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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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レーゼル『最後の日常』

午前中はベイン達と狩りに行った。


午後は誰とだろう?、と考えながら街壁に向かって歩く。


「お〜い!レーゼル〜」


呼ばれて振り返ると、後ろからユーシャが走ってくるのが見えた。


「午後はお前とか」


「他には誰がいるの?」


「リリア、ノーイル、レイジェルだな」


みんな、一足先に成名を貰って呼び方が変わったから、直ぐにはわからない。首を傾げると、ユーシャが「いつもの面子だよ」と、教えてくれた。


「……みんな、先に成名貰ってずるいよ」


父さんは領主だから、成前式の時期になるともの凄く忙しい。だから、領主の家族はちょっと遅くなるんだって言われた。


「そう言うなよ。お前だって明日には貰えるんだからさ!」


「そうだけどさ〜〜」


「領主様にあのお願いしたのか?」


「したよ!父さんと母さんから1文字づつ貰うことになった!!」


「良かったじゃん!」


「うん!どんな成名貰えるかな〜?」


ザスティンの騎士みたいに、男らしいのがいいな。


「……お、いた」


ユーシャは目が良い。僕より先に3人に気付いた。


「お〜〜〜い!」


ユーシャが声を張り上げて3人を呼ぶ。向こうも気付いて、手を振りながらこっちに来た。


「おそ〜い!」


リリアがほっぺを膨らませる。


「お前らが早いんだよ。ちゃんとメシ食ったか?」


そのほっぺを突っつきながら、ユーシャが聞いた。


「パスタ!」「ハンバーグ」と、リリアとレイジェルが答える。


「……カレー」


みんなの不満が、ノーイルに向けられた。


「「「「ずるい!」」」」


自分だけカレーを食べるのは、ずるい事なのだ。


「……うん、ゴメン」


頰を掻きながら、ノーイルが謝る。


「仕方ない、許してやるよ」


「……ありがとう。……行こうか」


ユーシャが許すと、ノーイルが門に向かって歩き出した。


「午後は何を狙うの?」


「野サギゥかな?」


「午前の時、ニックの班はシシノイ捕まえたってさ」


「「スゴイ!」」


僕とリリアの声が重なる。

シシノイは大物だ。簡単に捕まえられる獲物じゃない。


「罠が、上手く嵌まったって言ってたよ?」


レイジェルが教えてくれる。


「僕達も狙ってみる?」


「サギゥのつもりで来たからな〜、罠が無いぞ」


「無理して手ぶらになったら、お肉の無い晩御飯になるわよ?」


「夜はいっぱい食べたい!」


「だよなぁ……、今回は手堅くサギゥにしとこうぜ」


みんなで話していると、いつのまにか門兵のソギルさんの所まで来ていた。


「お〜、賑やかだと思ったら、レーゼルの坊ちゃんとユーシャ達か。抜けるのか?」


「おうよ!また森に行ってくる!」


「結界の外には行くなよ?」


ユーシャが胸を張る。


「わかってるよ、ソギルのおっさん、耳にハコが出来るほど聞いたぜ!」


……自信有り気だ。多分、新しく覚えた言葉を使いたかったんだと思う。でも……、


「……タコだよ?」


「タコでしょ?」


「タコね」


「……タコ」


「おめーは、本っ当にタコ助だなぁ……」


総ツッコミだった。


「冒険ものばっかり読んでるからだよ、ユーシャ。他にも色々読まないと」


ユーシャがジト目で僕を見下ろす。


「……お前にだけは言われたく無いぞ」







街を出て、道の向こう側が目的地の森だ。


「……ベインとニックの班は、先に出たって」


ノーイルがソギルさんから聞いた情報らしい。


「ちぃっ、先越されたか!」


「だから遅いって言ったのに〜!」


「隊列組んで、そのまま入ろう」


僕が提案すると、みんながいつもの並びになった。


先頭から、ユーシャ、リリア、ノーイル、レイジェル、僕の順だ。


「ノーイル、重くない?」


「……平気、レイジェル達が身軽じゃない方が困る」


ノーイルの役割は荷物持ちだ。ユーシャが索敵と弓、リリアが盾と斧、レイジェルは短剣で、解体したり枝を切って罠を作ったりする。そして、僕が指揮。全体を見て、指示を出す役だ。


ある程度進んだ所で、先頭のユーシャに聞く。


「どう?ユーシャ。居る?」


「……変だ、足跡が荒い。アイツら荒らしたのか?」


「逃したんじゃ無いの?」


「……罠が無いから、逃げられたとかじゃ無いと思う」


弓で射れば、その場で終わる。荒れているのなら、罠から暴れて飛び出した可能性が高いけど、その罠が無い。


「どっち行ってるの?」


「…………北だな、みんなそっちに向かってる」


僕達は今、西の方角に歩いている。


「……南に進んでみよう」


動物達は慌ただしく北に向かって移動している。それは、


ーー北に、欲しい何かがあるか、

ーー南に、居たく無い理由があるか。


「了解。ちょっと落とすぞ」


ユーシャが進行速度を下げる。


みんな、いつもと違う森の様子に緊張していた。







森に入ってから、結界まで半分くらいの所で、ユーシャが足を止めた。


「……ベインとニックだ」


先行していた筈の二人が、こっちに向かって歩いて来た。


「2人だけ?」


「班のみんなは?」


リリアとレイジェルが尋ねる。


「ここから、左右に開く感じで捜索してたんだ。ユーシャが見えたから、待機させて俺達が来た」


「……どう考えてもおかしいからな、みんな北に大移動してんぞ」


2人の班も気付いていたらしい。


「何か見つかった?」


「……いや、何も。その様子じゃレーゼルの所も収穫無しか」


ニックが残念そうに言う。


「どうする?一旦街に戻って報告するか?」


ユーシャの提案。森の様子がおかしいから、報告した方が良いとは思う……でも、


「……原因がわからなきゃ、報告出来ないよ?」


「……確かにな〜、原因くらいは調べたいか」


「ユーシャの所に先行してもらっていいか?俺たちの班は、もう、ここからそれぞれ左右に分かれてるから……」


「展開した状態で捜索出来るな。わかった。レーゼル、いいか?」


「うん」


「あ〜ん、夜のお肉が〜〜……」


リリアが晩御飯に肉が無くなるのを嘆いた。


それを見て、みんなが笑う。


「この状況で食い意地張るなよ」


「胸ばっかデカくしやがって、少しは身長に回せ」


「ひっど〜い!矮人族(ドワーフ)はこうなるの!そーゆー種族なの!」


リリアが、ぶーたれた。


「行くよ、暗くなる前に終わらせよう」


全員が頷いて、行動を開始した。







何の収穫も無いまま、1時間が過ぎた。


「……レーゼル」


ノーイルが僕を見て首を振る。撤収の時間が近い。


「潮時か?」


ユーシャが残念そうに言った。


「……最後に僕とユーシャだけ先を見てこよう。もう少し進めば結界だしね」


「私達は待機?」


「レイジェルとリリアは、ベインとニックに伝言お願い」


「わかったわ」「おっけ〜」と2人が返事して、それぞれの班に向かった。


「それじゃ、スパッと行くか!レーゼル」


「うん、それでサクッと帰って来よう」


2人で足早に移動する。


結界手前まで行って、何も見つからないなら、もうどうしようもない。それ以上は進めないんだから。





結界柱が見える所まで、あと少し。崖の傍は森が開いて、見晴らしが良くなる。


「お〜〜、絶景!」


「結局、何も無かったね」


見下ろすと、直ぐ傍に川と結界柱が見えた。


大人の身長くらい大きい石の柱で、二つの突起が両手を広げた様に見える。あの手の先にまた柱があって、結界を繋いでいるらしい。


「……つまんない狩りになっちゃったな……」


「……仕方ないよ。獲物がみんなどっか行っちゃたんだから」


「そーじゃなくてさぁ……」


何時もハッキリ言うユーシャが、言いづらそうにしていた。


「……お前、明日成前式だろ?」


「……うん」


ユーシャが何を言いたいのか、何となくわかった。


「貴族になるんだよなぁ……」


「…………そう……なるね」


「……今みたいなの、出来なくなるんだよな」


「……うん」


狩りも、普通に話す事も、一緒に遊ぶ事も、多分出来なくなる。


「でも、僕は自由騎士になるから!……平気だよ?きっと……」


自由騎士は、誰かの為でも無くて、国の為でも無くて、みんなの為の騎士だ。


自由騎士は貴族みたいな上下が無いから、またみんなと普通に話せる。


「……お前は子供だなぁ……」


ユーシャが困ったように言った。


「酷いよユーシャ!ちょっと先に成前式したからって!」


「まったく、レーゼルが将来の領主様とか、大丈夫なのか?この街は」


「だから、僕は……「しょうがないから!!!!」」


ーーーー⁉︎


「……俺が支えてやるよ」


真剣な顔だった。狩りで、獲物を狙う時に似てるけど、全然違う顔だった。


「……ユーシャ……」


「…………頼りなさすぎて、放っておいたら街が潰れそうだからな〜」


「……つまり、ユーシャは僕から街を守るんだね?」


「お前……今の流れでその反応は無いだろ⁉︎」


「冗談だよ」


クスクスと笑う。


気恥ずかしくて、照れ臭くて、少し……寂しかった。


「……ありがとう」


「……任せろ」


こんな遣り取りも、明日からは気軽に出来なくなる。


将来、また出来るようになるかも知れないけど、きっと……ずっと先の事だ。


「……戻ろうか、ユーシャ。ノーイル達が待ってる」


声を掛けたのに、ユーシャから返事が無い。


「……ユーシャ?」


振り返ると、ユーシャが身を落として、手招きしている。


「……何かあったの?」


僕も姿勢を低くして、小声で尋ねる。


「何だ?アイツ」


ユーシャの視線の先に、黒い靄の様なものが見えた。

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