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可能性の獣  作者: 小さな畔
5/8

純然たる闘争の息吹

PC持ってくれよ

フッと和らいだ顔になる一刀。


一刀「(あいては雪蓮だ・・・。始めから全力でぶつかっていくしかねぇな。


     江東の小覇王がどんな力を秘めているのか楽しみでしょうがないけど


     一個間違えば多分・・・・・俺がこの世にいるかすらわからんそうだしな。)」


一刀の雰囲気が一気に戦闘モードに切りかわった。


一刀「でもま・・・、みんなのために・・・・、なにより華淋の為にも負けるわけにはいかないよな!」


一刀は自分の心にそう誓い、一刀がリングへと登るのだった・・・・・・・・


雪蓮「やぁっときたなぁ、一刀~。」


笑顔で一刀は雪蓮に迎えられた。


一刀「お待たせ。」


一刀も挨拶を返した。


そう交わした後、それ以後何も交わさず互いに武器を構えた。


司会「それでは、お二人ともよろしいですか?」


司会が二人に確認の合図を出した。

     

二人が無言のまま頷いた。


司会「では・・・、始めていただきましょう。


    呉軍 孫策選手 対 魏軍 北郷選手・・・・・試合、開始ぃ!!」




開始の合図を聞いた後二人が見えなくなった。



会場のほとんどの人に姿は見えず音だけが聞こえてきた。


二つの刃が激突し、響かす音だけが-------------------会場を包んでいた・・・



春蘭「なんという速さかっ!」


二人の激突の速さに春蘭が驚いた。


関羽「あれだけの速さ・・・・、張遼や恋並だぞ・・・!」


関羽は最速の攻撃速度を持つと思われる二人を例に挙げた。


甘寧「私で・・・、おいつけるかどうかだな・・。」


隠密に自信がある甘寧ですら自信なさげであった。



ガギィン!!


キィン!



二つの影が衝突する度に響く音だけが、二人の存在の証だった。



華琳「(一刀・・・・、貴方そこまで・・・・。)」


もはや過去の力の無さを微塵にも見せない一刀の力に華琳ですら驚いた。


華琳の驚愕。


それは先ほどの闘いでも驚いていた魏の面々には更に衝撃を与えていただろう。



一分ほどだろうか、刀と剣の奏でていた協奏曲が止んだのだった。


その後、奏者の二人が再びリングの上に現れた。


驚くことに二人の息はそこまであがっていなかった。


雪蓮「やるもんだとはおもってたけれど、ここまでやれるとはねぇ~。


   これはさすがに驚きだなぁ。」


ケラケラと笑いながら雪蓮が一刀に思った事をそのままつたえた。


一刀「いやー、俺も自分に驚きだわ。」


ハハッと笑いながら一刀も返した。


雪蓮「でも・・・・、一刀。」


スゥッと雪蓮の顔が暗黒面に変わった。


空気が自然と凍りついた。


雪蓮「この期に及んで手加減してんじゃないわよっ・・・!」


視線だけで相手を殺せそうな雪蓮のドスのきいた声が一刀を貫いた。


一刀「おいおい、手加減なんてしてねぇぞ。」


そんな雪蓮のプレッシャーに負けず普段どおりの一刀で返した。


雪蓮「あっそ・・・。あくまで嘘をつくならそれでいいわ。


   私が貴方の本気を引き出してあげるわ。」


その言葉の後、雪蓮は揺れる柳のようにユラッと体を動かした後


一刀の視線から消えた。


一刀「なっ!」


一刀の一瞬の雪蓮への怯み。


そして次の瞬間



ドゴンッ!


自分の体が吹っ飛んでいることに壁からの衝撃のキスをもらってから


一刀はようやく気づいたのだった。


雪蓮の踏み込みからの瞬足での接近、そこからの強靭な脚から繰り出される前蹴り


に吹き飛ばされたのだった。


一刀「がっ・・・・!!?」


衝撃と痛みが体を駆け巡った。


意識が闇の中に振られそうになる一刀。


しかし、前のめりに倒れながらも膝で立ち、なんとか歯を食いしばって、意識を保った。


一刀「いっ・・・・・・・。」



一瞬の間をおいて



一刀「てぇええええええええええええええええええええ!!」



一刀が背中の痛みから叫んだ。



雪蓮「一刀・・・・、貴方・・・、体に重しつけてるでしょう!」


プンプンッと怒りながら一刀を南海覇王で指しながら言った。



一刀「重しなんて・・・・。」


と、痛みに耐えながら言い返そうとした一刀の言葉をさえぎり、雪蓮に一刀が更に告げた。


雪蓮「今貴方を吹っ飛ばしたけど、どう考えても貴方の体重以上の重みを感じるのよっ!


    重しをつけながら闘う・・・・、


    それを手加減と言わず、なんて言えばいいのよ、バカッ!」


猛烈に怒りながら雪蓮が怒鳴りつけた。


一刀「・・・・・、ちぇっ。」


そういいながら、グッと膝に手で抑えて、一刀が立ち上がった。


立ち上がった後、真桜を鞘に納め、左手の皮製に見えるリストバントを手首からはずし


それをリング外の誰もいない所へ投げ捨てた。


リストバンドが地面に着地したとき、想像していた音以外の音が鳴った。


ドゴッ!


リストバンドが着地した地面の周りがわずかに沈んだ。


雪蓮はその行為を静かに見ていた。


そしてもう一方の手首のリストバンドをはずし、先ほど投げたリストバンドの方へもう一度


投げた。


更に地面が沈んだ。


一刀「ふぅ・・・。」


一刀が重たかったものが無くなり、軽くなった”手首”をブラブラと動かした。


雪蓮「いまので・・・・、どれくらい軽くなったの?」


南海覇王を鞘に納めた後、雪蓮が一刀に尋ねた。


一刀「そうだな・・・、七分の一ってとこか。」


一刀の引き締まった体は余計な脂肪がなく、今は70kgぐらいだろう。


雪蓮「ふぅん・・・・、じゃあ、それだけじゃ無いわね。」


腰に手を置いて一刀に指を差しながら雪蓮が言った。


一刀「ま、ね。」


一刀がそう言うと両方の靴を脱いで両足首に巻いていた手首に巻いていた同じバンドを


外し、手首に巻いていたバンドがある方へと投げた。


そしてまた靴を履いた。


一刀「これでまた七分の一、軽くなったかな。


    んで、大体俺の体重は一石ぐらい。」 一石≒約70kg


そういって一刀は服を調えた。


雪蓮「ふぅむ・・・、道理で重たいわけだ。」


納得した顔で雪蓮は頷いた。


一刀「んで、俺も言いたいことあるんだけど。」


一刀が今度は雪蓮に問いをもちかけた。


雪蓮「んー、何?」


一刀「そのヒール、脱ごうぜ。 それも有る意味手加減だろ。」


一刀が雪蓮のヒールサンダルを指差しながら言った。


雪蓮「ありゃ・・・、気づいた?」


雪蓮が少し意外そうに言った。


一刀「当然。 確かに蹴りいれるときはその点での一撃は魅力かもだけど


    踏み込み時の不安定さ、その他諸々、良いことは悪いことより少ないな。」


ふんっ、と一刀が言い切った。


雪蓮「・・・・・、正解。」


そういって、雪蓮もまた”自分を押さえ込む”鎖を解きはなった。


雪蓮「でもこれ脱いじゃうと、手加減できないから、よろしくね。」


ヒールを脱ぎながらものすごく嬉しそうな笑顔で雪蓮が一刀に言った。


一刀「まぁ、お互い失礼な話しだけど・・・、本気で殺り合おう。」


一刀が纏うオーラに少し、殺気が織り交ざりはじめていた。


雪蓮「当然・・・・、これは試合だけど。


    互いの意地を賭けた子供の”喧嘩”なのよ。


    徹底的に殺りあわないとね。」


雪蓮のオーラは先ほどよりももっと鋭い殺気は纏いだした。



そして、試合を開始した時のように互いに向き合い武器を構え


雪蓮「さぁ・・・・・」


一刀「殺し合おうかっ!」


二人の純粋なる殺し合いが




始まる・・・・・・・!



雪蓮「ハッ!」


先に動いたのは雪連の方だった。


雪蓮が踏み込んだ跡は裸足型の足跡が残っていた。


石でできたリングに跡が残る程の踏み込みだということだ。


その踏み込みから繰り出される剣撃は先ほどとは格段の差だろう。


一刀「ふっ!」


ガァン!


刀と剣がぶつかった音には聞こえないような音が会場に轟いた。


先ほどのような高速での戦いではなく、打ち合いはある程度のものにも見える


ぐらいの速さに落ちていた。


否、落ちざるをえなかった。


でなければ、どちらかが相手の力に屈し、その刃を折られていただろう。


速さでの力比べは終わり、純粋なる”力”での勝負へと切り替わっていた。


確かに相手以上の速さで逃げ切り、反撃すればそこで終わるだろう。


しかし、そんなつまらない終わり方を二人は選択するだろうか?


これは試合じゃない、そう二人にとっては「喧嘩」なのだ。


思う存分自分のありったけの力を使って


相手を納得させるまで二人の戦いは終わらないのだ。


なら、力に重点を置くのは至極当然。


二人の解き放たれた力は、呂布に匹敵するほどに、もしくは


その上をいく力かもしれない・・・・。


ただ、その呂布がいつも本気で戦っているか否か、それもまたわからない話である。


彼女が本気を出したのは、いつだ?


その答えは呂布自身しかわからない。


二人の力比べは激しさを増していた。


一刀「ハァッ!!」


雪蓮「アァッ!!」


一刀が攻撃すれば、雪蓮がそれをすかさず防御し


雪蓮「テァッ!」


一刀「なんのっ!」


雪蓮が反撃に転じれば、一刀がさせまいと防御する。


その行為を何度も何度も繰り返すうちに二人のいる周りリングが少し


浮き上がっているように思えた。


関羽「二人とも・・・・、なんという力かっ。」


趙雲「あの領域に達することができるのはほぼいないだろう・・・・。」


張飛「鈴々ならあれぐらいへっちゃらなのだ!」


馬超「馬鹿いうな! 恋に一度もちゃんと試合して勝てたことないくせに!」


張飛「じゃあ翠はどうなのだ!」


馬超「悔しいけど・・・、いまのあたしじゃ無理だ・・・、でもいつか必ず追い越してみせるさ!」


張飛「そういうなら鈴々だっていつか絶対追い越してみせるのだ!」


趙雲「それは今・・・、この戦いをみて自分の方が劣っていると一度でも感じてしまったものは


    みながそう思っているであろう。この試合に死はおとずれないのだから」


関羽「”次”がある。そう、今もし劣ったと感じても、次負けなければいいんだ。」


趙雲「目標があれば、平和になった今この世でも、己が腕を錆びさせず


    磨き続けることに何の疑問も抱かずにすむ。」


関羽「われらの未来はまだまだ長い、その中でいつか・・・必ず!」


蜀の武将達の心はひとつのようだ。


そう、ほかの国のものたちも考えていることは同じだろう、皆同じ「武」の道を生きるものたちなのだから。


但し誰もが一刀が命を削りながら戦っていることに気づくことはなかった。




そうこうしているうちに打ち合っていた二人の


互角に思えた戦いにもどちらかに少し傾きがあったようだ・・・・・・・・


押されだしたのは一刀だった。


一刀「(くそっ・・・・、気の移動が間に合わねぇっ!)」


修行は積んできたものの、ここまでマジな実戦は初めての一刀は


攻防に気を振り分けるのが、瞬時に気を移動させるのがここまで難しいとは思わなかった。


雪蓮もその隙を見逃すことなく、鋭い一撃を入れてくる。


一発喰らう時にはなんとか鋼気功で防げてはいるが


更に闘いが激しくなるのでは追いつかないかもしれない。


雪蓮「もっと闘い慣れとくべきだったわね、一刀!」


そう叫びながら一刀に猛攻を仕掛ける雪蓮。


一刀「お心遣いありがとうござい・・・まっす!」


それに負けじと反撃をする一刀。


しかし一刀の攻撃は中々雪蓮に当たらない。


当たるといっても掠る程度だ。


一刀「(でもまじで闘いなれてんなぁ~、雪蓮のやつ


     俺と気の使い方とかの差が有りすぎるぜ。)」


図星を突かれた一刀は少し焦っていた。


雪蓮「そらそらそらぁ~!」


雪蓮はここが仕掛け時と言わんばかりにラッシュを繰り返した。


剣での攻撃だけでなく、体術も織り交ぜた攻撃は型が無く


攻撃の軌道を読もうとしてもことごとく予想を裏切った所から


攻撃が繰り出されるため、一刀も対応し辛かったのだった。


一刀「くっ!」


このまま押され続けてはいずれこちらがジリ貧になり敗北する、と一刀の脳裏に


そんな考えが浮かぶ。


しかし、こちらがやぶれかぶれの反撃を繰り出しても雪蓮はたやすく回避し


痛恨の一撃が一刀を襲うだろう。


どう転んでも「このまま」では一刀に勝ち目はなかったのだった。


一刀「(どうする・・・・、どうするっ!)」


自分が元の世界で得た力はココまでなのか、


なんのために頑張って修行し、得た力なのか


「なんのために?」



一刀「(なんのために・・・俺はっ!)」


自問自答を繰り返しているうちにその問いに気を取られた瞬間


雪蓮「甘いっ!!」


雪蓮は一刀のそのほんの一瞬の隙を逃すことなく、一刀の鳩尾目掛け


痛烈な蹴りを繰り出した。


なんとか防御しようとするも防御の手をすり抜けて、蹴りをもらってしまった一刀。


一刀「がっ・・!?」


ほんの一瞬鋼気功が遅れただけで、鈍器で思いっきり殴られた衝撃が一刀を襲い


そのまま後方の壁へと吹っ飛んだ。


壁に叩きつけられる前になんとか背面に気を回したが朦朧とした意識では


完璧に防ぐ事はできなかった。一刀の体にダメージが蓄積されていく。


そして、一刀がぶつかった壁が音を立てて崩れ落ちた。


前のめりに倒れ、うつぶせのような格好になった一刀。


一刀が突っ込んだ場所はちょうど華琳が観戦する席の真下当たりの場所であった・・・・・・・・


華琳「一刀っ!!?」


壁にぶつかった衝撃音で一刀が吹っ飛んだ事に気づいた。


凪「隊長!?」


風「おっ、おにいさんっ?」


魏の面々もそれに気づいて声を上げる。



雪蓮「まさか・・・・・、これで終わりなんていわないわよね? 一刀。」


一刀を見下ろしながら雪蓮が言った。


いつもならここで一刀が切り返すのだが今回は返ってくる事はなかった。


雪蓮は残念そうな瞳で一刀を見下ろし続けた。


無言の間が現れた。


それは同時に一刀を敗北へと誘う間でもあった。


司会「おぉーっと、北郷選手、立ち上がってくることができません!


    このまま立ち上がることができなければ


    北郷選手の敗北となります!」


敗北条件として、どうしても覆せない状況=闘うことのできない状況


に陥った場合、その選手は敗北となる。



雪蓮「あぁ~あ・・・、なんだぁ。 期待して損しちゃったなぁ。」



ガッカリした表情で雪蓮がうなだれた。


雪蓮「やっと対等に闘ってくれそうなのが出てきたのに、これで終わりじゃ全然楽しく無いわ。」



雪蓮の無情な言葉が一刀へと向けられた。


しかし、まだ一刀は立ち上がってこない。


------------------------


この状況の中、一刀は暗闇の中にいるように思えた。


会場中の声が消え、仲間達の声が消え、愛する主君の声も消えていた。


無音 


暗闇


それだけが今一刀の周りを囲んでいた。


一刀「あぁ・・・、俺雪蓮に負けちまったのか・・・。


    まだやれるとおもったのになぁ・・・・・・。


    ごめんな・・・、華琳。」


暗闇の中、うつ伏せで倒れながら一刀が言った。


一刀の意識もまた、周りの暗闇の中へと埋もれようとしたその時




???「馬鹿者!!!」



自分を叱る誰かの声が聞こえた・・・・・・

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