『精霊術が出来るまで・その3』
眠ってしまったリリア達の為にシャリアが途中で離席し膝掛けを持ってくるという、素敵微笑ましい光景を眺めながら、ちょくちょく擬音の混じる妖精の説明を拝聴しました。
(……おおよそは把握出来た……かな?)
多少ニュアンスが変わるが、簡単にまとめると精霊術は『管理された魔法』だったらしい。
治世は、先ず国防を考える。治安が維持出来なければ、民の定住などあり得ない。有事に即応出来る戦力を保持しておく必要があるのだ。
……が、いくら有事に必要と言っても、軍備は平時状況下だと、なんの生産性も見込めない細目だ。訓練と巡回警備くらいしかする事ないしね。収益にはならんとですよ。
恒久的に必需とされながら、支出項だけを連ねる刑事・刑罰を担当とする機関。その費用を全て国費で賄う事は出来ない。国軍の維持費は税収で補う事になる。
民衆が力を持つ事は、為政者にとって好ましい事では無い。有事に対応する為の国軍の規模が無駄に肥大し、財政を圧迫する事になってしまうからだ。
故に、国は自衛以外の民の武力を制限する。……余談になるけど、『ギルド』やTRPGの『冒険者』なんて武力集団の運用が、国家にとって現実的で無い点はこれだ。ギルド等の性質が『民衆の互助』に集約されていたとしても、国の麾下に含まれない武力集団である以上、首脳陣は対抗し得る戦力を控えておく必要に迫られる。
その戦力の維持費用は、民衆から税で徴収する他無い。ギルドの『脅威』が増す度に、
国軍の増強→維持負担費増加→増税
の悪循環に陥る羽目になるのだ。諸経済から考えるとメリット無いんだよね、ギルドって。税をしっかり納めてんのに、高い依頼料払って仕事頼むの? 国に要求すればいいでしょーに。
TRPGで「こんな辺境まで来ない」とか、「対応が遅すぎる」なんて理由から冒険者を頼る描写があったりするけど、んなもん居住地を移せば解決する話である。国は万能では無い。治安の範囲には限界があるのだ。……トップがそれを考えず無闇に領土を広げた阿呆だった可能性もあるけどね。
国政と国軍が真っ当に機能していれば、ギルドなんぞ必要ない。武力・戦力の類いは、国が掌握している方が民にとっても都合が良いのである。まる。
……以上を踏まえた上で、精霊術。
――貴族であれば、誰でも精霊と契約出来る。
一般の領民はまず対象外となるが、貴族の出ならほぼ無条件だ。精霊術という強力無比な力の獲得条件としては、些かザルというか、要求水準が低すぎるだろう。国防破綻待った無しである。
……んがしかし、流石アスガンティアさん。やってくれてました。
五精族が等級で『技量』を、人間社会の方は資格と職種で『知識』を精査し、管理しているらしい。
五精族が見るのは『マナの練度』。
術の行使に必要とするマナを、適切な量と速度で精霊に提供出来るか? を焦点とし、そこに年齢も加味して等級を定めているようだ。
対し人類サイドでは、『その精霊術に絡む造詣』を筆記などの試験で審査している。
試験にパスして『段位』を獲得しないと、高位の精霊術の使用は認められないそうです。
……正直、五精族と王族が共謀してやってるようにしか思えんのだが、
――「人間の治世に関心などありません。私達の目的は『行使してもらう事』、それのみです。……が、自分達が騒乱の元となる事を望んでいる訳でも無いのです。人間が秩序を保つ上で必要と判じた法であれば、それに従います」――
と、シーレさんに弁明されました。……少々人間側にとって都合が良すぎる話だが、全部が全部の事情を開示してくれるとは思わんし、突っつきすぎて煙たがられても困る。好奇心からの追求は程々にしましょ。
んな訳で、アスガンティアの精霊術は『等級』と『資格』と『職種』の三本柱で運用が制限されているそうです。
幾つかの水の精霊術を、ちょろっと表にすると、
等級 資格 職種
《浄化》:ハ級
《治癒》:七級 医療<初段>
《指診》:五級 医療<六段> 〜医師〜
こんな感じになる。
等級が七級でも、『医療の資格』を持っていないと《治癒》は使えず、等級と資格を有していても、職業が『医師』で無ければ《指診》は発動しないらしい。
……本当に異世界らしからんよね? アスガンティア。
(まあ、これくらい締め付けなきゃ『魔法の管理』なんて出来ないだろうけどな……)
――LVが上がればパラメーターが上昇し、新しい技・術が覚えられる。
――熟練度が上がれば効果や威力が上昇し、範囲や対象が広くなったりする。
……割とよくある描写だが、『でたらめ』なんだよ、これ。いや、ファンタジーにまじツッコミしてもしょうがないけどさ。
まず国軍での対応が叶わない。出所が抑えられず、時間経過で威力が増す兵器とか、どうやって取り締まれと?
加えて、発射に必要な弾はMPである。「最大値が足りないから1日に数回しか撃てない!」な〜んて危機感訴えてるキャラがどっかにいたような気がするけど、何の制約にもなってないよ? 寝て起きたら残弾MAXとか、実質『無制限』じゃん。
1:毎時毎日攻撃される可能性がある。
(油断大敵)
2:1回でも通してしまえば民に累が及ぶ。
(完封必至)
3:魔法は集団・組織ではなく『個人』の能力である。
(全敵思)
4:LV上昇による自動習得なので『誰が』その『能力』を有しているか判らない。
(事前発見は困難)
5:物理的な入手経路が存在しないので、対応は必ず後手に回る。
(抑止不可。即ち補足はほぼ現行犯only)
これらに対処・対応が可能で、長期継続した運用が叶う機関を設立し、国防を全うせよ。
……ね? 無理でしょ?
因みに法で禁止しても意味は無い。学習の必要がないから。
『LVアップで技や術を自動習得出来る』とか、『回数こなせば熟練度が蓄積されて威力が向上する』なんて世界では、その魔法を使う上での知識も覚悟も道徳も期待出来ない。
経験値を貯めれば能力が向上する。技や術が会得出来る。回数こなせば威力が増す。より強くなれる。
……勉強なんてする訳無いじゃん。
寧ろ勉学の時間なんて無駄だ。勉強する暇があるなら、黙々と経験値を稼ぐ方が余程賢いと言えるだろう。
正確な法律や規則は、学習無くして得られない。
故に、LV&熟練度な世界で法は要を為さず、『決まりを守らない者の方が優位』なんてヒャッハーな思想が至上となってしまうのである。
……前の世界にあった一部の『ソーシャルゲーム』なんかがそんな感じでしたね。
勉学の時間、交流の時間、生理の時間。全てをゲームに費やし、只管に反復し、『数字』を積み上げ続けた者が勝者となる世界だ。『効率』や『最適化』を考える事はあっても、それ以外に関しては脳死に等しいレベルだろう。
(……そういや、アスガンティアに来る前、どっかの県がゲーム規制案みたいなのを掲げてたなぁ…… 賛否で結構湧いていた気がするけど、どうなったんだろ?)
物語を読ませるゲーム。音楽が絡むリズムゲーム。頭を使う推理ゲームや戦略SLG。反射・瞬時の判断が必要なACTやFPS。団内でコミュニケーションのやり取りが頻繁に行われるようなゲームなら、俺的にはOKだと思う。
アニメであれ、ラノベであれ、ゲームであれ、情報や情感として得られるものが在ったのなら、俺はその時間は有益なものだったと判断する。
……だけどソシャゲって時間を優先するから、物語を読む機会が減るんだよね。一定のルーチン繰り返すだけで、続けててもタッチ速度が洗練されるくらいだし、「要らね〜だろ」言われても反論出来んわ。
……でも、享楽と無駄の無い生活に人の幸福は無い。無心で楽しめる場所は、どんなものであれ『憩いの空間』と呼べる場所だ。規則で強奪するのは好ましい行いではないと思う。
(……周りに迷惑かけてなければ……いや、ガチャで金が絡んでるからな、保護者も怖いか。……中々に悩ましいな。俺が親ならどう思うか……)
「……アーリス?」
「…………お?」
「何考え込んでるのか知らないけど、話進めるわよ?」
……いかんな、明後日の方向に没頭しすぎたわ。
「ん、やっちゃって下さい」
「おっけ〜。それじゃあ、新しい精霊術《顔字》の討議を始めましょうか!」
……自分の首絞めてる気がする(⌒-⌒; )
考えすぎて頭痛い_:(´ཀ`」 ∠):_
もっと適当で良いのに……( TДT)
でも楽しいからこれで良いや(o^^o)




