『書籍室整理』
ワンダフルでゴージャスなガーデンをウォークした後、ハウスにリターン。ルームを一通りをウォッチして廻った。
色々とビッグなのは、貴族の一般邸宅を基準としたかららしい。
本来ならば使用人などの為に利用されるスペース。これらが半ば以上カットされ、他の部屋の拡張に充てがわれているそうだ。
……3人で住むにはやっぱでけぇんだよ。俺の感覚は間違っていなかった。
とは言え、歩いている廻る内に、この大きさにも大分慣れてきた。要は考え方次第である。
『居住空間』では無く、『慰安施設』と認識を変えれば、見応えがあって中々に楽しい。
「では、御主人様は書室の整理を御願い致します」
「了解です」
新しい楽しみ方を見出したところだが、いつまでも散策にかまけていられない。今日1日でいいところまで進めないと、後のシャリアの負担が増えてしまう。
切り替えて励もう。
「リリアは私の手伝いをして頂戴」
「うん、がんばる!」
「み〜!」
……トリアは、なんかリリアに懐いた。どっちも小動物っぽいし、波長が合うのだろう。
「アーリス、行くわよ!」
「はいよ〜」
すいすいと進むナスタの後を追っかけて、俺は書籍室まで移動を開始した。
そして到着。
「……おぉぉおおお⁉︎」
思わず雄叫び。
(わかってたけど、でけぇーー!)
愛書狂としては、この規模の書籍室に感動しか思い浮かばない。学校の図書室など比較にならない程の大きさだ。
しかも、全ての本棚が空。
……神は言っている。「好きにしろ」と……。
(オーケー、ゴッド!)
好きにするます!
「本はこっちね」
ナスタが段ボール箱の山に向かった。「子供には重いから」と、重量のあるものは各部屋まで運んでもらったそうだ。
(ひのふの………………20かな?)
想像以上に有る。箱の中の状態が悪ければ、1日作業になるかも知れない。
「……お、ラッキー! 分類済みか」
箱には中身が判るようにラベルが付いていた。
宛先、分類、数量などが開けるまでも無く判別出来る。これなら昼までには終わるだろう。
「よっしゃ、開始するか!」
「それじゃあ、わたしは応援してるわね♡」
「………………」
いや、触れないから仕方ないんだけどさ……なんか釈然としねえ。
(ま、いいや)
ナスタになんぞ構っていられない。
いそいそと段ボールを開ける。
「………………」
…………感無量。箱の中には、見た事もない本が目一杯に詰められていた。
(……紙の本は久々だな……)
電子書籍が主流になってから、俺もそれに倣った。
場所をとらないし、一々探す必要も無い。利便性からそっちに流されたのだが……、
(やっぱ良いな……紙の本)
電子書籍の方が明らかに優れているのに、何故か捨てきれない魅力がある。
――表紙を撫でて感触を楽しむ。
――ページを捲る音を楽しむ。
――紙の匂いを嗅いで楽しむ。
(……いや、匂いはないか)
世には嗅いで楽しむ人もいるらしいが、流石にそこまで行くと病気だろう。
「……アーリス? 何固まってんの?」
「おっと、いかん」
手を動かさねば。
アスガンティアの本は装丁に決まりがある。表紙と背表紙の角に、コーナー金具を取り付けるのだ。なので、どの本も相応に値の張るものに見える。……加えて、
(…………重い)
1冊2冊なら兎も角、纏まっていると凄く重い。本棚の前まで箱を動かそうと思ったのだが、ちょっと無理っぽかった。
(10歳だしなぁ……しゃ〜ない、足で稼ぐか!)
取り敢えず、本日中に全ての開封&棚への納書は済ませたい。
見分は後日だ、働け。
箱から4冊ズボッと抜いて、本棚へ運んで何も考えず端から突っ込んでいく。
えっほえっほと孤軍奮闘し、箱の残数が10を下回った頃……。
「……なんだこれ?」
宛先がナスタのものがあった。
今までの箱の宛先はアーリスだったから、余計に違和感を強く感じる。
(……確認した方がいいよな?)
わざわざ書き分けるのだから、なんらかの意図がそこにはあるのだろう。
「ナスタ〜?」
「な〜に〜?」
「この箱の宛先ナスタになってんだけど、なんか憶えある?」
「………………ッ⁉︎ あ%#$€△キ!?!!」
「うぉっ⁉︎」
小首傾げて思い出すように考え込んだかと思えば、いきなりよくわからん奇声を上げつつすっ飛んできた。マジ怖い。
「いきなりなんだよ⁉︎」
「見たの⁉︎」
「はい⁉︎」
「『中を見たのか?』って聞いてんの!」
「見てねえよ! まだ封がしてあんだろ⁉︎」
「絶っっっ対に開けちゃダメよ! いいわね!!」
「開けねえから落ち着け!」
凄い剣幕である。ちょっと興味が湧いたが、後が怖いので手を出さない方が無難だろう。
どうどうとナスタを鎮めていると……、
「――御主人様⁉︎ こちらはどうですか⁉︎」
勢い良くドアを開け放ち、肩で息をしながらシャリアが入ってきた。
「へ? いや、特になんも無いけど……」
「シャリア! 丁度いいわ、この箱をあなたの部屋に運んで頂戴!」
「え? それナスタのじゃ……」
「わかりました!」
「……へ? え?」
茫然とする俺をよそに、シャリアは部屋の隅の方から台車を取り出して、颯爽とナスタの本を運び出してしまった。
(……つーか、あんな所に台車があったのか)
念話で確認すれば良かった。




