり前だが、前の世界で給仕何て職種を雇った事はないし、椅子を引いて貰った経験も無い。


 当然のように行われる奉仕に感動する。これに慣れろと?


……遠慮せずにとっとと座ろう。腰掛けてソシエを見上げる。



「……そういえば、『ソシエ』は幼名ですよね? 何故成名を使わないんですか?」



 何か話題を、と思って口から出たのは、そんなしょうもない事だった……が、口にしてから気付いた。何でだろう?



「……フロードには『シャリル』が居る。……彼女に非が無いのは判っているが、誤解を促す様な呼称は容認出来ない」



 ソシエに聞いたつもりだったが、ランフェスが答えた。




 シャリル・フロード。


 レーゼルの姉。異種返りのエルフ。


 今は……いや、去年から『礼園』と呼ばれる異種族専用の全寮制の女子校のような所へ行っている。侍従の『カンナ』も一緒だ。


 就学期間は4年。成人直前までは帰ってこない。……これも、貴族不足の理由の1つだ。




「……あれ? ソシエは礼園には行かないんですか?」



 言ってから、聞かない方が良かっただろうか、と思い至ったが、手遅れだ。ランフェスから回答を貰う。



「彼女は、メルシアの侍従の空席を埋める形で、急遽編成された。その時に色々あってね、礼園入りは断念したんだ」



 比較的真っ当な回答だった。地雷で無くて良かった。



「成る程。……でも、今シャリルは礼園に居ますから、成名を使用しても構わないのでは?」


「……残念だが、このフロード領で『シャリル』の名は特別な意味を持つ。許可は出来ない」



 シャリルとシャリア。


 一字違いの成名。


 領主一族と誤認されてもしょうがない種族の類似。


……食い下がりたいが、難しいか。








ーーアスガンティアの成名には『意思』がある。



 例外もあるが、幼名は母親から、成名は父親から与えられる。


 幼名は産まれた時に付けられるものだ。前の世界のものと変わらない。


 焦点となるのは成名の方で、この名は『自身の希望』を反映する余地があるのだ。



 前の世界で『キラキラネーム』と言う、親の存念を押し付ける名付け方が話題になり、一時社会問題にまで発展した。


 名前は生涯使うものだ。軽率な思い付きで、安易に与えるものでは無い、と言う至極最もな意見が強かったと思う。


 アスガンティアにその様な配慮があるかは不明だが、自分で決める機会が与えられている。


 レーゼルも、父と母の名から一字が欲しいと希望を出していた。……結果は女性名に近いものになったが。


 ユーシャなんかは特にわかり易い。『勇者(ユーシャ)』だ。冒険譚好きで、憧れの強い子供らしい名前だと思う。


……そして、レイジェル。これは『男性名』だ。女の子に付けるものでは無い。事実、レイジェルの幼名は『セイラ』だ。


 レイジェルが自分で付けたと言ったこの名前は、画師として旅に出る事を決意した『覚悟』の名前だと思う。家族と一緒とは言え、女の旅は危険をはらむ。男性の名が、それを遠ざけるかも知れない……両親の進言もあったのだろう。



……成名は10歳まで生きた子供が、その後の人生で使用する名前。何らかの思い入れや願い、覚悟や意思の入る余地がある。


 シャリアもその筈だ。生涯その名を使う事を決めた、10歳(なり)の『何か』が込められている。



 出来れば尊重したいと思う。シャリアと呼んであげたいと思うのだが……仕方ない、次善策だ。



「……公的にはソシエ。私的な時間にシャリアと呼ぶのは、大丈夫ですよね?」


「え?「何?「はい?」」」



 3連の疑問符。そんなに変なことを言っただろうか?


 ランフェスから、シャリアに向き直る。



「安易に成名を付ける子供は、おそらく居ません。生涯、その名前を使いたいと思ったんですよね?」


「…………はい」


「なら、使うべきです。埋もれさせては駄目だと思います」


「……はい」


「フロード領の事情で、公的に使用するのは難しい。でも、私的な時間なら許されていいでしょう?」


「…………」


「俺も、可能なら成名の方で呼びたいから、使い分ければ良いかな? と思うんだけど、どうかな?」


「はい! よろしくお願いします」



 はにかんでシャリアが喜ぶ。良かった良かった。……しかし、笑うとますます可愛いな、この娘。



「……自覚無いのよね〜、こいつ」


「本当に予想を越えるな、君は。まさか、ナウゼルグバーグが用済みになるとは思わなかった」


「……へ? ナウゼルグバーグ?」



 どっから出てきた、その話題?



「確認するけど、良いのね? ソシエでは無く、シャリアの主人にして……」


「……はい。アーリス様をシャリアの主人にしたいです」


「こいつ、本っっ気でわかって無いわよ?」



 シャリアが嬉しそうに微笑む。



「異端の私が、求められたのです。この様な機会は二度と無いでしょう。真意の所在など……」



 そこで、シャリアが俺を見た。


 少し悪戯っぽく「どうでもいいです」と言って、にこりと笑う。


……ナウゼルグバーグ辺りから話の流れが読めないな……口を挟めない。どんな状況だ? これ?



「メルシアにはどうする?」


「私から御報告申し上げたいと思います」


「……そうか。ならば、後は婚姻だが……」


「あ、シャリアの意思を省みないのは、絶対に駄目ですので」



 ここは徹底抗戦だ。絶対に譲らぬ。目に力を入れて、睨みを効かせる。



「ああ、大丈夫だ。彼女の意思を全面的に尊重しよう」


「……あれ?」



 ガチバトルするつもりだったから、肩透かしを食らった。



「……逆に聞くが、アーリス。君は彼女の意思を尊重するのか?」


「当然でしょう」



 即答だこんなもん。



「シャリアが自ら選んだのであれば、文句は有りませんよ」


「………………」


「……こんなやつよ?」


「……嬉しいです」



 揃えた両手を胸に当てて、シャリアが華やぐ。



「私は、この為に己を磨いて来たと思えますから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ