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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『専任侍従』

 カーテシー。


 確か、そう呼ばれる挨拶の所作だったか。


 スカートの左右を少し摘んで上げて、脚を交差させて、そのまま軽く傅く挨拶だ。


 スッ、と滑らかにそれを終えると、ソシエは両手を前で揃えて、居住まいを保つ。



……侍女としては、かなり運用の難しい娘だと思う。


 彼女自身が『目を惹き過ぎる』。


 側にいる主賓が陰るだろう。


 余程器量の有る人物でなければ、彼女に食われてしまう。この若さで、ランフェスと並んで見劣りしないだけで相当なものだ。



「元々はメルシアの侍従を務めていた娘だ。実力のほどは保証する」



 あ、納得した。


 メルシアは『ランフェスの嫁』だ。これだけで、器量の度合いが推し量れる。ソシエを侍らせても、見劣りなどしないだろう。


 寧ろ、メルシアとソシエで相乗して、会場の視線を独占出来そうな勢いである。



「ナウゼルグバーグ討伐で、君の護り手を担当する」



……はい?



「かわいいですよ⁉︎」



 ソシエがピクリと反応した。


 ランフェスもびっくりしている。



「……何言ってんの、あんた?」


「……すみません、端折り過ぎました」



 暴走気味だ。落ち着いて訂正しよう。



「可愛い女の子ですよ?」


「だから! 何言ってんのよ、あんたは!」



 ナスタの突っ込みが炸裂する。


 ソシエが真っ赤になった。



「いや、危ないだろう? 女の子に護衛させる何て……」



 アスガンティアでは、不思議でも無いのかも知れないが、気が進まない。



「……そう言う意味か、安心したまえ。彼女は『この場に居る誰よりも強い』」


「…………え?」



 自分でも間抜けな反応だ。


 思わずソシエを見つめると、彼女もこちらを冷静に見ていた。……耳がまだちょっと赤いけど。



「メルシアに仕えていた者の中でも、彼女は上から数えられる技量を有している。給仕、護衛技量、精霊の行使、どれも優秀だ。信用して任せてあげて欲しい。仕える者に、『主人の信用』ほど価値のあるものは無い」



 ランフェスの熱のある推薦に、拒否をぶつけられる程の忌避感があるわけじゃ無い。実力があるなら尚更だ。「わかりました」と応じるしかなかった。



「それから、彼女も件の騎士団所属を予定している」



……ファミリー計画のやつか。優秀な実力者を集めて、自衛力を確保するのであれば、若い異種族で武芸に達者らしいソシエは、確かに候補に上がるだろう。



「討伐作戦の後、そのまま君の侍従を専任して貰う」


「…………ほえ?」


「……もう突っ込まないわよ」



 それは何よりだ。いや、違う。そんな事より……、



「侍従専任⁉︎ 俺は男ですよ⁉︎ 執事は⁉︎」



 領主系列の貴族は、男であれば同世代の『執事』、女であれば『侍従』を付ける。


 同性なのは、『付き従うのに不都合が出る』からだ。


 執事の職務は執務補佐。体力勝負になる。女性でも出来なくは無いが、周囲のイメージが悪い。『長時間密室で男女』とか、要らぬ俗な噂が立ったりすると、払拭も難しい上に、自由も効かなくなる。婚姻時の弊害にもなり兼ねない。


 一方、侍従の職務は『身の回りの世話』になる。女性の貴族には特に必要で、着替えや入浴などは、男性では当然対応出来ない。


 双方に『護衛』と言う役割が付随する以上、主人に同伴出来ないようでは、従者の側も職務の遂行が難しくなる。


 主人に対し、異性の従者を付けるメリットを見出す事の方が困難だ。ソシエもやり辛いだろう。



「彼女が2人目だ」



……2人目?



「成人すれば、君の伴侶となる事が内定している」



……ああ、そういう……。


 一気に頭の芯が冷えた。



「『命じたんですか?』」



 自分でも底冷えするような声が出た。


 ナスタを含めた3人が、驚きを御しきれない様相を見せる。


 因みに、ここまで全て小声で話している。


 2人はまだ起きない。はしゃぎ過ぎだろう。



「……だとしたら?」



 挑戦的にランフェスが笑う。


……良い度胸だ。買って差し上げよう。



「個人の意思を尊重しない考えには、同意しかねます」


「彼女は異種族だ。良縁は限られる」


「そんなもん、この娘の器量ならどうにでもなるでしょう?」


「君は判っていない。人間と異種族の価値観の違いは、容易く埋められるものでは無いんだ」


「どうでもいいです。彼女自身に価値を見出す人間はごまんといますよ?」


「何故断言出来る?」


「十分魅力的じゃないですか。まだ12歳ですよ? 器量良しで、実力も保証されてる。非の打ち所がないです」


「……黒の長耳族(エルフ)だ。黒髪の異種族も珍しい」


「外見で判断する輩は放って置いて良いでしょう。心底下らない」


「君は違うと?」


「当然でしょう? 寧ろ綺麗だと思いますけど?」


「……ふむ、他には?」


「耳がちょっと下向いてて可愛いですし、彼女自身に気品があります。立っているだけで目を惹くじゃないですか」


「目を惹くとは?」


「軽く見回して、思わず目が止まる娘です。彼女を『仕えている』のが、そのまま主人の()になります」


「……会場に異種族の者を侍らせる貴族は少ない」


「馬鹿馬鹿しい価値観ですね。俺なら自慢しますよ?」


「……君も黒髪だしな。並べば似合いそうだ」


「そりゃもう当然……ん?」



 あれ、なんか会話の方向が……?



「メルシアの後任も既に決まっている。彼女の行き場所はもう無いんだ。このままだと、職を失うだろう」



ーーッ! 何て勿体ない!



「誰も貰わないなら俺が貰いますから!」


「成る程」



 ランフェスが意地の悪い笑みを浮かべた。



「……だ、そうだが?」


「…………え?」



 ランフェスの視線の先を辿ると、顔どころか、首まで真っ赤にして、俯いてプルプル震えるソシエの姿があった。



「少々風変わりな主人だとは思うが、仕え甲斐はあるだろう。君の事も大変気に入ったようだ」


「……うぁ」



……やられた。やっちまった。顔が熱い。



「あのですね⁉︎ 今のは「辞めとけこの誑し」」


「いや⁉︎ ナスタさ「諦めろ。あんたの負けだ」」


「うっ、いやでも「ソシエとか言ったわね?」」


「ひゃい」


「「「………………」」」



 見ていて可哀想になるくらいカチカチである。


 最初の『出来る』感が抜けて、ただの女の子になっていた。



「将来の婚姻云々は後回しで良いわ。専任侍従、頼めるかしら?」


「……はい。……よろしくお願いしましぅ……///」


「「「………………」」」



 頑張ったが、ちょっと惜しかった。

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