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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『素力変換』


一頻りの考察を終えて、グッと背中を伸ばす。


「……んっ、と……そーいや、朝から行ってないな」


ちょっと催した。成前式の前に不浄を済ませとこう。


「……って、俺の荷物!」


正確にはレーゼルの物だが。


「……お〜、あった」


探せば、寝台の向こうに狩りの時の装備がまとめてあった。


(……剣は駄目だったか)


長く愛用していた、子供用の長剣。高価な物じゃ無いが、愛着があった。


「ま、あそこから放り投げたら見つからんわな」


あの崖で落とした、と知っているのはレーゼルだけだ。探す人間も居ないだろうし、仕方ない。


「って、目的は剣じゃないぞ……え〜と」


ガサゴソと荷物を漁る。程なくして、目当てのマナ石を見つけた。


サギゥの革袋から取り出して、マナ石の色を確認する。鮮やかな黄色だ。


「よしよし、中も残ってるな」


マナ石は、文字通りマナを蓄える石だ。内包するマナの量で色が変わる。アスガンティアでは、前の世界での財布に近い役割を持つ。


「んで、次はあっち」


マナ石を持って、衝立の裏にある不浄箱に向かう。






驚いた事に、アスガンティアにはトイレが無い。


衝立とかで身を隠して、不浄箱にする(・・)のだ。専用個室の概念が無い。


「……すげーよな、これ……誰が考えたんだ?」


不浄箱はマナ石の付いた座席の有る箱で、背もたれの天辺に窪みがある。


(……箱のマナ石も平気だな)


箱のマナ石は、中の排泄物を分解して、土に還す紋章術を動かす為に使う。


総じてマナ石の色は黒、黄、緑、青、紫、赤の順で判断する。赤が最もマナ保有量が多いと言われるが、赤はおろか紫も見たことがない。青も稀だ、ランフェスが持っているのを、見せてもらった記憶があるぐらいか。


「……よいしょっ、と」


箱の蓋を開けて中を覗く。箱の方に用は無い。少し土が入っているだけだから。欲しいのは蓋の裏の不浄拭きの方だ。


紋章術の施された淡い黄色の布で、拭くのに使う。使った後戻せば、箱の排泄物のついでに分解されて、綺麗になるのだ。


(……気分的にはちょっとアレだが、拭くと『微妙に消える』んだよ、コレ。……意味わかんない)


乾くとか蒸発とかじゃなくて、スーッと消えるのだ。原理がまったく想像出来ない。


(結界もそうだけど、紋章術万能過ぎない?)


思いながら、背もたれの窪みに、持っていたマナ石を置く。この窪みは、結界の紋章術の為のものだ。マナ石を置くと、マナが供給されて結界が発動する。


〈キンッ!〉


淡い黄色の結界が張られた。相応のマナで壊されない限り、結界には誰も入れない。外に音も漏れず、衝立で姿を隠しているので、見られない。簡易な個室が完成する。終わったら蓋をすれば、臭いもしない。


「……完璧だ。すげーぜ、アスガンティア」


突っ込み所はあるが、非の打ち所は無い。


強いて言えば、不浄の度にマナが必要になる。つまり、トイレの度にお金がかかる事だ。






(……この世界はマナで回ってる)


マナが無いと真っ当な生活が出来ない。アスガンティアでマナは、前の世界のお金に相当する。


そして、おそらく俺は、この世界でマナに関しては絶大なアドバンテージを誇る。




ーー『素力変換』。




主に体内にある……、人間が使える力が『マナ』。

体外、人間では扱う事の出来ない力が『エーテル』。


両方をまとめて『素力』と呼ぶ。




レーゼルは紋章が無いから、自分の中のマナを使う事が出来ない。提供されるマナ石で生活してきた。紋章を介してマナを使用するイメージが出来ない。だから、想像でしか無いけど……、


(俺の素力変換は、たぶん『エーテルをマナに変換する特性』だ)


人間が扱えない、アスガンティアの其処彼処(そこかしこ)に存在するエーテルを、マナに変換し蓄える能力。


(……やりすぎだろ、神様……)


もしかしたら、変換効率が悪くて、思う程便利でもないかも知れないけど……、


(それでも、至る所に俺しか使えない金が転がってるようなもん、なんだよなぁ)


この世界で、運用に不自由しない程度の通貨を要求したのは俺だが、破格すぎて返って使うのに躊躇する様な気がする。正直、斜め上だった。


「…………………………ま、何とかなるか!」


あんまり思い詰めないように、と考えたばかりだ。ポジティブに行こう。


「………………なるかなぁ……」


一億円入ったトランクケースをネコババする自分を想像してしまい、不浄箱の上で頭を抱えた。

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