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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『ファミリー計画』

 ナスタとの念話のようなもので、精神的に叩かれた俺は、ぐったりしていた。



「アーリス、大丈夫?」



 リリアが心配そうに覗き込んでくる。


 マジ天使だな。この娘。



「大丈夫、色々吹っ切れたから……」



 ランフェスが初撃にリバーをかまし、下がった顎に2人のガゼル、ナスタがとどめのデンプシー。ええ、異世界のリングで勝ち目などありませんとも。諦めたよ畜生。



(この2人と好き勝手に生きてやる!)



 新たな目標を手に入れた俺。限度額の吹っ切れたマナで豪遊してやる。



「……もう、大丈夫そうだな」


「はい」



 ランフェスにも随分と心配を掛けたみたいだ。



「では、次の話に移ろう」


「…………え?」



 和かな笑みを浮かべて、ランフェスは唐突に話を変えた。



「ナウゼルグバーグ討伐後、レーゼルの『領葬』を執り行う」


「へ?」



 領葬って葬式だよな? レーゼルの? なんで?



「聞きなさい。これは、君を領主一族の(くびき)から外す為だ」



 先程と打って変わって、ランフェスがなんか凄く黒い(・・)。とても楽しそうだ。



「領主一族の立場は、神の使命を帯びた君の行動の制限となる」


「神の使命って……」


「世界の救済だ」



 ズバリと言われた。盛大に誤解されてる気がする。



「君は神に、『英雄のような立ち振る舞いを望むものではなく、何もしなくても良い』と言われた」


「……はい」


「それは、『何もせずとも影響を及ぼす』ともとれる」


「……はい?」



 なんか、凄い曲解をしているような……。



《別に間違って無いんじゃない?》


(……へ? ナスタ、何が?)



 こんな平凡な一般人に、そんな影響力ある訳無いだろうに……。



マナ(・・)


(……あ〜)



 否定は出来んが、ニュアンス違くない?



「ナスタ嬢の件もある。君の身柄を領主館に置くことは負担が大きいと考えた」



 厄介者扱いで草も生えない。


 間違っていない辺り除草剤もばっちりだ。



「故に、君は領主一族から一度外れ、異種族を中心に『ファミリー』を作って貰いたい」


「……ファミリー?」



 異種族を中心に? 何だ? 意味がわからん。



「矛盾するようだが、領主一族が君を手放す事は出来無いんだ。貴族が足りないからね」



 貴族が足りないのは知っている。手放せないのも、まあ……なんとなくわかる。



「……精霊、五精族ですか?」



 ランフェスが首肯した。


 さっき、ユーシャが『貴族しか精霊と契約出来ない』と言っていた。レーゼルの記憶とも合致する。


 平民を動員出来ない理由がおそらくこれだろう。



「現在のフロード領は火の車だ。領民の生活を保全する為に、貴族はマナで活力を補って、政務を行なっている」


(マナで活力って、そんな事も出来んの?)


《出来るわよ? マナは素力だから、おおよその素となりうる力。体力を回復するくらいなら訳無いわ。……尤も、精神力はどうにもならないから、2・3日で限界が来るでしょうけど》



 栄養ドリンクかよ。デスマーチとか修羅場みたいな光景を想像した。あながち間違って無さそうな辺り、想像以上に深刻そうだ。



「父に側室が居れば、状況はもっと違っただろうが、見ての通り現領妃一途でね。当時もここまで逼迫(ひっぱく)するとは思われていなかったから……」



 レーゼルには、去年に魔獣討伐で戦死してしまった『ザックス』という兄が居た。その人が、もし生きていれば16歳。負担は大きく減っただろう。


 そして、ランフェスは既に北のフロード・バドムを治めている。今こちらに居るのは、ただの手伝いで、いずれは向こうに帰らなくてはならない。



「早急に領主一族への互助組織の設立が必要なんだ」


「……他の貴族じゃ駄目なんですか?」



 俺より優秀な人材など、幾らでも居るだろうに。



「いや、普通の貴族では駄目だ。条件を満たせない」


「条件?」


「出生と、豊富なマナだ」



 その後に、ランフェスが語ったアゼスターと詰めた計画とやらは、盛大に馬鹿げた内容だった。





1つ、俺を領主一族から外し、別の互助組織、ファミリーとして設立、自由騎士の集団として運営する。


 レーゼルが兼ねてより希望していた自由騎士の道を、一族から外して実現するというのを、領民宛の理由にするらしい。



2つ、この組織は将来的に、フロード領での領主一族の直下の権威を予定している。


 他の貴族を黙らせる為に、元領主の息子という背景に加え、将来性の見込める優秀な異種族を集め、自衛力を確保したいそうだ。



3つ、権威を持たせる以上、叛意があっては困る。信用の出来る人物でなければならない。


 要するに、領主一族以外に任せられる案件ではない。領葬で死亡扱いにするとはいえ、繋がりは残る。領民の安心感も違うだろうとの事。



4つ、活動資金の全てを領主が負担する事は出来ない。自分達で調達し、可能であれば寧ろ援助をして欲しい。


 相当な額になると思うんだが、ナスタ曰く余裕だそうだ。どんだけあるんだろう、俺のマナ。



5つ、貴族を増やす。


 言ってしまえば、子作りだ。貴族の血統は貴族にしか増やせない。そして、子作りにもマナが必要らしい。マジかよ……と、ナスタに確認したら、素力なのだから当然だと返された。マジらしい。



6つ、5の補足になるが、可能なら一般の人間より優れた異種族である方がいい。よって、成人まで積極的に異種族と交流し、将来複数人と婚姻する事。


 異種族は強靭、長命、俊敏など、いずれかにおいて人間を上回る能力を持つ。そんなの他でガンガン奨励すれば? と思ったが、政治的に色々あるらしい。



7つ、領主一族が複数の異種族を娶るのは、他の貴族の目に留まる。純血統貴族と中央に近い貴族、特に王族には関与されたくない。


 これが、レーゼルの領葬の本当の目的で、一族の系譜上死亡扱いとし、両貴族と王族の目から逃れるのだそうだ。





 つらつらとランフェスが吐き出した内容を、脳裏焼付を駆使して必死にまとめる。


……呆気にとられるほか無い。



「……何時考えたんですか? これ⁉︎」


「昨日、ハウゼ医師と話している間に思い付いた」



 信じられない。さっきの感動を返して欲しいくらいに、俺のマナを使い潰すプランだ。鬼か。



「……何考えてんですか? 10歳の子供に……」



 そんな無茶なと思ったが、「君は成人済みだろう?」と、ねじ伏せられる。


 何とか回避の道を模索するが、アスガンティアの政治知識が足りない俺では、穴が見つからない。


(……これを一晩で組み上げたのかよ……)


 尋常じゃない。


 アゼスター共々政治畑だとは思っていたが、遥か上だった。レーゼルの勇名を利用して援助、なんて考えてた俺がかわいすぎる。



 互助組織を設立し、領主貴族の負担を減らす。


 異種族を集めて戦力を整え、自衛力を確保。ついでにその中で子供を作らせて、次代も確保。


 死亡扱いにして系譜から外しているから、中央の目に入りにくく、運用の自由度も高い。


 異例で特化した集団だけど、領主の子供が長だから造反の心配も無く、領民受けも良い。


 必要な費用も俺持ちでリーズナブル。



 やばい、簡潔にまとめてもエグさが消えない。



(何だ? 何処でこんな流れになった?)


 この計画に乗ったら、平穏無事な人生は完全に途絶える。何の為にチートに金を要求したのか……って、


(……この計画のキモ(・・)はマナだ)


 俺が巨額のマナを保有しているのが事の発端で、それがバレた原因が、ハウゼ医師の指診で、つまり……、



(転生直後で詰んでんじゃねーかよ……)



 頭を抱えて呻く……と、更に、



「……いいわ、この計画で進めて頂戴」



 俺専属の大蔵省(ナスタ)からGoサインが出てしまう。



(ちょぉぉ⁉︎ ナスタさん⁉︎)


《落ち着け》


(無理!)


《喧しい! あんたを領主館(ここ)に置いときたく無いのよ!》


(何で⁉︎)


《龍脈塔が近すぎるの!》


(……⁉︎)


《どんな影響が出るかわからない。直ぐにでも遠ざけたいわ》



 このナスタの反応、


 エーテルを龍脈に還すと言う発言、


 ランフェスでも知らない龍脈の詳細、


『龍脈』なんて名前から、ある程度想像は付いていたが、間違いなく、この世界の素力の中枢に近い何かだろう。


(龍脈塔に、『素力変換』を持った俺が入れば……)


 何が起こるかわからない。



《……あんたを龍脈塔(あそこ)に入れるのはイヤなの。……何か、碌でもない事が起こるわ》





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