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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第三章 〜『胎動』〜
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『アーリス邸浴場・その2』

 嫁‘sの背中を流して、その余韻から復帰して程なく、



「……おっと、忘れるところだった」



 お湯を掻き分けながら浴場の入り口に戻る。



「……御主人様、何か?」

「ぬっふっふ〜! まあ、見ていなさい!」



 この浴場は、俺の理想が詰め込まれているのと同時に、統合浴場のサンプルモデルとしての意味合いも兼ねている。


 アスガンティアの浴室では基本となる3つの窪み、『増熱』『鎮熱』『浄化』の隣りに、新たな『風穴』の窪みが追加されているのだ。



「――っ、いくぞ!!」



 ホルダーからマナ石を掴んで、うきうきしながら風穴の窪みに石を移す



――次の瞬間。



〈ボボボボボボッ〉


 ほぼ浴槽の全面に配置された風穴の紋章陣から、一斉に気泡が噴出した。



「わ〜〜っ!!」

「きゃっ!?」



――ジャグジー起動。



 通気の管も無いのに何故? とか、考えるだけ無駄だ。異世界だからでQ.E.D.(証明終わり)


 んな事より、紋章陣を踏まねば!


 踏み。



「うひょー!!!」



 足の裏で気泡を受け止めて、その独特の感触にはしゃぐ。



「きゃはははっ! おもしろ〜いっ!」

「わっ!? わわっ!?」



 俺を見て真似する2人。


(………………)


 楽しんで戴けてなによりなのだが、飛び跳ねるボインボインがスゴイです。真顔になっちまったじゃねーか。



「……お湯の中の風って、そんなに騒ぐ程のものなの?」


「ふむ……入浴って、休憩っていうか、休息の為の時間じゃん?」


「まあ、そうね」


「その時間にマッサージもされちゃう感じ?」


「……成る程。つまり、効率が良いのね?」


「…………」



 なんかズレた方に解釈されたな。


 妖精だから血行とか肉体疲労の話しても伝わるかどうか微妙だし……ま、いいか。それ程間違った認識でもないしね。



 きゃいきゃいする2人を胸目と尻目に収めつつ、浴場の中心に向かう。


(は〜、ホントに頑張ってくれたなぁ……)



――『展望浴槽』。



 最初の俺の構想からは、随分と掛け離れたものになった……が、とは言っても改善であって、改悪ではない。


 元々は屋根をスライドさせてから、外への進路を確保する予定だった。つまり、『屋根を動かす』駆動と、『浴槽を動かす』駆動の2つが必要になる。


 この設計に対し、技師達の方から「屋根を持ち上げるのでは駄目なのか?」という提案があったらしい。また『打たせ湯』も、腰掛けの柱をくり抜いたて造った方が、工期が短縮出来るとか。


……流石本職、眼から鱗ですよ。確かにその方法なら『持ち上げる駆動』だけで済むし、樹の中を色々弄る必要も無くなる。即採用しましたとも。




(……これか)


 螺旋階段の幹側の手摺り。その少し上に、マナ石を嵌める場所が有った。


(確か『木動』の紋章陣だっけ?……まんまだな)


 窪みは2つで、それぞれに上昇・下降と書かれていた。


 早速上昇の方に石を置いてみる。ていっ!


〈カラカラカラカラ……〉


 何かが回る絡繰の音と同時に、ズズズッと樹が上に動いていく。



「おおおぉぉぉ……!!」



 天井の部分が、蓋が開くかの如く斜めにパカリと持ち上がり、そのまま天辺の浴槽は外へと突き出されていった。



「すっごい! すっご〜い!!」

「これが展望浴槽ですか……。香油を置きに上に昇った事はありますが、この形態を見るのは初めてです」



 2人も見学に来たらしい。



「……完了、かな?」



 駆動の音が止まった。



「…………んじゃ、上がってみようか?」

「お〜!」「はい」



 素っ裸の3人が螺旋階段をテクテク上がって行く。先頭は当然俺だ。この2人の背後に尾ける訳ねーだろ、お尻しか見えないじゃん。



「……寒っ!?」

「う〜、さむいよ〜」



 これはミスった。天井が開いているので、気温差も相まって外気がもろに入ってくる。



「ナスタ頼む!」

「しょうがないわね〜、ちょちょいっと……」



 ナスタが風を操り、外気の侵入を遮断した。



「……う〜ん、ナスタが居ないと使えないのは困るなぁ……」



 アスガンティアの建築物は基本的に壁が高い。室内の天井でも平気で5〜6mくらいはあるし、この浴場はもっとありそうだ。


 上の浴槽まで辿り着くには、どうしても時間が掛かる。夏は兎も角、冬は利用する度に風邪を引きそうである。



「う〜ん……」

「……あの……」

「ん? どしたのシャリア?」

「上の浴槽に浸かってから『木動』すれば良いのではないのでしょうか?」

「………………」

「………………」



 そーじゃん。至極ごもっとも。


 上の浴槽の縁にも木動の窪みがある筈だ。そっちで動かせばいい。



「シャリアナイス、今度からそれで行こう」

「はい」



 んな事している間に、展望浴槽に到着。ナスタのバリアーが効いているので、寒さは全く感じない。



「ほえ〜!」

「……凄いです……」



 満天の夜空を見上げて、感嘆の声を上げる2人。


(……こりゃすげえわ)


 アスガンティアにはスモッグが殆ど無いので、星の灯がよく見える。それどころか、カラフルな星雲まではっきりと視認出来た。



「……ノーイルが憧れるのもわかるな……」

「そうだね」



――天文学者:天体を観測し研究する者。



 星には興味が無いし、知人親戚にも居ないから詳しくは知らないが、前の世界では多分こんな立ち位置なんじゃないかな?


(でも、アスガンティアの天文学は違うんだよな)


 アスガンティアでは、星を『神の眼』と別称する。


 ノーイル(いわ)く、『真実の眼』を見出す為にリンリャスが提唱した学問なのだとか。


(お偉いさんの考える事はわからんなぁ……)


 んなもん見つけてどうすんだ?


(……ま、気持ちはわかるけどね)


 なんて事はない、ただの『浪漫』だろう。


 憧憬や賛美などの、好意的かつやや狭窄じみた思想のカタチ。凝縮された感情の受け皿。


 理も欲も得も含まない。情の熱だけで動く非合理の究極。


 人間だけが持ち得た『芸術』の原点。それが浪漫だ。


 芸術大好きな俺としては、全力でノーイルを応援せざるを得ない。



「御主人様、湯が温まりました」

「うん?……あ、ゴメン。有り難う」



 技師達の意見を採用した結果、お湯を上に通す管も不要となった。屋根を、丁度見張り塔を隠す様に持ち上げる事で、覗きの懸念は完全に解消されたからだ。


 目隠しの噴水? 要らねーだろ、って事である。


 代わりに展望浴槽の縁には、紋章陣の窪みがずらりと並んでいる。


『増熱』『鎮熱』『浄化』『風穴』と『木動』の上昇と下降。


 あと『造水』、水を造る(・・)紋章陣だ。アスガンティアまじチート。水不足の懸念が無いとか大概である。



「いっちば〜ん!」



 リリアが元気に浴槽へダイブして行った。



「俺達も行こうか?」

「はい!」

wikiより:『Q.E.D.』


 数学、哲学などにおける Q.E.D. はラテン語の『Quod Erat Demonstrandum』(かく示された)が略されてできた頭字語。証明や論証の末尾におかれ、議論が終わったことを示す。

 ただし現代の数学において Q.E.D. はほとんど使用されていない。(へ〜)


 ちなみに、英語だと『Quantum Electro Dynamics』(量子電磁力学)の略になるみたいです。(ほ〜ん)

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