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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第三章 〜『胎動』〜
109/216

『アーリス邸浴場・その3』

20/05/04 ちょい修正

 展望浴槽にも当然ジャグジーを導入している。


 下の浴槽に比べると、こっちのジャグジーは弱めの設定だ。ナスタの指示によるものだが、俺自身も強弱でどう変わるのか確認したかったので、深く考えずに了承した。


 起動して見ると、大き目の気泡がポコポコと出てきた。肌を押すように撫でる感触が中々にグッド。


(……ふむ)


 外を眺めながらゆっくりする所だし、強いジャグジーはそぐわない気がする。これはこれで有りだろう。



「御主人様、これを」

「ん?」



 俺がジャグジーを検分していると、シャリアが木枠に嵌った水色の壺を差し出してきた。



「……何これ?」

「香油です」

「へ〜」



 香油は、アスガンティアの女性が美容の一環で使用するものらしい。髪に艶と香りを付けるのだとか。


 直径20cmくらいの円形の木枠。その中央には(あな)が開いていて、台形の壺がガッチリと固定されていた。


 壺の蓋と木枠の端の部分が長い紐で結ばれている。紛失防止かな?


 木枠表面には、外した蓋を縦に嵌めて固定するような溝が彫ってあって、その近くに(くし)を置く為の場所も付いていた。装飾も凝っていて鑑賞に値する仕上がりだ。


 シャリアから受け取り、壺の蓋を外して溝に嵌めてみる。うん、ぴったし。


(どれどれ……)


 この形状なら浮くだろう。という事で木枠を湯にそっと浮かせて、どんな香りがするのかと嗅いでみる。


(あれ? これって……)


 シャリアを見ると、顔を赤くして自分が愛用している物だと語った。



「あ、やっぱり?」



 そうじゃないかと思いました。


 (こぼ)れるかも知れないから、蓋をまた閉めておこう。


……ん〜、紐が長過ぎるな。なんでこんなに長いんだろう?



「……で、これをどうしろと?」



 俺にも使って欲しいのだろうか? 清涼な香りだから別に構わないけど、同じ香りとかちょっと恥ずかしいな。



「……………………さい///」

「……はい?」

「私の髪に塗って下さい///」

「はいぃぃっ!?」



 (おのの)く俺に、ナスタが突っ込む。



「当然でしょ? 髪なんて一番手間を掛ける場所じゃない。夫が手掛けないでどうするのよ♡」

「ソシエちゃん、あたしのどれ〜?」

「あ、その噴水の右側に置いてある赤い壺です」

「………………」



 俺が呆然としている間に、リリアが自分の香油の場所をシャリアに聞いて、回収に向かった。


 展望浴槽の中心部には噴水がある。俺が当初考案していた物とは違い、景観と腰掛けが目的……かと思っていたが、香油などを安置する為の場所でもあったようだ。


 シャリアが示した赤の壺を開けて、リリアが中の香りを確認する。



「……うん、これだ! アーリス、あたしはこれね!」



 気色満面でバシャバシャと壺を持って走って来た。



「リリア、走るな」

「おぉ……、えへへ///」



 相変わらず仔犬みたいな娘である。



「んしょ……」



 リリアがシニョンを外し、木枠の上に置いた。シャリアも同じように髪留めを外して、木枠に置く。



「……では、私からお願いします」

「……うん」



 前の世界では無かった考え方。習慣や文化の違い。これらは下手に否定したりすると、致命的な溝になったりする。応じるしかないのだが……、


(ナスタ先生、やり方が判りません!)


 香油なんて初めて見たし、木枠の方も使い方がわからない。へるぷ! へるぷ〜!


《はいはい、取り敢えず座んなさい》


 やったぜ! アスガンティア(いち)受けたい、ナスタ先生の『香油の塗り方』の講義が始まった。


 正座して拝聴しよう。



「アーリスはやり方を知らないみたいだから、今回はわたしが指示するわね」

「わかりました」

「先生、お願いします!」

「よろしい。早速だけど、座り方がダメ。後ろを向いて、胡座(あぐら)にしなさい」

「ありゃ」



 いきなり駄目出し食らってんじゃねーか。



「……出来ました先生!」

「ん、おっけ〜よ。シャリア?」

「……失礼しましゅ///」



 シャリアが俺の斜め後ろに背中を向けて座った。


……何してんだろ? 髪に塗るんだよな……離れ過ぎじゃね?



「アーリス、そのまま身体を捻って受け止めなさい」

「へ? 何を?」



 言う間に、シャリアがゆっくりと身体を倒してきた。


(――えっ!? ちょっ!?)


 慌てて両手でシャリアを支える。が、体重はかけられたままだ。


(……そのまま寝っ転がりたいのか? って、ちょ!?)


 完成した体勢に納得と同時に驚愕する。



「ひょっ……ぬぉ!?」

「シャリア、高さはどう?」

「は、はは、はい! 大丈夫れす!!」



 解説すると、俺の胡座にシャリアが背中を預け、仰向けで寝転がった体勢だ。


 シャリアも真っ赤になっている。そりゃそうだろうよ、全部曝け出した格好だ。俺も理性が保たないぞ、これ。


(どこを見ればいいんだよ!?)


 視線をちょっとズラせば胸が視界に入るし、頭の方に固定すると、羞恥窮まった真っ赤なシャリアと目が合うのだ。気恥ずかしいなんて形容ではとても収まらない。


(せめてタオルか何かで隠させろよ!)


 こんなん今後もとか俺が保たん。次回から絶対にタオル巻かせよう。



「次はアーリス、香油の木枠から紐を外して」

「おっ、お、おう! これか!?」



 逃げるように辺りを探り、近くでぷかぷかしていた香油壺を手繰り寄せ、紐を手に取る。



「紐で結んである木片を外して」

「木片?……あ、そういう仕組みか」



 紐が結んである木枠の側は、その部分がスライドで外れるように出来ていた。パズルみたいでちょっと面白い。



「ほいっ、と……外したぞ?」

「香油はシャリアの向こうに浮かべて。木片をそこからシャリアの腰の下を通して、また木枠に嵌めるの」

「…………へ?」

「これで紐がシャリアのお腹に引っ掛かっるでしょ?」

「………………」

「洗髪の最中に香油がどっかに行っちゃう、なんて事が無いように最初に……何してんの? 早くしなさいよ」

「………………」




――恥ずかしそうなシャリアと目が合う。


           ――シャリアが目を瞑った。


――耳も顔も熱い。


           ――シャリアの身体も熱い。


―― 心臓がバクバク言ってる。


           ――シャリアも吐息が浅い。



(……決めた(・・・)



 本当に誰が考えたか知らないが、これは効いた。


 全身を委ね、預ける女の側もそうだが、受ける男の側にも覚悟がいる。無くても自覚させられる。



――今、此処いる相手は、生涯の(つが)いだと。



 羞恥にせよ何にせよ、ここで逃げるような奴は添い遂げるに値しない。覚悟も無く流されて応じる奴は、(ゴミ)にも劣るだろう。


 だから、決めた。



 誰にも渡さない。


 他には譲らない。


 拒まれても応じない。


 恨まれても離さない。



(シャリアは俺の『宝』だ)



「……シャリア、通すよ?」

「ひゃ、ひゃい///」



 カチコチのシャリアが可愛い。


 見えないのをいい事に、口元の歪みを戻さないまま、シャリアのお腹の下に紐を通す。


 腰を折って、覆い被さる形で手を回すのだ。胸とお腹に頭を寄せる格好になるのは致し方ないだろう。致し方ないんです!


(……深紋だ)


 吐息がかかる程近く、目の前には褐色の肌に浮かぶ赤い紋章陣が見える。


(成る程……流石リンリャス)


 描かれた線の軌跡に集中しながら作業に挑む。深紋が無ければ、下半身(ひだり)上半身(みぎ)の誘惑に耐えられなかったかも知れない。考えられてるなぁ……。



「――っ!?」

「あ、ごめん!」

「ふぃえ、大丈夫です!」



 ぴくり、と身体を動かしたから反射的に謝ってしまった。落ち着けよアーリス。


(んで、木枠に戻す……と)


 紐が輪になってシャリアの胴に引っ掛かる。これで香油が迷子になる心配は無い。作業完了だ。



「……成る程、だから無駄に長い紐が付いてんのか」

「どこに引っ掛けても良いけどね〜。次は髪を櫛で()きます。シャリア〜?」

「……///」



 シャリアが(おとがい)を上げ、髪を湯に浸した。


(…………誘惑強え……)


 俺に載ったまま頭を下げたのだ。自然と胸部を突き出す姿勢になる。


……綺麗な形してます。むっちゃ触りたいです。



「……いくよ(・・・)? シャリア」

「――ッ! ど、どどどどうぞ///」



 誤解するような物言い。わざとである。


(いじめ甲斐があるな〜)


 いちいち反応が微笑ましい。


……あんまやり過ぎて(きら)われるのも困るな、気を付けよう。



「櫛の使い方に注意とかある?」



 男は兎も角、女の場合はなんかありそう。



「乾いた髪にそのまま使用しない事! 頭皮に立てて使用しない事!! 毛先の方から少しずつ梳いていく事!!! 髪の根元から持ち上げるような使い方しない事!!!!」

「……了解です」



 日常の俺じゃねーか、危ね〜。


 木櫛を斜に構えて、湯の中で漂うシャリアの黒髪を、毛先の方からちょっとずつ梳いていく。



「あっ///」

「……」

「……んっ♡」

「…………」

「……上手いわね、アーリス」

「おぉぉ、ソシエちゃん気持ち良さそう……」

「………………」



 補足するが、俺は髪を梳いているだけである。


(なんだこの状況?)


 肌の露出面積100%で、俺の上に乗って目を閉じて喘ぐ少女。……端的に表現するとますますエロいな。


 色々と眼福だが、女性は視線に敏感らしいし、側にはリリアも居る。軽挙な行動慎むべきだろう。



「……ん、そんなもんでしょ。身体を起こしてあげて」

「おう」



 櫛を木枠に戻し、シャリアの首に手を回す。


(うわ〜///)


 凄い体勢……他の夫婦は絶対ここでキスしてる。


(……しちゃう? どうする?)


 嫁さんだし、俺の方も自覚したし、覚悟も決まったのだから、積極的にアプローチしていくのはアリだと思う。


(でもリリアが見てるしなぁ……)


 人(子供)の前で行うのはどうよ? と良識さんのジャッジが入る。



「……あ、有難う御座います///」

「…………うん」



 結局そのまま起こしてしまい、完全にタイミングを失ってちょっと気落ちする俺。超ダセェ。



「アーリス、起こしたら次は香油を開けて」

「ん」



 櫛で髪のお湯を梳いて落とした後に、香油を付けて馴染ませていくらしい。櫛大活躍。


(……結構楽しいな、これ)


 見違える程に艶が出てきた。香りもいいし、何というか『綺麗にしてる』感がひしひしとします。


 シャリアも大分落ち着いてきたようだ。真っ赤だった耳の色が戻ってきた。



「最後にお湯をかけて、香油を流します」

「……え? 流しちゃうのか?」

「髪が少し吸うから、その分だけ残ればいいのよ」

「あ、そういう風に残すのか」



 紋章術や紋章陣は、ごく一部の特別なものを除いて、基本体内までは効果を及ぼさない。普通なら《浄化》のお湯をかけたら全部落ちてしまうが、髪が吸った分は体内(・・)の判定になるのだろう。



「……はい、終了〜。合格よ、アーリス」

「やったぜ」

「御主人、有難う御座いました」

「いえいえ」



 突発の緊急ミッションだったが、無事に乗り切れたようだ。



「じゃあ、次はリリアの番ね♡」

「は〜い!」

「………………へ?」



 目をキラキラさせながら、赤い壺を差し出してくるリリア。



「はい! あたしの香油」

「…………はい」



 ちっこいのにシャリア以上の標高を誇るリリア。間違いなく強敵である。


(……よし!)


 気合い一発。吹っ切れたO型に怖いものなんぞ無い。


 胡座の敷いて、獲物を待ち構える。



「準備オッケーだ、来いや!」

「わ〜い!!」



……ホント、次は絶対タオル巻かせよう。

20/05/04

 ちょっと確認に読みに来たら、下書き消さねーで投稿してたw

 感想にあった「説明不足です」ってこれか、勘違いしてました。m(_ _)m

 ってな訳で削除。描写も読み返すと甘いなぁ……。ちろっとだけ追記・修正しました。

 まだ直したい所があるけど、後日で。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼの [気になる点] 今さらですが、この世界では、魔力=マネーなのでしょうか?後、赤の魔石の金額の感覚がつかみにくいです。 [一言] おろしろい。しかし、説明不足です
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