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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第三章 〜『胎動』〜
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レイジェル『発端』

 フロード領を出発してから、3ヶ月の月日が経とうとしていた。


 レイジェルの家族が参入した商隊は、北からシャロードへ入り、ノアロードを経由してカロードに向かう一団だ。


 王族の治める大陸中央領のゼムロードが、最終的な目的地になる。


 現在の位置はシャロード領の南側。シャロード・ラズダからちょっと南に下った所だ。


(あっちは無事に着いたかしら?)


 ノーイルは直接中央に向かう商隊に随行したので、フロードを出て直ぐに分かれる事になった。


 天文学者になるには、王都で学者として経験を積むしか道は無いらしい。


――星を見るのが好き。


 ただそれだけで突き進んでいった友人。危ういものを感じつつも、大丈夫だろうという確信をレイジェルは胸に置いた。


 物静かで、淡々と荷物持ちの任をこなしていたノーイル。待つ事、耐え忍ぶ事が出来、その上で歩み続けられるのであれば、どんな場所にだって辿り着けると思う。


……だから、きっと大丈夫。


 目の前に広がる風景をキャンバスに収めながら、レイジェルは同郷の友に思いを馳せた。


 絵の完成が近くなると集中が切れる悪い癖。空白に滲んで浮かぶ慮外の思考。「何とかしなきゃ」といつも思うが、どうやって留めればいいのかわからない。



「――きゃっ⁉︎」



 筆を滑らせていると、突然強い風に見舞われた。


 慌てて画材が飛ばされないように支える。



「……もう、絵を描いてる時は吹かないでよ!」



 無茶な愚痴をこぼしながら、諸々の位置を補正し直す。幸いにも丁度筆は離れていたので、絵は無事だった。


(そういえば、最近風が強いな……)


 フロードではあまり意識しなかった風の存在。


 領から出て気候が変わった所為だろうか、随分と間近に感じるようになった気がする。






「レイジェル〜!」



 完成まであともう少しといった所で、自分を呼ぶ声が草原に響いた。



「ここ〜!」



 開けた場所だが、起伏が激しい。母の声はすれど、こちらから姿は見えない。あちらも同じだろう。声を張り上げて、自分の場所を知らせた。



「お、居た居た。どう? もう描けた?」


「……もうちょっと」



 この商隊は運搬だけでなく、自分達で商品を作りながら行商している。


 詩を詠む人。


 服を編む人。


 木を彫る人。


……そして、私。絵を描く人。



 様々な職人の集まり。話を聴いているだけで豊かになれる一団。両親に負担の掛かるお願いだったけど、やっぱり参加して良かったと思う。



「ミウラさんから……これ! 預かって来たわよ!」



 母が「じゃーん!」と自分で効果音を口にしながら、二本の小瓶をポケットから取り出した。


 透明な小瓶で、それぞれの中が緑と赤の絵具で満たされているのが見て取れる。材料師であるミウラさんが作ったものだろう。


 材料師は細工や加工に必要な道具を作る人で、今までにも何度か新作の絵具の試用を依頼されていた。



「……緑は兎も角、風景画で赤は試せないよ?」



 使えない事も無いけど、夕刻の風景に限られる。



「……やっぱり? 私もそう言ったんだけどね〜」


「緑の方は使ってみる。いつもので良いの?」


「ええ、「塗りの伸びと乾燥時の色の変化。後は厚塗りで割れたりしないか」だって」


「わかった。次の絵で試してみる」


「あと、ホホコルさんが探してたわよ?「あんまり遠くに行くな!」って」


「あ〜……うん。ごめんなさい」



 絵を描く時は一人になりたい。周囲に人が居たり、見られながらだと集中出来ない。


(……迷惑だよね)


 何度も注意されているけど、収入の面でも出来る限り両親に協力したいと思うし、絵を描く事はこの旅の目的だ。……ちょっと譲れない。



「今度から気を付けるよ」


「そう言って反省した試しが無えんだよなぁ……芸術家って奴は」


「わっ⁉︎」



 いつの間にか隣にホホコルさんが居て、仁王立ちで私に睨みを効かせていた。


 護衛隊の隊長さんで、倭人族だから背は小さいけど、凄く強い。



「描けたのか?」


「え〜と……もう少しです」


「そうか、悪いが狩りの時間だ。人数を割かなきゃいけねえから、続きは明日にしてくれ」


「……はい」



 完成させたかったが、日程にはまだ余裕がある。面倒をかけている自覚はあるので、我が儘は言えない。



「レイジェルは風景画ばっかりだな……人物は描かないのか?」


「……苦手なんです」



 片付けながらホホコルさんの問いに返す。


 フロードに居た頃何度も試したけど、手応えを感じた事は一度も無い。


 被写体の所為にする気は無いけど、風景のように「これだ!」といった衝動が湧かないのが原因の一つだと思う。



「そうか……ま、焦らずゆっくりやると良い。描けるだけ大したもんだ。わしはコレしか知らんからな」



 ホホコルさんが、腰に下げた斧を叩きながらガハハと笑った。



「……リリアも斧使いでした。倭人族は斧を好むもの何ですか?」


「……リリア?」


「あ、フロードの友人です」


「懐かしいわね〜、リリアちゃん」



 キャンバスを肩に掛け、絵具などの小物は母が持った。



「決まってるって訳でも無いが、一定以上の重量を好むのは確かだな。剣じゃ軽すぎてぶん回した時吹っ飛びそうでなぁ」



……そういえば、リリアも武器を重さに任せて殴りつけるような使い方をする娘だった。


 倭人族は身体強化の種族特性を持つ。力加減が難しいのかも知れない。



「にしても、リリアか……良い名前だな」


「……? 良い名前?」


「倭人族は連続した音の響きを好む。わしのホホ(・・)コルや、ポルトト(・・)ススなんかもそうだ」


「ポルトトスス……」


「知っとるか?」


「はい、探検家の方ですよね?」



 ユーシャが本を指差しながら、熱を込めて良く話していたのを思い出す。



「友達がその人の本を集めてました」


「ほう……ならば『ニトクリス王子』はどうだ?」


「……王子様ですか? そちらの名前は聞いた事が無いです」


「今でこそポルトトススの著作は数多く出回っているが、これはニトクリス王子が当時失伝に等しかったものを再編し、復刻したからだ」


「はあ……」



 そんな背景があったとは知らなかった。


 私は興味がないけど、ユーシャへの手土産に丁度いいかも知れない。


 ちょっと詳しく聞いてみよう。



「ニトクリス王子って、どんな方だったんですか?」



 たくわえた髭を撫でながら、ホホコルは思い出すように語った。



「王族の出でありながら、洞窟探索に精を出す変わり者だったらしいな。この王子の代で、王族はかなりのマナを貯蔵したって話だ」



……本当にユーシャが好きそうな話。ひょっとしなくても、もう知っているかも知れない。



「未成人の内に洞窟を踏破したって記録も残っているそうだ。成人していれば、更に逸話を増やしただろうになぁ……」



 実に惜しい、と残念そうに呟く。



「成人していれば、って何かあったんですか?」


「ああ」



 ホホコルが前に視線を移す。その先を辿ると、商隊の拠点が見えた。10を越えるテントが円形に並び、中央に人が集まっている。狩りに赴く人達だろう。



「なにぶん大昔の話だ。わしも人伝に聞いた程度なんだが……」



 歯切れの悪い物言い。やや声を潜めてホホコルさんは続きの言葉を風に乗せた。






――「成人の日に、空挺から落ちたらしい」――






 倭人族の戦士が語る、過去の王子の結末。


 風に乗って耳朶に届くそれに、レイジェルは不思議と強く惹かれるものを感じた。

お久しぶりです。お待たせしました!

(本当に待っている人が居るかは気にしない)


……おかしいなぁ、

「一ヶ月もあれば序盤の修正終わるでしょ!」

とか思いきや、リアルの方がしんどかったです。


定年退職でー1、

契約満期でー1、

途中解約でー1、

要員補充で+2。


……うちの人事は算数も出来ないのか(zetubou)


二月になっちゃったし、修正は切り上げます。

GWの連休辺りでまた取り掛かる予定です。


む〜ん残念( *`ω´)ブー

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