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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『異世界』

「…………ぼろぼろだな」



 ランフェスが呟く。その通りだよ畜生め。


 酷い状態だった。涙と鼻水が止まらない。


 安直な表現だが、心身共にズタボロだ。



……徹底的に打ちのめされた。


 レーゼルを擁護したい俺を、先回りして全て砕かれた。



『成長しないものを、生きているとは言えない』


『変化のないものを、生きているとは思えない』



……ああ、そうだ。俺もそう思う。


 確かに俺の中のレーゼルは記憶と意志があるだけで、成長も変化もしない。


 俺が思い込んでるだけで……ただの情報だ。



『成前式の紋章付与は、マナの最適化が行われる』


『不要なマナは、そこで排除される』


『君が不要ならば、そこで消えていただろう』



 これは、俺の存在証明。レーゼルの身体に残っているのは俺の方だと、成前式を利用して証明された。



『その身体に必要だと認められた』


『レーゼルが認めたんだ』


『誰にも否定出来ないだろう?』



……感情だ。


『この身体を俺が使う事を、レーゼルならどう思うか?』


 感傷に過ぎない、俺の唯一出来る反論まで潰した。



『今、ここに生きているのは、アーリス、君だ』



……とどめだ。卑怯すぎる。これはランフェスの説得だ。誰でもわかる。



『置いて、先に行け』……と、



 俺は頭が良くない。……のクセして考えるのが好きな変わり者だ。


 だからだろうか、理路立てて、整然と説明されると、感情を無視して納得するきらいがある。


 昨日泣いた、あの『決別』とは違う。


 これは……納得出来てしまう。


 レーゼルの死を、認める事が出来てしまう。



(……嫌《認めなさいよ!》)



 いきなり割って入ったナスタの声に驚き、思わずそちらを見ると、



「ぬお⁉︎」



 なんか目の前に仁王立ちならぬ、仁王飛びしていた。



「あんた『死』に慣れてなさすぎ! 忌避し過ぎてる! 死は神聖なものよ? 尊ぶべきものよ? 何でそんなに否定するの? 『こっち』は山程人が死ぬの! そんなんじゃ持たないわよ⁉︎」



……言ってる意味はわかる。


 アスガンティアは人間が支配し切れていない、魔獣という敵が存在する世界だ。


 一部の魔獣とは、相互の関係性を築けるようだが、ナウゼルグバーグのような、人類の天敵が存在する。


 争いは避けられず、死にたく無ければ、戦う力がいる。


 でなければ、子供の頃から安全な結界の中で、行軍の真似事で狩りをさせる必要がない。


……そんな世界なのだ。死がずっと近くて、切り替えて行かないと生き残れない。


 安穏とした前の世界とは違う。まだ判ってなかった。



ーーもう、認めよう。



『ここは異世界だ』



 前の世界との類似点を必死に探して、安住の地を見つけるのは無理だ。


 僅か10歳で命を落とした子供を嘆いて、憐れんで、縛られたままでは進めない。


 俺は、この世界での生き方を決めなきゃならない。



「……アーリスは、レーゼルの次をやるの? レーゼルの続きをやるの?」


「……⁉︎」



 リリアが尋ねてくる。


(……本っ当に真っ直ぐだな、リリアは……)


 凄いタイミングで、平然と凄い事を聞いてくる。



……腹は決めよう。



「……レーゼルの『次』だ。俺は……アーリスだから」


「うん、良いと思うよ?」


「……え?」


「ランフェスさんに言われたからな、レーゼルに認められた、レーゼルに似た奴が、レーゼルの身体の中に居るって」


「……………………」


「レーゼルと同じ様に接して構わない。でも、呼ぶ時はアーリスだって」


「あたし、忘れちゃってた」


「でも、似てるってだけで、やっぱりちょっと違うんだな。レーゼルは自分の事『俺』なんて言わない。よくわかんなくなってきたから、リリアと一緒に聞いてみる事にしたんだ」


「あなたは誰?「お前は誰なんだ、ってさ」」



……幼い子供の思考は、往々にして真っ直ぐな感情で、己の望む答えに辿り着く。



「……俺もリリアも、レーゼルが死んだって散々泣いた。諦めてた。死んだら生き返らない」



 死んだら生き返らない、嫌だ。



「だから、光の中にレーゼルがいて、起きてて、びっくりしたの。うれしかったの」



 生き返った。うれしい、良かった。



「お前も死んじゃったんだろ? 身体が無くなったお前を、レーゼルが最後に助けたって聞いた」



 中に()が居るかなんて気にしてない。


 道徳と倫理が育ちきっていない。



「レーゼルらしいね! アーリスに身体あげちゃうなんて!」



 理論が飛ぶ。


 辿るべき経路を無視する。



「ああ、本当に、最後まであいつは『騎士』だったんだなって……」



 そんな、単純な思考。単純な解。



「だから、お前は……」



 ごちゃごちゃ考える俺を笑う。



「あいつが最後に助けた、俺たちの『仲間』だ」



 難しく考えすぎだ、と。



「よろしくね、アーリス!」

「よろしくな!」



 俺より先に答えを得る。



《面倒くさいのよ、あんた。とっとと追いつきなさい》


(……無茶だろ? どんだけ先行ってんだよ)


《あんたが立ち止まってた分でしょ? スタートは一緒なんだから》


(……スッパリ過ぎ無い? 昨日の今日で追悼みたいな概念無いの?)


《……さっきからみんな言ってるじゃない》


(……何が?)


《あんたで良かったって》


(…………………)


《逆に聞くけど、生きてる奴相手に追悼出来んの?》


(……レーゼルは死んだんだろ?)


《そっちのレーゼルは死んだけど、こっちのレーゼルは生きてるじゃない》


(……は?)


《概念がおかしい、歪んでるの、あんた》


(……歪んでる?)


《一緒でしょ? あんたもレーゼルのくせに》


(……ランフェスは、レーゼルとアーリスは別だって)


《マナは別。身体は一緒》



 ナスタがとんでもない事を言う。



《……性格が変わっただけじゃない?》



ーー予想外すぎた。



(はあ⁉︎)


《レーゼルの身体のあんたが、レーゼルに見えない訳がないでしょうに》


(いや! おかしいだろそれ⁉︎)


《……本当に面倒くさいわね、あんた。周りが新しい性格のレーゼル受け入れたんだからいいじゃない》



 ナスタが呆れ顔で俺を見た。



《前のレーゼルの追悼は、もう終わってるの。終わったもの掘り返して、あたふたしてるのが、あんた》



……時系列で考えよう。


 レーゼルが死亡。


 追悼。


 俺がレーゼルの身体に転生。


……あれ? 本当に追悼終わってるの?



《……バカじゃないの?》


(いやいやいや⁉︎ やっぱおかしいだろ⁉︎)


《何処が?》


(…………何処だ?)


《知らないわよ……》


(いや、これ俺じゃなくて世界の方が間違ってるだろ……)



 俺の抵抗をナスタが粉砕する。



《あんたから見たら異世界なんだから、当然でしょ?》

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