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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第三章 〜『胎動』〜
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『マイホーム』後編

 精霊建築の時は見張り塔へ繋がる道しか無かったが、建設の際に道の整備も同時に行ったようだ。俺の家まで続く並木道が、途中から枝分かれて追加されていた。


 道の両脇には樹木が整然と並び、平原が一面に広がる北西地区で、その一画だけが明かに浮いている。



《へ〜、結構良い仕上がりじゃない♡》



 呑気にそんな感想を漏らすナスタ。


(アレが俺の家?)


 至るまでの道もそうだが、柵の内側諸々と占有面積がデカ過ぎる。精霊建築の時の紋章陣は、邸宅そのものの大きさを示すだけに過ぎなかったようだ。


(デカすぎ、広すぎ、分不相応だろ。もっとこぢんまりしてていいのに……)


 THE・庶民な私。


 贅沢=(エネミー)な価値観が拭えず、落ち着かない俺をよそに馬車はかっぽかっぽと進み、門の前まで移動した。


(こwれwはw)


 見上げて思わず草。


 立派なアーチ型の門構えに、ごろにゃ〜とニャンコの像が鎮座ましましていた。


 双尾の猫像。トリアの像である。


(家紋って、こういう使い方もされるのか……)


 カールネスと打ち合わせた時に確認されたものの一つだ。


 家名を獲得した者は、同時に家紋も定めるらしい。


 動物、植物、物品、etc……と、良俗に反しなければ何でもいいそうなので、我が家のマスコットと化した「(トリア)で!」と返答したのだが……、



「かわいい〜!」

「ええ! 何度見ても素晴らしいです!」

「みっ!」



 嫁‘sと御本尊には好評らしい。確かに可愛いけど、何だろうな? 何かが違う気がする……。



 「《開門》」



 隣りで轡を振るっていたシャリアが、右手を上げて紋章を閃かせた。


 ギギギッと正面の門が勝手に開く。



「おお、なんと⁉︎」

「勝手に開いたよ?」


《紋章錠。貴族が所有する邸宅なら普通よ》



 今のがそうなのか……知ってはいたけど、実際に見たのはこれが初めてだ。ワンダフルすぎる。



(……でも、領主館で使ってる場所見た事が無いぞ?)



 こんな便利そうな物を最重要施設に採用しないとは是如何に?



《制約が厳しいのよ。紋章錠に登録出来る紋章は一つだけ。多人数が出入りするような施設には使えないわ



……そういう事か。



(開閉出来るのは紋章登録者の縁者だけ?)


《そうなるわね〜》



 アスガンティアで言う縁者は親類筋を含まず、縁を結んだ当人同士のみを示す。俺の場合だと、シャリアとリリアの二人だ。



(それって、来客の時にはどうすんの?)


《門の傍に有る紋話陣で遣り取りするのが一般的。連絡が来たら、家の中から開門して中に招くの》



 ナスタの説明から俺が連想したのは、高級マンションの受付(エントランス)だ。部屋番号押して中の住人と話して、入り口の鍵を開けて貰う感じのやつ。



(遠隔操作とかハイテクだなぁ……)


《……はいてく? 良くわからないけど、遠隔操作は紋話の応用よ? 領主の管理下にある建築物にしか使えないけどね》



 左様か。何にせよカッコいいです。手を翳して「オープン・ザ・ドア!」とか、14歳(ソウル)がうずうずします。



《……あんたも出来るわよ?》

「マジで⁉︎」

「わ⁉︎」「御主人?」

「いや、すまん、何でもない」



 いきなり声を上げたから吃驚させたらしい。許せ。



《アーリスが閉門してみたいんだって》

《……? わかりました。門を抜けたら少し止まりますね》

《やっちゃえアーリス!》



 馬車の中は兎も角、御者台は相応に揺れる。舌を噛まないように、ナスタ管轄下で念話する一同。


 これこれとナスタとシャリアに指南を受けて程なく、門を抜けた馬車は斜め向きに停止した。


 門が一望出来る位置。そこから門を隠すように手を翳し……、



「《閉門》!」



 唱えた。


 ゴゴゴッと難なく門が閉じていく。



「…………うむ!」



 アスガンティアに来て、初めて異世界っぽい事をした気がする。むっちゃ楽しい。



「有難うシャリア、行って良いよ」


「はい、では進行致します」



 再びかっぽかっぽ。



(俺の登録って、ランフェスに渡したあれ?)



 再び走り出した馬車に揺られながらナスタに聞いてみる。紋章での登録となると、俺が仮宿で最初に起きた時の、あの紙以外に心当たりが無い。



《そ、紋章紙。使えるのは3回まで》


(……3回?)


《何回も使える訳無いでしょ? 紙に残ったマナが無くなったら終わり。あの時の量だと当主登記、家紋登録、紋章錠の3つが限度ってところね。後で運用履歴が報告される筈よ》


《あの……その件でしたら、既に報告が上がっております》


(そうなの?)


《はい。御主人様の執務机に書類は全てまとめてありますので、後でご確認下さい》


(了解)



『まとめてある』か。確認しなきゃいけない書類が山程ありそうだ。


「また暫くの間缶詰め生活かな〜」と、胸中で覚悟を決めていると、目の前に『跳ね橋(・・・)』が見えた。


(……嘘だろ、おい……)


 しかし、考えてみれば当然だ。家の周囲をぐるりと堀で囲むのなら、その堀を渡る為の橋は必須となる。


……橋はわかるけど、何故に跳ね橋?


(入り口に跳ね橋のある建物って、城しか思いつかないんだけど……)


 素人目に見ても、病的なまでに守衛を念頭とした造りだ。


……一体何と戦うつもりなのだろうか?


(………………)


 見る分にはいい。


 しかし其処に住むとなると感覚がまるで違う。


 前の世界で「今日からここがお前の家だ!」と、どっかの城に連れて行かれて、何の葛藤もなく受け入れてそこに住める奴はまずいないだろう。


 ここよりも大きい領主館で生活していた経験はあるが、家族だけでなく従者や守兵達がいたし、ある程度自由に出来るのは私室だけだった。家というよりは、ワンルームマンションのような感覚が近い。



――占有とも言えるような並木道から入り、


――遠隔操作で開閉出来る立派な正門を抜けて、


――視界を完全に遮る密度の雑木林を進み、


――堀の上を渡す跳ね橋を越えた所にある家。



……領主館と同じ感覚で居住するのはちょっと厳しい。無理です、ええ。


(慣れるのにどれくらいかかるかな?……ま、深く考えずどっかで開き直………………)


「れぇぇ⁉︎」

「はい⁉︎」「わにゃ⁉︎」



 俺の奇声で右に曲がろうとした馬車がヒヒンと急停止した。



「どうかなさいましたか⁉︎」

「あっち、あっち!」



 10歳どころか5歳なレベルで左側を懸命に指差す20歳。



「庭園に何か?」

「庭園⁉︎」



 ガーデンまであったよ⁉︎ 素敵!



「お気になるのでしたら、馬車を馬房に入れた後、散策なされますか?」

「散策なされます!」



 何というサプライズか!


 wktk(ワクテカ)で胸が高鳴ります!

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