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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『マナプレート』

 10歳にしてお嫁さんをゲットした。


……前の世界では、相手すら見つからなかったと言うのに。



(世の中って難しい……)


《なに黄昏てんの?》


(色々あるんですよ……)



 流すように視線を動かすと、時計が目に入った。



「そう言えば、2人は時間、大丈夫なのか?」



 もうすぐ15時だ。お昼が遅かったから、時間の進みを早く感じる。



「レイジェルもノーイルも行っちゃたし、街があんな状態だから、外にも出れないしな」


「……あんな状態?」


「ナウゼルグバーグ警戒して、街壁に兵士が並んでるんだ」



(……ランフェスと、朝話した内容にあったやつか)



 街壁の直ぐ外に俺を立たせる。素敵な釣り餌。


 護り手のエルフさんが精霊で俺の耳を塞ぐ。


 街壁の上の弓兵達がズバズバする。


 ナウゼルグバーグ、乙。



 これだけである。


 ナウゼルグバーグは遭遇自体が珍しいだけで、魔獣としてはとても弱いらしい。


 とは言え、やはり魔獣であり、10歳の子供が単身で挑んで勝てるような相手ではないようだ。


 特徴から、印持ちが耳を塞いで接近戦もいけそうだが、ナウゼルグバーグは接近戦に『付き合わない』。


 なんというか、のらりくらり躱すらしい。実際、レーゼルも躱されてた。


 精霊耳栓もマナを消費する。長時間の運用は財布に優しくない。有料であり有限なのだ。


 囮を使った、弓で遠距離集中砲火が最適の対処法となる。



「……早く討伐しないとな」



 首の印を撫でながら言う。



「……印が付いた時、『やった!』と思ったんだ」



 ユーシャが呟いた。



「言われるほど、ナウゼルグバーグは大した奴に見えなかった。……なあ、あの後……いや、いいや。ごめんな」



 ユーシャが手で仰いで発言を取り消す。



「アーリスの印、かっこいいね! みんなも褒めてたよ?」



 リリアがまた天然で際どい発言を……ん?



「みんな褒めてた?」


「うん! さすが領主の子だ〜、って」


「……暴動は?」


「……ぼうどう?」

「あ! あれじゃないか、今朝ニック達の親父さんとかが『見舞いさせろ〜』って騒いでた……」

「ああ! いっぱい集まってたね!」


「………………」



 呆気に取られた。



「ランフェスさん? 今朝の話「君の勘違いだ」」


「いや、でも『説明が手軽になるのは楽』って……」


「今回の一件で、『領民の暴動』を懸念する君の発想を是正するのは、骨が折れそうだったからね。実際に見せた方が早いだろう?」



 そう言う意味かよ! 


 説明責任を放棄しておいて『楽』とか酷い!



「それじゃあ、こんな徹底して隠す必要無いじゃないですか⁉︎ 神殿所まで(から)にして……」


「……? 昼食の休憩時間をずらしただけだから、実害は無いが?」


「……あ〜……」



 あるある過ぎて泣けた。



「…………見舞いの対応にも貴族の手が必要になる。これ以上業務を増やしたくは無い」


「……はい。大人しくしてます」


「結構。……朗報だ、今晩には護り手が到着する」


「……3日後とか言ってませんでした?」


「リムルツェーケルを出したらしい」



 魔獣リムルツェーケル。


 マナで飼える魔獣で、凄く速いらしい。緊急事態で使用する為に、各街に一体ずつ配備されている筈だ。



「今の魔獣警戒態勢は、一刻も早く解除したい。この後、アーリスは少し寝ておくように」



 机の上の出されたままの筆記具を見て「朝が早過ぎたようだ」と、就寝を促す。



「明日の早朝を討伐決行時刻で進めている。囮が動けないようでは困る」



 頷く。確かに少し寝ておいた方が良さそうだ。



「申し訳ないが、2人はこのままこの部屋で待機してくれ。保護者には手配済みだ」


「んな⁉︎」

「わーい!」

「おっしゃ! 読める!」



 カレーの手配と同時に処理したのだろう。最早エスパーの域にいないか? この人。



「俺だけ寝るんですか?」


「3人で一緒に寝ればいいだろう?」


「んにょ⁉︎」


《あんたって、時々妙なリアクションするわね》



 だから、ほっとけと。



「……後は、これを頼みたい」



 ランフェスが懐から、カードのような物を取り出し、テーブルに置いた。


(……黒いマナプレート)


《………………》



 マナ石は子供の手に収まる程度の、綺麗な丸い石ころだ。


 マナプレートは精錬され、装飾された芸術品に近い高級感がある。見れば、フロード領紋が刻まれていた。


 当然、貯蔵出来るマナ含有量は、マナ石と比べ物にならない。



「決行時刻短縮に係る負担と、リムルツェーケルに与える分のマナを支援して欲しい」


「……『色』は?」



 ナスタが必要な額を尋ねる。



「……『青』以上を希望したいが、無理を言うつもりはない。可能な分でいい」


「………………」



 俺はまだ子供だ。紋章を得たばかりで、使い方がわからない。


 マナ石も定期的に補充して貰っていたから、経験を積む「いい機会だ」と思い、手を伸ばそうとする。



《止めなさい》



 素気無(すげな)くナスタに止められた。



(何で? ちょっとやってみたいんだけど……)


《あんたがやったら一瞬で『赤』になるわ》



ーー手が止まった。



『五精族に任せないと死ぬ』


『大きな力には相応のリスクが生じる』


 背筋が冷えた。



 人間は経済的動物(エコノミック・アニマル)だ。


 2つの生存圏を確保しなければ、安寧は維持出来ない。



 生物的生存圏。


 経済的生存圏。



 領域に収まるのが重要で、『突出してはならない』。


 目の前にあるのは、マナ石ではない。


……『マナプレート』だ。同じ色でも、動く()が違う。



 目の前に居るのはランフェス。


 為政者、政治家だ。


 先程のファミリーの構想でも証明済。


 必要であれば、『身内でも徹底して搾り取る』。



……警戒度を引き上げる。


 黒い(・・)マナプレート。


 色から見て、中身は無い。マナ残量はゼロだろう。



(……測りに来た?)


《……多分、ね》



 ここで軽率に『赤』を出す訳にはいかない。


 余裕で『圏外』だ。



「……妖精は精霊とは違うの」


「……そのようだね。先程調べたが、『過去50年以上遡っても』妖精などと言う五精族は確認出来なかった」


(……マジか?)


《マジよ》



 妖精って、そんなレアキャラだったのか。


 SRどころか、期間限定SSRくらい希少だったらしい。



「……精霊は契約に則って『主人の要望』に忠実に従う。逸脱しない。運用するマナも当然、それに倣うわ」


「……その通りだな」


「妖精は『素力の調整』を主眼としているの。主人のマナの管理と運用は、妖精の管轄下にある。以降、アーリスにマナの支援を要請する時は、先ず私を通しなさい」


「……了承しよう。契約が必要か?」


「不要よ。……出すわ」



 ナスタがマナプレートに触れる。


 黒から黄、緑とグラデーションしながら色が変わっていく。


「おおぉぉ!」

「すごい! はじめて見た! ナスタちゃんすごい!」

「へ〜、補充ってこんなの何だな〜」


 黙々と推移を見守る大人達、ランフェスとナスタ。


 一方、子供達からは歓声が上がる。


 悲しいかな、俺は子供側だった。

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