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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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ソギル『子供達の為に』

門兵のソギルは、元は狩人だった。


西門を使う子供達には、幼い頃から色々と話して聞かせている。


罠の作り方、仕掛け方、野草の見分け方など、森で使える知識を、若い世代に明け渡してきた。


だから、解る。


『おかしい』と。


今日の3班は優秀だ。午前中はシシノイまで捕らえてみせた。


そんなアイツ等が、この時間まで戻って来ない。


時間と結界については、徹底して教えてある。


(……何か、しくじりやがったか?)


騒めく。


嫌な予感。


狩人の感。


程なく的中した。


ソギルの目が、何も持たずに泣きながら走るリリアを捉える。



「ーーッ、ソギルさん!!」



駆け寄って抱き止める。


信じられない程、熱い。


荒い呼吸がリリアの疲労を物語る。


どれだけの距離を駆けて来たのか……、



「ジーグ! 水だ!!」



相方に指示を出して、リリアに向き直る。



「呼吸を整えろリリア、落ち着け、大丈夫だ」



泣き腫らした顔を、両手で挟んで告げる。



「……ひっく……ッ、……レーゼルがっ……あたし……あたしがっ!」


「……リリア」



親指でリリアの両目を拭って、聞く。



「報告は簡潔に、だ。誰が、何を、何時、何処で、どうした、……簡単だろう? 何があった?」


「……っ……レーゼルが、ナウゼルグバーグに……」


「ーー⁉︎」


「……囮に、って……ユーシャが、残って……印見るって」


(……ナウゼルグバーグと遭遇、レーゼルが囮、ユーシャが印を見る為に残った)


「わかった、……ジーグ! 矢筒と地図もだ!!」



途中まで来ていたジーグがとって返す。



「……あたしの所為なの!! あたしがっ!」


(……レーゼルが囮になった原因はリリアか)



長く接していれば、誰が、誰に好意を抱いているか見えてくるものだ。感情が出やすい子供なら、尚更。



「リリアちゃん、水だ。先ずは飲むといい。……ソギル、ほら、地図と矢筒だ」



ジーグがリリアに水を渡し、俺に矢筒と地図を寄越す。


矢筒を担ぎ、地図を広げてリリアに見せた。



「リリア、何処だ?」



リリアが広げられた地図の一点を差す。



「なっ⁉︎ 結界の内側⁉︎」


「やはりか……柱が壊れたか?」



でなければ、コイツらが魔獣と遭遇する筈がない。



「ソギル、俺は南西の見張り塔に行ってくる」


「ああ、頼む。結界柱が壊れてるかも知れん、信号弾は『緑』を上げさせろ。ナウゼルグバーグだ、弓兵を西街壁を重点に並べておけ」



ソギルが矢継ぎに指示を飛ばす。



「護り手の手配も忘れるな。俺はもう出る。後続の討伐隊に、治癒師と修繕屋を同行させろ。ギルドにも話しを通しておけ。15人は欲しい、とな……リリア、捕まった奴は居るか?」


「……レーゼルだけ……みんなは、こっちに逃げてるはず……」


「わかった、……安心しろ、俺はオマエらの倍は早えぞ」


「……うん、ソギルさん、お願いっ! レーゼルを助けて!!」


「任せとけ、ジーグ、後は頼む」


「後続の到着まで先走んなよ、ソギル」


「……ああ、行ってくる」











ソギルが森に入って程なく、信号弾が上がる。


これで街の防備は整う筈だ。


門兵が一人居なくなった所で、問題は無いだろう。


異様に静まり返った森を、慣れた動きで疾走して行く。


森の中腹に届く前に、前方にユーシャ達の姿が見えた。


周囲にナウゼルグバーグらしき姿は無い。


……レーゼルの姿も。





「ソギルのおっさん!」



ユーシャ達が気付いて、駆け寄ってくる。



「おっさん、レーゼ「リリアに聞いた、印は?」」


「……首に黒いのが見えた」


「その後は? 咆哮はどうした?」


「レーゼルが、リリアの盾が落ちる音で判断するから、塞ぐ訳にいかないって……」


「……………………」



この時、ソギルの中でレーゼルの生存確率は0になった。



「……お前らは……、おい、レイジェルとベインの連中はどうした!」


「三方向に分かれて捜索してたんだ。西からベイン、俺達、ニック。俺が一番事情知ってるから、街に近いニックの方と合流して、ベインの方にレイジェルが行った。同じように撤収してる筈だ」


「……撤収してるならいい、お前らはこのまま街へ戻れ」


「……おっさん、俺も連「言うなよ、ユーシャ」」


「いくらお前でも、そこまでタコ助じゃねえだろ?」


「……ソギルのおっさん、レーゼルを頼むよ……」


「ああ、子供は家帰って、飯食って……寝ろ。こっちは大人に任せとけ」


「……わかった」



ユーシャの号令で、子供達が一斉に街へ向かって行く。



「……………………」



[17時41分]



討伐部隊の編成には時間がかかる。


父親である領主がさっきの信号弾で、


異常に気付き、


事態を把握し、


編成に着手し、


部隊が出発に至るまで、


どう考えても18時を回るだろう。



(……………………)



ここで先行する必要はない。その理由が無くなった。


ーーだが、



「ーーったく、どいつもこいつもレーゼルレーゼル! モテモテだなぁ! おい!」



約束はある。


ソギルは再び走り出した。




森の最深部へ。











[18時58分]


森の奥地から救難の信号弾が一つ上がる。


色は黄色。意味は《遭難者発見・危篤状態》。




亡骸を前に、ソギルは赤を上げることが出来なかった。



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