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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『無邪気な二人』

「何でぅわぷっ!」



 何で此処に? と、聞く前にリリアがタックルしてきた。


(のぉっ⁉︎ ちょっ、つよ⁉︎)


 頭一つ小さい女の子に、あっさり倒される俺。



「う〜〜レーゼルぅ〜〜!」



 そのまま俺の頭に抱きついて、ぐりぐり……いや違う、むにむにと胸を押し付けてくる。



「!! リリア⁉︎ ちょむっ!」



 離せない。日頃から斧と盾を持って動き回っているだけあって、異種族のリリアの腕力は、レーゼルを上回る。


……のくせに、身体はどこも柔らかい。


 10歳とはいえ、レーゼルの鍛えた身体で本気を出したら、腕なんか折れちゃいそうだ。


(理不尽な⁉︎)


 鍛えれば硬くなる筈の筋肉……の、逆を行くリリアの不条理に突っ込みを入れる。



「へへへ、心配かけたヤツにはリリアのおっぱいの刑だ!」



 ユーシャの勝ち誇る声が聞こえた。


(お前の差し金かよ! 刑じゃなくてご褒美だよ!)


 リリアの奇行の原因は、ユーシャの仕業のようだ。



「二人とも、それくらいで離してやってくれないかな?」



 ランフェスの困ったような声が聞こえた。


 同感だ。


 このままリリアの胸を堪能する事に、不満などあろうはずも無いが、今は時間が無い。


 リリアが、しぶしぶといった態を隠そうとともせず、ぶすーっ、としながら離れた。


(はぁ〜、やっと解放された……ん?)


 存分に堪能する事の出来ない、もどかしい天国から帰って来ると、ジト目のアゼスターとランフェスが待っていた。



「…………え〜と……」



 どう見ても、俺は被害者の筈だが、扱いはまるで加害者だ。


(理不尽すぎるだろ!)


 痴漢冤罪なんて単語が脳裏に飛来する。


 元凶のリリアを見ると、うきうきと言うか、わくわくと言うか、なんかそんな感じで俺を見ていた。


……このままでいると、もう一回飛びかかって来そうである。早く立ち上がろう。



「……よっ、と」



 立ち上がって、パンッパンッと衣服の埃を払う。



「急いで戻るぞ」


「父さんは先に戻って下さい。私がこちらを担当します」


「頼んだ。……アーリス」


「はい!!」



 緊張感のある直立不動、親のお説教を待つ子供のそれである。



「……頼むから、これ以上問題を起こしてくれるな」


「…………はい……頑張ります……」



 この状況に至った経緯がまるで掴めず、対処法も思い付かない俺は、父の懇願を玉虫色な返事で誤魔化す。


……そんな俺の頭に、アゼスターが手を置いた。



「え?」



 わしわしと動く手は、大きくて固い。


 時折感じる痛みが、返って心地良かった。


……それを堪能する間も無く、あっさり離れてしまう。


 踵を返して、そのままアゼスターは行ってしまった。


(……不器用すぎんだろ)


 領主の立場故か、性格か、難儀な父だと思った。



「……すまないが、二人にも同行して欲しい」



 ランフェスがユーシャとリリアを誘う。


「いいの⁉︎」

「やったぜ!!」


 はしゃいでいる、当然か。






 領主館は領民が気安く入れる場所じゃない。大抵の案件は、神殿所の一階で処理されるし、外壁の内側には一部貴族の邸宅や庁舎の類いがあるだけ。内壁の内側に至っては、何も無い。領主館が在るだけだ。領民の必要とする施設が無い上に、許可の無い訪問者は拘束され、徹底して調べ上げられる。


 領民にとっては何の魅力もない、近寄る事すら危険な建物だ。


 友人を自室に招くというのは、割とありがちなイベントだと思うが、まさか『一緒に遊ぶ』なんて理由で許可は下りないし、レーゼルもそれが判っているから、友人を招いた事はない。……招きたいとは思っていたようだが。





 だから、初めて間近で見る領主館のあまりの大きさに、二人が歓声を上げるのは至極当然と言えた。


「……でっけ〜」

「おっきーい!」


「そうなんだよ、大きすぎるんだよ」



 全力で同意する。



「レーゼルは此処に住んでるんだよね?」


「リリア嬢」



 ランフェスがリリアを諌める。



「彼はアーリスだ。今後はその名を使用して欲しい」


「……あ、そっか。成前式終わったんだもんね。おめでとう、アーリス!」


「おめでとう。……良かったな、希望通りの名前で」



 リリアに続き、ユーシャが含みのある祝辞を垂れた。



「……ありがとう。……二人はどうしてここに?」



 神殿所の前には、領主館の守兵が並んでいた筈だ。



「光ったから!」


「……みんながそっちに気を取られてる間に、忍びこんだんだ」



 リリアが動機を語り、ユーシャが手段を説明した。役割分担が完璧すぎる。


 聞いていたランフェスが頭を抱えていた。



「……光ったって?」



 聞きたくは無いが、聞かねばなるまい。



「神殿場の方から凄い光が、こう……ピカーッと光ってさ……」



 ユーシャがジェスチャー付きで報告してくれるが、さっぱりだ。『凄く光った』事しか伝わらない。


(……領民の目にどう映るかな?)


 想像出来ない。ランフェスが頭を抱えるのがわかる気がした。






「おじゃましま〜す」

「……お邪魔します」


 リリアが元気に、ユーシャがおずおずと領主館に入る。


「誰もいないね?」

「大掃除か?」


 二人の反応が実に微笑ましい。



「アーリスの部屋は二階だ。アーリス、先に行ってくれ。私は二人を見てる。探検されるのは困るからね」


「はい。……リリア、ユーシャ、こっち。絶対に他の部屋に入っちゃ駄目だからね?」



 俺からも念押しする。


「は〜い!」

「大丈夫だ。わかってる」







「……ここだよ」


「とうちゃ〜く!」

「本当に広いな。自分の部屋まで、こんなに歩くのかよ」


 流石に前後で挟まれて監視されては、二人も動き回る事は出来ない。


 あっちを見てははしゃぎ、こっちを見てははしゃぐ。


 賑やかではあったが、列から離れる事なく素直に同行してくれた。




 二人のおまけを連れて、レーゼルの部屋に戻ってきた。


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