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金?の力で無双する異世界転生譚  作者: 世難(せなん)
第一章 ~『転生』~
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『掌上の儀礼』

ノックの音はドアの下部から聞こえた。


「すまない、開けてくれるか?手が塞がっているんだ」


ドアを開けると、両手に朝食を持ったランフェスの姿があった。


「おはよう、レーゼル」


「おはようございます、今日は侍従は?」


尋ねながら、朝食を受け取る。


「他に見られる前に打ち合わせがしたいからね、交代してもらったよ」


「……見られる?」


……何のことだろう?


「取り敢えず、其処のテーブルで朝食にしよう」


「ここで食事を?」


わざわざ二人分持ってきたのだから、予想は付いたが、


「……小さくないですか?」


一つトレーを載せたら一杯になりそうだ。


「昔やった事があってね……ほら、こうすれば載るだろう?」


そう言いながら、トレーを横向きにしてテーブルの向こう半分だけを使う。


……ファーストフード店の二人席みたいだな。


倣って隣に置くと、ランフェスとの距離が近い。


何となく、気恥ずかしくなった。


「……さぁ、いただこうか」












食事しながら会話するような事はしない。


前の世界でも、正直好きな行為では無かったが、アスガンティアでは完全に非礼に当たる。


食後の礼の後、トレーを片付けて、給水の時間で対談する。


「……薬は飲まなかったようだね」


置きっ放しの薬が見つかった。


「……あ……ごめんなさい、すっかり忘れてました」


「いや、ハウゼ氏からの報告を先に聞いていれば、不要だと渡さなかっただろうから、問題無いよ」


「報告?」


「健康そのものだと診断された。ナウゼルグバーグに襲われ、あの様な状態で運び込まれたのにね」


その時の情景は、俺の視点では知る事は出来ない。


「……君には礼を言わねばならない」


「え……?」


ランフェスが、今の簡易なテーブルから移るように、寝台の横にある椅子を指差す。あの時に、ナーシャルとランフェスが使っていたものだ。


移動している間に、「礼を言われるような事があっただろうか?」と、レーゼルの記憶を含めて探すが、思い当たらない。




椅子に座ると、ランフェスは居住まいを正した。その真剣な表情に、こちらも気を改める。


「父と私は……ある意味母もか、レーゼルが囮となったと報告を受けた時、酷く憤慨した」


ランフェスがその時の思い語る。


「騎士に傾倒していたレーゼルが、皆の為に犠牲になる事を良しとしたのではないか?と」


「それは違いますよ!」


即座の否定を、ランフェスがかぶりを振って止めた。


「ああ、わかっている。いや、知る事が出来た。あのままであれば私達は、レーゼルが騎士の本懐に酔い、自己犠牲に駆られて行動した様にしか思えなかっただろう。騎士の在り方として見れば、評価を得るかも知れない。だが、領主の子としては失格だ」


目を閉じて、思う。その通りなのだろう。


為政者の子、ましてやアスガンティアは世襲が常で、前の世界のように、投票で民意を問うような事はない。管理する側、支配する側の責任は、きっと、俺とレーゼルが考えるよりもずっと重いものだ。


「しかし、君の言葉でそれは覆された」


ーー軽挙に死を望み、挑んだ訳では無かった。


ーー覚悟は死ではなく生還に向けられたもので、


ーー願いは幼いが故に純粋で譲れないものだったと、


「ならば、その行いを咎められる者はいない」


……胸中の込み上げるものを、そのまま受け入れる。


それは、レーゼルの意志から生まれたもの。

素直に、兄に認められたと喜ぶ、幼い子供のもの。


(……よかったなぁ、レーゼル)


「領主代理、ナスター・ランフェス・フロードより、レーゼル・アーリス・フロードへ感謝の言葉を贈る」


「……レーゼル・アーリス・フロードより、その御言葉に掌上を掲げます」


これは、アスガンティアの貴族の間で行われる正式な儀礼。


両の手のひらを上にして、ランフェスに差し出す。


その手に、ランフェスが手を重ねる。


「ありがとう」


短く、強く告げられた感謝の言葉に、礼を返す。


「……掌上にて確かにお受けしました」




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