表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
11/216

『ナウゼルグバーグ討伐計画』

まさか、『掌上』で礼を受けるとは思わなかった。


俺の意識の上では、初めてやった掌上。込み上げる不思議な実感を、手が離れた後、にぎにぎと確かめていると、


「さて、今後の話をしようか」


改まって、ランフェスが告げた。


「本日、11時にレーゼルの成前式を行う」


「……11時ですか?」


随分と急だな。


「理由は二つある。一つ目は、君を『アーリス』と呼べる環境を早めに整えたい」


アーリスは成名だ。成前式で授かる名で、今の状況では確かに、公的に使用する事は出来ない……が、


(……それが理由?)


何故?と、浮かんだ疑問について考える前に、ランフェスがその答えを出す。


レーゼル(・・・・)アーリス(・・・・)は別人だ……君をレーゼルと呼ぶ事は、君の為にならない」


解答としてランフェスが投じたのは、慮外ものだった。


「君の立場では無理もないのだろうが、気負う必要は無い。……私達はね、アーリス、君の存在を容認しているんだ」


相貌に笑みを浮かべて、ランフェスは語る。


「君の意志では無いにせよ、君はレーゼルの身体を救った。誰もが、そのまま失われるであろう事を覚悟していた子供が、再び息を吹き返したというのは……」


何かを想うように目を細めて、


「『奇跡』と呼ぶ他に無い。……おそらく、君が思うよりも、ずっと……それに近いものだ」


言われて、初めて……前の世界でも考えた事のないそれを、想像してみる。


……もし、自分に子供がいて、目の前で息を引き取ったら、どう思うか。


ーーそして、その子が別の人格で蘇ったら?


受け入れるだろうか?


気味が悪いと思うだろうか?


中身が別人だとしても、どの様な存在であっても、


殺す様な事は出来ないのではないだろうか?


…………わからない、答えが出せない。


(……よっぽど、その存在がどうしようもなく、悪意みたいな、犯罪とか害にしかならないようなものだったりしたら……)


自分の子供の身体で、そんな勝手はさせられない。させたくない。だから……、


(……手にかける…………と思う……)


出来るか、はわからないけど……。


なら、善良までは行かなくても、普通の人だったら?


(例えば、自分の娘に……っ、ぬぁぁぁぁぁ〜〜……)


内心で翻筋斗(もんどり)打って悶える。


まさかだった。


娘の身体に入った『おっさんの魂』を想像してしまった。


(なんてことだ……)


あの神様の話から考えると、陽魂の性質上、身体が変化する女性体への転生は、おそらく有り得ない。


……筈なのだが、前の世界の投稿サイトで、1ジャンルとして確立する程に盛り上がっていた題材(テーマ)、著作も豊富だ。読んでいた分、無駄にリアルに想像出来てしまう。


(……考えたくない)


両目を覆うように頭を抱えた。


(……つーか、考えすぎだな、俺)


ある意味、いい感じに気が抜けた。


異世界なんて異常な環境に放り出されれば、無理もないかもしれないが、らしくない。


(もっと、気楽でもいいんじゃね?)


思いつめ過ぎてもしょうがない。


「念願の異世界に来たぞ!うぉぉぉぉ!」と、までは行けなくても、もう少し楽観的になった方が良さそうだ。




「悪く言えば、君の存在を『気に入らない』、と処分出来るほど領主家に余裕が無い。管理する領地に対して、人数が圧倒的に足りていないからね」


「困ったものだよ」と、冗談めかしてランフェスが言う。


場の空気を変えようとしているのがわかった。俺が思い悩んでいるように見えたのだろう。


「すいません、大丈夫です」


悩んではいたが、途中から『娘におっさん』なので、悩みのベクトルがまるで違う。


また思い出す前に、話題を変えたい。


「……二つ目は?」


なので、こっちから聞く。


「……ナウゼルグバーグに付けられた『印』が消えていない」


ランフェスの表情も空気も一変した。


俺も思わず首に手を当ててしまう。

ナウゼルグバーグは、獲物の首に印を付けるからだ。


「消えてないんですか?」


誰も言わなかったから、思考から外れていた。思い返せば、ハウゼ医師が指診で最初に触れた部位は首だ。


ランフェスが頷いて肯定する。


「レーゼルの身体は、まだナウゼルグバーグと因果が繋がっている……、領民にも気付かれているだろう」


それが何を意味するのか、瞬時に悟った。


ナウゼルグバーグは印の付いた獲物を追い回す。


幾ら子供達を助けたとしても、自身の生活が脅かされるとなれば、大衆は手を翻す。


考えが甘かった、勇名などとんでもない。


今の俺は、まるで災厄の誘引剤だ。


早急に印を消さなければ、暴動が起きる。


「……やはり、違うな。何を考えた?」


「……印を処理しないと、暴動が起こる所まで考えました」


「…………………………」


ランフェスが沈黙する。


(あれ?見当違いだったかな)


質問の解釈を間違ったか、解答がちょっとズレていたか。


「……アーリス、君は……」


(つら)ければ答えなくてもいい、と前置きして、「生前、政治学か地政学を専攻していたか?」と質問してきた。


「へ?……いいえ。してません」


そんな難しそうで、頭が痛くなりそうな学問、わざわざ選択する様な、粋狂な真似しない。


俺の返事を聞くと、ランフェスは再び押し黙った。


解答が足りなかったらしい。


「選択したのは、数学と化学です。好きだから選んだだけで、得意とは程遠いですけど……」


謙遜ではなく事実だ。実際、途中から珍紛漢(ちんぷんかん)で、着いて行けずに挫折した。


ランフェスは「わかった」と、大きく息を吐いた後、「説明が手軽になるのは楽だ。続けよう」と繋いだ。








その後にランフェスが語ったのは、ナウゼルグバーグの特徴と対処法、考案された作戦の内容と推移状況、そして、俺の役割だった。


「……囮ですか」


と、思わず口を衝いたが、妥当だろう。


弓兵に仕事が出来れば100%成功する作戦。俺の役目は、近づき過ぎない様に逃げるだけ。


「……印付きが居る以上、他の者が囮となる事は難しい。君の安全を確保する為に、長耳族(エルフ)を一人手配した」


(おお!エルフ!!)


異世界ものの定番種族。


レーゼルの姉もエルフだし、アスガンティアでは物珍しくも無いだろうが、記憶のそれと、生で観るのとでは趣がまるで違う。


否応もなくテンションが上がった。


「安心して貰えたようで何よりだ。長耳族(エルフ)の属性は水だ、守りに長ける。君の護り手として申し分無いだろう」


俺の反応を、少々見当のズレた方向に解釈したらしい。


「3日後には到着、と言っていた。早ければ明後日には着くだろう」


「その人が到着し次第、討伐に出る……」


「正確には、到着後、休憩を挟んでからになる……、大丈夫か?」


最後の言葉は、複数の含意を感じた。


理解したか、


体調は、


囮に不安はないか、


それらに自問した上で、返答する。


「はい、問題ありません」


正直、レーゼルの記憶にあるナウゼルグバーグは、子供の視点と、成人の視点の違いによるものか、身体から黒い靄が出てる只の犬にしか見えない。


恐怖を振り撒く不慮の死神、なんて呼ばれるくらいだから、容易な相手では無いと思うが、逃げ回るだけなら何とかなるだろう。


……放って置けば、領民に被害が出るのだ。


俺の平穏の為にも、そして、レーゼルの仇でもあるアイツは、絶対に討伐したい。


何としてでも、成功させなければ……。


硬く拳を握る。


それに気付いたランフェスが言った。


「……まずは、成前式だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ