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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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レーゼル『別れ道』

「……犬か?」


僕には何となく靄が見えるだけだけど、ユーシャはもっと色々見えるらしい。


「犬がいるの?どこに?」


周囲には犬どころか、他の動物達の姿も見つからない。


「……見えないか?あの黒い靄の中(・・・・・)に犬みたいのが居るぞ(・・・・・・・・・・)


ーーーーーー!!!


全身が粟立った。



ーー『ナウゼルグバーグ』。



「……何で……こんな所に居るの?」


最悪だ。絶対に戦っちゃ駄目な奴だ。


「……レーゼル、どうした⁉︎」


「たぶん……ナウゼルグバーグだ……」


「ナウゼルグバーグ?…………!アイツが⁉︎」


「直ぐに逃げよう。早く父さんに言って討伐してもらわないと……」


「待て!」


ユーシャが戻ろうとした僕を止める。


「何⁉︎急がないと手遅れになるよ⁉︎」


声が荒くなる。グズグズしていられないのに!


「……アイツ、結界越えてるぞ」


「え⁉︎」


ナウゼルグバーグの位置を確認する。ユーシャの言う通り、黒い靄は結界柱よりも内側に居た。


「何で!」


結界が足止めにならない⁉︎


「知るか!それより……マズイ。アイツの向かう先にニック達が居る!」


「ーー⁉︎」


目を凝らしても、僕にはニック達が見えない。けど、ユーシャが言うなら間違いない。


「レーゼル、ナウゼルグバーグってどんな奴だ?」


「あんなに本読んでるのに、何で知らないの⁉︎」


「洞窟にナウゼルグバーグは居ないんだよ!洞窟でヤバイ奴はフェルジストリュートだ!」


「そっちは僕が知らないよ!」


読んでる本の種類が違うから、知ってる事がお互いあべこべだ。


「絶対接近しちゃ駄目!黒い靄に触ると怖くなって動けなくなる!」


出来るだけ簡単に、必要な情報をユーシャに渡す。


「獲物の集団の内1人に印を付ける!印を付けられると、靄は平気になるけど、咆哮が怖くなる!」


駆け足で説明する。と、ユーシャが途中で僕を見た。


「……ひょっとして、マナの攻撃が効かない?」


「知ってるじゃないか!」


僕の今迄の説明は何だったの⁉︎


「フェルジストリュートに凄え似てる」


「倒すには、遠距離からマナを含まない弓とかで狙撃すればいいんだ」


「……俺も弓持ってっけど、流石に遠すぎるな」


「駄目だよ!囮なしでやるのは危険すぎる!!」


印付きがナウゼルグバーグの注意を引いてやらないと、靄が飛んできて動けなくなる。


「ナウゼルグバーグは印付きに絶対反応するんだ。やるなら、誰かが印を貰わないと駄目だよ」


「……打つ手なしか……ッ!なっ!あいつっ⁉︎」


ナウゼルグバーグの進路を見ていたユーシャが、顔色を変えた。


「今度は何⁉︎」


「リリアだ!あの馬鹿!ニックの所からこっちに向かってる!」


「ーー!」


ユーシャの視線を追う。僕にも見えた。ナウゼルグバーグに一番近い位置に居るのはリリアだ。



ーー嫌な予感がした。



それは、絶対に見たくないもの。考えたくないこと。






このままだと、リリアはーー、






「……僕が行く」


「ーー⁉︎、レーゼル待て!」


「待たないよ。僕が印を受けて、引き付ける」


街に戻っている時間は無い。リリアを助けたいなら、ここで誰かが囮になるしか無い。


「ふざけんな!お前は領主の子だぞ⁉︎囮なら俺がなる!」


「駄目だよ。ユーシャは近接戦の心得がない。ナウゼルグバーグの攻撃が凌げないじゃないか」


腰の長剣を撫でながら言う。ユーシャが悔しそうに顔を歪めた。


「……わかった。俺が弓で仕留めてやる」


「ううん。リリアを連れて逃げて」


「ーー!何でだよ⁉︎お前が囮の間に、俺が「矢が足りないんだ」」


ユーシャの言葉を遮って告げる。


「3班の全部の矢を足しても足りない」


狩りで持ってくる矢は大抵5〜6本。小動物は一矢か二矢で足りるし、大きい獲物は罠を使う。


獲物を狩っても、持って帰れないと意味が無い。荷物は最小限にするのが普通。矢は、的を外さなければ使い回せるので、最初の方に削られる武器だ。


僕達も、ニックとベインの班も10歳班。熟練の部類に入る。……矢は最小限。


ユーシャも矢筒要らずの三矢。サギゥ目的だったから、ノーイルが持っているのは……網。


ナウゼルグバーグは動物ではなく『魔獣』だ。矢で射殺すなら必中を条件に、最低でも20は欲しい。


「……死ぬ気か?そんなの「リリアが好きなんだ」」


「ーーーーッ!」


「死ぬ気なんか無いよ」


「……どうすんだよ」


時間がない、僕の考えを話す。




「まず、ユーシャの弓が欲しい。使うかはわからないけど、手段は確保しておきたいから」


僕はこれから近接戦でナウゼルグバーグに挑む。けど、遠距離の選択肢も持っておきたい。


「僕がナウゼルグバーグに近づいて、靄に注意しながら挑発する。ユーシャは僕の首を見ていて」


「……首?何で?」


「ナウゼルグバーグは獲物の首に印を付けるからだよ」


自分じゃ見えないから、ユーシャに確認してもらう。


「印が付いたら、リリアの盾を崖から落として音を立てて」


「なんでそんな事すんだよ」


「僕がユーシャを見る余裕は無いし、ユーシャが叫ぶのも危険だからだよ」


ナウゼルグバーグの靄から、視線を逸らしたくない。


「盾を落としたら、ノーイルの所へ戻って合流。ベインとニックの班に伝令を出したら、みんなで街まで逃げて、助けを呼んで来て」


「……凌げるのか?」


「……大人の武器は、みんなマナが通ってる。でも、僕は武器にマナを通せない」


ユーシャがハッとしたように顔を上げた。


「そうか!靄はマナを弾くけど、マナが無ければ剣で攻撃しても靄に弾かれない!」


「……多分、凌ぐくらいは出来る。後は……」


「咆哮か……」


そう、咆哮だけは対策が無い。


「耳に何か詰めるか?」


「詰められるものが、土くらいしか無いよ?それに、盾の落ちた音が聞こえなくなる」


印の付いていない状態だと、靄が危険だ。変な感じだけど、印は早く欲しい。そして、印の付いた瞬間を正確に判断したい。


「ザスティンの騎士は、精神力で抑え込んでたし、何とかなるかも?」


「お前、物語と現実を一緒にすんなよ!」


「ははは……うん、大丈夫。諦めないよ」


覚悟はしている。


ーーリリアは絶対に助ける。


ーー絶対に凌ぎきって見せる。


「……行くか」


いよいよ本格的にリリアの位置がマズイ。


「行こう」


ユーシャから弓矢を受け取る。


二人で頷き合って、一気に走り出した。


「しっかし、お前、リリアが好きだったんだな。いいのか?領主の息子が、異種族の娘に惚れちゃって」


「フロードは異種族に理解があるから、大丈夫だよ。シャリル姉さんも長耳族(エルフ)だしね」


「リリアの何処が良いんだ?超食べるし、超賑やかだし……」


「超おっぱい大きいよね」


「ちょっ、お前、そこかよ!」


二人で笑いながら段差を飛び越える。




あと、もう少し……、




「ユーシャは、レイジェルでしょ?」


「んなっ、誰から聞いた⁉︎誰にも言ってないのに!」


「今、本人から聞いたよ」


「…………。」


「レイジェルは賢いから、バレてるんじゃ……」


「やめろーー!」


「あははは!」




もう、すぐそこまで……、




「…………」


「…………」


「…………」


「…………」




そして、辿り着く。




「……帰って『来る』よ」


僕は、ナウゼルグバーグの所へ……、




「……行って『来い』よ」


ユーシャは、リリアの所に……。






ーー別れ道に。

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