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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『誤想』

 心臓を鷲掴みとは、よくも言ったものだと思う。


 握り潰されるような痛みを抱えたまま、2人を見やる。


 リリアとユーシャの視線は、レーゼルを見るものでは無くなっていた。



(……何時(いつ)から……?)



 ナスタが笑う。



「……そんなの(・・・・)気にしてどうするの?」



 下唇を噛む。


……その通りだ。


 二人には、もう気付かれた。


 考えるべきは次だ。




ーー『どうする?』




 簡単な事だ。


 俺はレーゼルとして生きる事が出来ない。


 早々に見切った。


 レーゼルの代わりではなく、


 共に生きる事を選んだんだ。


 伝えればいい。


 簡単な事だ。


 簡単な事だろう?




ーー出来ない点を除けば。




「……根が深いわね、それ」


「ナスタちゃん?」


「……いい匂いがするな」



 ユーシャの発言から間を置かずに、カラカラとワゴンの音が聞こえた。


 程なくして、ランフェスが入室する。



「……ユーシャ、私と一緒に立食で構わないか? アーリスとリリア嬢に、テーブルを譲りたいのだが……」


「俺は構わないぜ。ランフェスさんこそ、いいのか? 貴族が立って食べたりして……」


「パーティーは殆どが立食だよ。それに、レディー・ファーストだ」


「…………アーリスは?」



 名を呼ばれて、身体が引き攣った。



「……病み上がりに立食を強要する気かい?」


「そりゃそうだ、ごめんな、アーリス」


「……あ、…………」



……言葉が出ない。



「……これが人間の食べ物なの? 凄い匂いね」


「ナスタちゃんも食べる?」


「お誘いは有り難いけど、五精族は食べないの」


「えぇっ⁉︎ 人生の15割を損してるよ⁉︎」


「……それ、一回終わって(・・・・・・)から次まで行ってる(・・・・・・・・・)じゃないの」



 ヒクッと身体が動いた。



「カレーはそれくらい美味しいんだよ! ね、アーリス?」


「……う…………ん」


「……冷めない内にいただこう」



 カチャカチャと音がする。


 正式な卓に着いている訳でも無いので、礼儀にうるさく言う者はいない。


 美味しくいただけばいい。


 カレーだ。


 これはカレーの筈だ。


 香辛料がふんだんに使用された、辛い食べ物。




 なのに……何の味もしない。





ーーわかっていた筈だった。


 リリアはまっすぐだ。


 嘘を見抜くとか、暴くのではなく、


 感情と、感覚にストレートな娘。


 レーゼルに違和を感じれば、そのままぶつけてくる。


 ユーシャは目がいい。


 それは、遠方を望むだけの意味では無い。


 観察眼。


 違い、変化、異常をいち早く発見する力。


 狩りで得た、仲間の為に磨いた力。 



……この二人には、必ずバレる。隠す気も無かった。



 だが……まだ、俺は結論を得ていない。


 この二人と、レーゼルの仲間たちと、これからどの様に接していくのか?


 辿り着いていない。


……何故、これほど難しい?


 昨日はどうした?


 レーゼルの家族に、俺は何を言った?




『俺は何をした?』




「「ご馳走さまでした!」」


「お粗末さまでした。どうだった? 領主館のカレーは?」


「美味しかった!」

「俺はもっと辛くてもいいな〜」


「そうか、次の機会があれば、激辛を用意させよう」


「アーリス、食べきれなかったね〜」

「……病み上がりにカレーはきついんじゃないか?」

「食べたいって言ったのはアーリスだよ?」

「見誤ったか……自分が見えてない奴(・・・・・・・・・)だな〜」



 ドクンッ、と握り潰される。



ーーそんな意味ではない。



 さっきから過剰過ぎる。


 落ち着け。



 しかし、周囲がそれを許さない。



「さて、お腹も膨れた事だし、続けようか(・・・・・)



ーーーーーーーーッ!



「……本当に歪んでるわ、あんた」


「……え?」



……ナスタ?



「中途半端に壊れるくらいなら受け入れなさいよ(・・・・・・・・)


(……何を?)


「……ナスタ嬢、私が代わろう」


「……そうね、お任せするわ」


「ランフェスさん、ここ座る?」


「いや、リリア嬢はそのままでいい」



 そう言って、ランフェスは寝台の横の椅子を運んで、自分で座った。



「ここにいる者は『レーゼルの死』を受け入れている」


「………………え?」



 真っ白になった。



「……い…つ……から?」


「最初からだ」



 床に手を置き、結界を張ったランフェスが語る。





 俺の誤りを……。





 ソギルと名乗った門兵は、子供達の目に留まることを考え、死亡を意味する『赤』が上げられなかったと詫びた。


 実際、彼が上げた信号弾は黄色だ。期待したよ。医師の手配も完璧だった。


 だが、領主館に着いた時、彼が背負っていたのは君の遺体だった。


 外傷はいくつか有ったが、綺麗な状態だったよ。


……死んでいるとは思えない程に。


 遠巻きに見ていた者は気付か無かっただろうね。


……しかし、近くで見た者はわかる。


 ユーシャとリリア嬢もそこにいた。


 日頃から狩りをして、生物の『死』を見ているレーゼルの仲間達なら、レーゼルを知っている者なら尚更気付く。


……あれは、『遺体』だと。



 ハウゼ医師の診断で、マナの枯渇が確認された。


 精霊医の死亡通知だ。


 絶対と言っていい。


 追悼の最中に、


……君が目覚めた。



 私は最初から疑っていた。


 何か別のモノが入り込んだのではないか、と。



……今朝、君に聞かせたが、繰り返そう。


『奇跡と呼ぶ他にない。』



 レーゼルの身体に入ったのは『君』だった。


 レーゼルの最期を我々に語り、


 レーゼルの記憶と意志は此処にあると、


 辿々しく、レーゼルと共に生きると言った。


 悪しき化生(けしょう)の類いではなかった。


 君には悪いが、神に感謝したよ。


……レーゼルを二度殺さずに済む事に。



 君が語ったものを、全て真実だと我々は解釈した。


 偽りにしては、荒唐無稽が過ぎる。


 ならば、君には……何も残っていない。


 全てを失った君が、縋れる唯一がレーゼルだけだったのだろう。



 我々はレーゼルの死を受け入れている。


……君だ。


 レーゼルを失いたくないのは、


 レーゼルを死なせたくないのは、


 レーゼルを諦められないのは、


 君の方だ、アーリス。


 レーゼルの記憶と意志は残っている。


 事実なのだろう。


 でも、


 それだけだ。



 成長しないものを、生きているとは言えない。


 変化のないものを、生きているとは思えない。



 受け入れなさい、アーリス。


『レーゼルは死んだ。』


 その身体はアーリス、君のものだ。


……レーゼルも認めた。



 成前式の紋章付与は、マナの最適化が行われる。


 不要なマナは、そこで排除される。


 君が不要ならば、そこで消えていただろう。



 成前式を終えて、


……君は未だ、ここに居る。


 その身体に必要だと認められた。


 レーゼルが認めたんだ。


 誰にも否定出来ないだろう?







「今、ここに生きているのは、アーリス、君だ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 基本的に馬鹿だからだろ
2019/11/28 09:31 退会済み
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