『精霊術が出来るまで・その1』
アスガンティアで妖精は稀少な存在だ。
召喚に応じ参上した妖精x4。『賓客』として迎えるのに、契約陣以外の光源が無い真っ暗な部屋は、どう考えても適していない。なので、我が家のオープンスペースに正式にお招きする運びとなりました。
二階の通路……というか広場だな。北側の私室が並ぶ区画の前にある広い空間。ここが、我が家のお食事兼談話スペースに相当する場所だ。
シャリアがテキパキと体裁を整えた茶席。俺の着席を皮切りに、全員が思い思いの席に着いた。
(……肩身が狭い)
矮人族が一人。
長耳族が一人。
妖精が五人。
その全員が『女性』である。野郎は俺一匹だけですよ? 落ち着かなくてもぞもぞします。
(……ま、それだけが理由じゃ無えけどな)
俺の膝上で眠りこける二つの重しに、一堂の視線が集中する中、
「……え〜と、紹介するわね?」
「……どうぞ」
ナスタが微妙な空気を変えるべく、議長を買って出た。
「先ずは水の妖精、『シーレ』」
「シーレです。アーリス卿とお呼びした方が宜しいかしら?」
「いえ、お気になさらず」
いかにも『才女』って感じの妖精で、判定は『B』。クセのない長い髪を後ろに流して、前髪をカチューシャで上げた、おでこ美人さんである。しかも眼鏡っ子。……意味あんのかな、あの眼鏡。
「隣りに居るのが木の妖精で、名前は『パルナ』」
「パルナよ。よろしく〜」
「よろしくお願いします」
のんびりお姉さんっぽいのが木の妖精さんらしい。判定は『D』で、ここに居る妖精‘sの中では、上から2番目の標高を誇る方だ。髪はシーレと同じロングだが、パルナさんの方はウェーブがかっているので、口調も相まって柔らかい印象が強い。……怒らせると怖そうだな〜。
「んで、そっちでリリアを椅子にしているのが、火の妖精の『キサラ』ね」
「おう! よろしくな!」
「よろしくです」
リリアに抱えられたシャルルの上に座って、シャキッと片手を上げる勝気な妖精。判定は最小の『A』。髪の長さはナスタと同じぐらいだろうか? セミロングの下に、ファイアーパターンのバンダナのような物が見える。……どんなセンスかと。
「……そして最後に、今あんたの上でトリアと並んで丸まってるのが土の妖精。名前は『テルコ』」
「……み」「……うにゅ……」
「………………」
登場早々「……眠い」と宣い、俺が座るや否や、「待ってました!」と言わんばかりに、トリアと一緒に膝上を占拠しやがった土の妖精さん。……呆気にとられて反応出来ませんでしたとも、ええ。
(う〜ん、デカい)
判定は驚愕の『E』。横に蹲る感じで腕を枕に寝ているのだが、その腕に押し出されて霊峰の存在感が素敵な事になっています。妖精の服は総じて薄く、身体の線が出易いので目のやり場に困る。
(……さて、どうしたもんかな)
起こすのも退かすのも気が引ける。気持ち良さそうに爆眠してやがんな〜、と寝顔を見ていて、改めて気付いた。
(……妖精の耳って、みんな尖ってんだよな)
ショートヘアーからちょこんと見える俺の親指くらいの大きさの小っちゃい耳。他の4人もそうだが、人間のように丸くない。……長耳族程長い訳でもないけど。
(………………)
何となく、ちょんっと触ってみると、ピクピクと反応が返ってきた。おもしろ〜。
「……何してんの?」
「ほえ?…………あ」
女性陣の視線が俺に集中していた。むっちゃ気まずい。
「な・に・し・て・ん・の?」
「……ちょっと寝顔が可愛かったので」
下手に誤魔化すのもあれかな〜とか思ったので、行動に至った動機を簡潔に吐露してみた。
「……はぁ、もういいわ。シーレ、精霊術について説明お願い」
深いため息と共に、ナスタが被りを振りながらシーレに発言を譲った。
「端的に結論から申し上げると、人間の王族と五精族の間に繋がりはありません」
「そうなんですか?」
「はい」
「……じゃあ、何で五精族の術が王族から公開されるんでしょうか?」
おかしいやろがい。
「新しい精霊術は『託宣』で五精族に届きます」
「……託宣?」
「ええ、神様から届くのです」
……きな臭くなって参りました。
トリアとテルコちゃんを落とさないように気を付けながら、身をぐぐっと乗り出して、シーレに「詳しく」と先を促す。
「まず、私達宛てに神様から託宣が “スーッ” と流れて来ます」
「…………へ?」
「流れてきた託宣は、所定の場所で “ピタッ” と止まりますので、それを “ポンッ” と開くと、中には精霊術の原案が……「ちょぉ待てや」
擬音が多過ぎんだろ。会話のキャッチボールが成立しないので、感覚オンリーの発言は控えて欲しい。
「や〜ね〜、シーレちゃん。それじゃあ人間さんには伝わらないわよ?」
俺の戸惑いを悟ったのか、横からパルナさんが助け舟を出してくれた。……助かるよマジで。今のじゃ何もわからんし。
「こう……“ふ〜っ” て来て、“ふわっ” とした所で、“ひらっ” と開くのよ〜」
……助かりませんでした。パルナさんもボールを前ではなく、真下に投げる方だったらしい。
「シーレもパルナもわかって無えなぁ! “ドーッ” “デンッ” “バンッ” って感じだろ! なあ!?」
なあ!? とか俺に振るなよ。わかんねーよ。
「どうです? “スーッ” が一番判り易いでしょう?」
「い〜え! “ふ〜っ” て感じよ!」
「いっつも “ドーッ” って来てんじゃねーかよ!」
「そうかしら? “ひゅ〜” が一番近くない?」
「……ムニャムニャ……」
「………………」
俺さ……精霊は話せないから共同研究は難しいかもだけど、妖精とならワンチャン有るんじゃね? とか思ってたんだよ。ノーチャンだったな。
説明が感覚的な表現になるのは、ナスタの性格によるものでは無く、妖精全般の特徴であったらしい。
……どうしよう、この状況。
見取り図は未完成です。(すまぬ)
作中でごちゃごちゃ描写されるよりはイメージしやすいんじゃないかな〜と。(;´Д`A
字が小っちゃいですが、著者の環境では読めるので、取り敢えずこれで行きます。
左が1Fで、右が2F。
建具の大きさからの寸法逆算はしないで下さい。拡大と縮小に限界のあるツールだったので、一枚に収める為に最初から小さく作ってますんで。




