リリア『休憩の無い1時間』
リリアは全力で走っていた。
(あたしの所為で……ッ、レーゼルが死んじゃう!!)
そんなのは絶対にイヤだった。
ユーシャから事情を聞いて、自分の斧では倒せない相手だとわかった。
戦えない自分に何が出来る?
出来るだけ早く助けを呼びに行く事だ。
ユーシャに盾と斧を預けたリリアは、街までの最短距離を走り出す。
ここは結界柱の手前、森の最深部。
2時間以上かけてここまで来た。
子供の脚で駆け抜けられる距離じゃ無い。
同じ時間を掛けて、みんなで戻っていたら、間に合わない。
でも、矮人族の自分は違う。
異種族は人間に比べて頑丈だ。
斧と盾を持っても、まだ体力に余裕がある。
だから、ひとりで行く事にした。
……それでも、
『間に合わないかも知れない』
(ッ、……レーゼル、〜〜ッ! レーゼル!!)
泣いてはダメだ、前が見えにくくなる。
そう思っても、留められる物じゃない。
拭う時間すら惜しいと、懸命に腕を振って前に進む。
夕暮れが深くなる。
夜が近い。
もうすぐ太陽の代わりに、太陰が空に昇る。
「待って! やだッ! 待ってよッ!!」
ナウゼルグバーグは黒い靄の魔獣。
夜が来れば、黒い靄は見えにくくなってしまう。
レーゼルが避けられなくなってしまう。
「やだ…………やだよ、まにあって……まにあわせて!」
急ぐ。
只管に。
森を抜けて、
道を過ぎて、
街へ、
ーーリリアは辿り着いた。
「ーーッ、ソギルさん!!」
[17時15分]
リリアは休憩の無い1時間を全力で走り切った。




