伊勢物語~芥川~
昔、男がいた。
男には愛している女性がいた。だが、手に入れられそうにない。嫌われているとかではない。身分の違いだ。相手は天皇の女房となることがほぼ確定的であった。
男は長年、アプローチして結婚を望んだ。女の心も、実はまんざらではなかった。男のことがずっと気になっていた。でも、自分は天皇の女房になる身。男の求婚に応じることはできない…。
それでも男は諦めなかった。ある日、とうとう駆け落ちをする。
言葉はなかったが、実質同意の上であった。恋の逃避行である。
芥川という川を沿って二人で逃げる。女は草の上に置いている露を見て、「あれは何?」と聞いた。男は答えなかった。
行き先は遠く、夜も更けてきた。雨が激しく降って、雷もなっている。男は荒れた小屋に身を隠すことにした。だが、そのとき男は知らなかった。小屋には鬼がいたことを…。
男は、女を小屋の奥に隠して、自分は武器をもって玄関に立っていた。こんなことをしても無駄なのはわかっている。相手は天皇家だ。太刀打ちなんてできない。でも、愛する女性と一緒にいるため、そうせずにはいられなかった。
今日ばかりははやく夜が明けてほしい。そうしたらもっと遠く、もっと遠くまで逃げられる。そう思いながら男は玄関に立ち続けた。そんなときに、小屋にいた鬼が、女を一口に食べてしまった。「あぁー!」と女は叫んだが、雨や雷にかき消され、男には届かなかった。
だんだん夜も明けてきた。男はホッとして女にいるところに行った。しかし、女はいなかった。男は察した。鬼に食べられてしまったのだ…。
「くそっ、クソッ!」
男は地団駄をふんだ。だが、そうしたところで女は戻ってこない。
「白玉かなにぞと人の問ひしとき露と答えて消えなましものを」
(あれは白い宝石ですか?なんですか?と女が尋ねてきたときに、なぜ俺は答えなかったのだろう。女だけいなくなってしまうなんて、、こんなことになるのなら、あのときに「あれは露だよ」と答えて、その露のように二人一緒にいなくなってしまえれば良かったのに。どうして俺だけ取り残されたしまったんだ…)
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テスト対策!
~文学史編~
ジャンル:歌物語
時代:平安時代
作者:未詳
平安時代の歌物語は?
→3つ覚えよう!
『伊勢物語』・『大和物語』・『平中物語』
これは声に出して覚える!
リズムよく「伊勢、大和、平中!」って何回も繰り返そう。
~ポイントまとめ!~
○男のモデル=在原業平
※六歌仙のうちの一人だよ!
※六歌仙って他に誰がいる?って問題も出るかも!調べてみよう!
○鬼=女の親族のこと
※じつはこの話にはちょっとだけ続きがあって、そこにしっかり、女(二条の后)の親族って書いてあるんだよ。
○神=雷
○係結びの法則→今回は1つだけ!
→「『かれは何ぞ』となむ、男に問ひける」の「なむ」と「ける」が係結びになっているね。
○「え~打ち消し」=「~できない」
訳してみよう!
①「え得まじかりける」
②「え聞かざりけり」
正解は、
①「手に入れられそうになかった」
②「聞くことができなかった」
○已然形+「ば」→4つ出てきたね!
1、「~したところ、」っていう意味
今回は2つがこの意味で使われているね。
訳してみよう!
①「芥川という川を率て行きければ」
②「見れば率て来し女もなし」
正解は、
①「芥川という川を(女を)連れて行ったところ、」
②「見たところ連れてきた女もいない」
2、「~ので」っていう意味
これも2ヶ所だね!
訳してみよう!
①「夜も更けにければ」
②「雨もいたう降りければ」
正解は、
①「夜も更けてきたので」
②「雨もひどく降るので」