闘争本能
司会「では、次の戦いに入りたいと思います!
魏軍 北郷選手、呉軍 孫権選手 壇上へとおあがりください!!!」
司会の声がマイクを通して会場に響いた。
一刀「んじゃまっ、行って来るわ。」
一刀は皆に一言そういうとリングに向かって歩き出した。
凪「隊長、頑張ってください!」
沙和「負けちゃだめなのー!」
真桜「負けたらあかんでー!」
副隊長達の応援が届き
春蘭「貴様ぁ、負けたら即座にたたっきるからな!」
秋蘭「まぁまぁ、姉者、折檻で許してやれ。」
双子からはなぜか怖い事が聞こえてきて
季衣「兄ちゃん、頑張って!」
琉流「負けちゃいやですよー、兄様。」
華琳親衛隊からは微笑ましい声が届いた。
風「お兄さん・・・、負けたら・・・、わかってますねぇ?」
凛「まぁ、勝つ事はないとおもいますので、言うことはなにもありません。」
桂花「あんたなんて早く負けて華琳様に殺されなさいよ。」
軍師達からはなんともいえない声が届いた。
その言葉全てを飲み込んで、一刀が右手を上げてヒラヒラとゆらした。
-------------------呉-----------------------
雪蓮「精一杯頑張ってきなさい、蓮華。」
周喩「御武運を、蓮華様。」
甘寧「ムリはなさらぬように、蓮華様。」
黄蓋「権殿、おもいっきりぶつかっていきなされ。」
周泰「頑張ってください、蓮華様!」
陸遜「蓮華様~、がんばってくださ~い。」
呂蒙「お・・・、お怪我をなさらぬように・・・、蓮華様。」
孫尚香「北郷なんてたたっきっちゃえ、お姉ちゃん!」
孫権もまた皆の声を受け止め、一度頷いて
孫権「行って来る。」
そういってリングに向かった。
雪蓮「(一刀が・・・、私との約束を守るなら多分勝負は・・・・・・。)」
周喩「どうしたの、雪蓮、そんな顔して。」
雪蓮が珍しく考え込んだ顔をしていたので、周喩が気になって声をかけた。
雪蓮「ん、いやいや、なんでもないわよ~。」
周喩「そう? ならいいけど。」
雪蓮「(あ~・・、蓮華には悪いけどワクワクがとまんないわ・・・、未知の強敵に会えるっていうのは
本当に心が躍るわ・・・・!)」
戦闘狂の雪蓮にとって、強者の登場は最大の喜びでもあった。
二人がリングの真ん中まで歩み寄り、向かい合った。
一刀「おてやわらかに、孫権さん。」
孫権「私は、私のできるかぎりを尽くすまでだ。」
一刀「自分も、できる限りの事をやるまでです。」
そこで二人の会話が途切れた。
その会話の後、チラッと一刀は雪蓮の方を見た。
その視線に気づいた雪蓮はニコッとウィンクで返した。
そのしぐさに蓮華も気づいたが気にはとめなかった。
そのあと互いに武器を構え、向かい合った。
司会「それでは、よろしいですね?」
司会の問いかけに二人が頷いた。
司会「では・・・・・・、
魏軍 北郷選手 対 呉軍 孫権選手・・・・・
試合開始ぃ!!」
司会のいつも以上の大きな声が会場に試合開始を伝えた・・・・・・・・
開始の合図と共に孫権が動いた。
孫権「(実力が図りきれないあいてならば・・・・、先手必勝!)」
そう考えながら一刀に突っ込んだ。
一刀はそれに応えることなく紙一重でその攻撃を避けた。
孫権「くっ!」
紙一重に避けられたため、そのままいけると感じた孫権は
振り向きざまに剣を横払いする形で振るった。
しかしその一撃も一刀は紙一重で避けた。
孫権「まだまだっ!」
今度は孫権の怒涛の突きが一刀を襲った。
一刀「・・・・・。」
無言のまま一刀は全ての突きを避けた。
孫権「くぅっ!」
孫権が全ての攻撃を出し切ったが、そのどれもが一刀を捕えることなく終わった。
孫権「何故攻撃も防御もしない!!」
攻撃が届かない腹立たしさからか孫権が一刀に言った。
一刀「聞きたかったら・・・、俺に一撃を与えることだ。」
そういうと一刀は孫権とある程度の距離で動きを止めた。
孫権「私を馬鹿にして・・・・!」
一刀「馬鹿にしてはいない、二年前の君よりずっと強くなっている。
顔良に勝ったのが証拠だ。」
そう、孫権は二年前からかなり武力をあげている。
赤壁の戦いや成都での魏軍との戦闘では彼女はまったく役に立たなかったのだ。
そんな自分を恥じて、この二年間彼女は甘寧や黄蓋、雪蓮に指導してもらい鍛錬を積んだのだ。
しかし、下の位に居たものが中にやっとあがれたぐらいの力しかまだ持ち合わせていなかった。
だが、それは二年前の彼女からしたら目覚しい進歩だったのだ。
孫権「だが、今目の前にいるお前に届かなければ意味などない!」
一刀「意味がないわけはない。過去の君があったからこそ、今の君がいるんだ。」
一刀は何か伝えたいのか、説明口調になっていた。
孫権「何が何でも、お前に理由を吐かしてみせるっ!!」
一刀「こいっ!」
一刀は武器を構えず、下げたまま孫権を迎え撃った。
孫権「はぁぁぁっ!!」
孫権の全力を注いだ斬撃が一刀に迫った。
しかし、一刀はいともたやすく凌いだ。
めげることなく孫権が攻撃を続けるがどれひとつ届くことはなかった。
それに加え・・・・
一刀「どうした? 俺は一歩も動いて無いぞ。」
そう、同じ場所で一刀は孫権の攻撃を避け続けていた。
孫権「まだまだぁ!!!」
孫権の攻撃は続いた・・・・・
甘寧「北郷・・・! 蓮華様で遊びおって!!」
目の前の状況を指をくわえてみているしかない甘寧は悔しさで
血が出るほどギリっと拳を握りしめた。
雪蓮「思春、手を出してはダメよ。」
甘寧「しかし、雪蓮様!!」
雪蓮「本当ならもう・・・、決着はついているわ。
でもね、一刀は蓮華に次の段階に進むか、ココで降りるかその選択をさせる
ために・・・・、嫌われ役を演じてくれてるのよ。」
雪蓮は甘寧に納得するようにと目で訴えかけながら言った。
甘寧「雪蓮様・・・・。」
雪蓮「これからあの子が武人として生きていくのなら私はそれでもいいと思ってる。
でもね・・・・、神は残酷で、人に才能というものを持たせ生まれさせた。
武の才能がほとんどなかったあの子がここまでこれたのも・・・、スゴイ努力を重ねたからよ。
けど・・・、努力だけじゃどうしようもないのよ・・・、こと戦いに関しては・・・・ね。
あの子にはあの子にしかない、私にはない才能を持っている。
今は私の影に隠れて見えないけれど・・・・・、あの子は私なんかよりずっと
賢王としての才能をもっているのよ・・・。だから、私の後を継ぐのはあの子しかいないわ。
王の才は武の才以上に持ち合わせにくいものなのよ。」
甘寧「雪蓮様は・・・・、蓮華様のその事をしっていて・・・、この戦いへの参加を許可したんですか?」
雪蓮「理屈じゃないのよ・・・・、蓮華の想いは。
納得させてあげたかったの、あの子のこの二年間の頑張りは無駄じゃなかったって。
それが・・・・・・、負けで終わったとしても。」
甘寧「雪蓮様・・・・・。」
雪蓮「これから武人として生きていくのか、王として人を導くのかは・・・・、この戦いで
蓮華が自分で選び取るはず。あのこなら・・・、必ず。」
その話しのあと自然と二人の視線がリングに向けられた。
そこには全ての力を出し尽くした攻撃を避けられ、体力を使い果たした蓮華と
まったく疲れていない一刀の姿があった。
孫権「はぁっ・・・・、はぁっ・・・・。」
攻撃の後、距離を取るため後ろに下がった孫権。
一刀「俺に一撃も浴びせられなかったが・・・、質問に答えるよ、孫権さん。」
そういうと一刀はすっと刀にを鞘に入れた。
孫権「な・・・にっ?!」
一刀「今のでもわかったと思うけど、貴方の攻撃は防御する必要がまったくない。
あんな遅い攻撃当たる訳ないからな。
攻撃しなかったのはそれを感じ取って欲しかったから。」
孫権「馬鹿に・・・・しているのかぁっ!!?」
一刀「そうじゃないけど・・・、そう取られてもおかしくはないな。
孫権さん、貴方にひとつ聞きたいことが有る。」
孫権「なんだっ!」
孫権は話しだけをしているおかげか少しずつ体力が戻ってきていた。
一刀「あなたは・・・・、このまま武人を目指すおつもりか?」
孫権「当たり前だ!!
呉には姉様という絶対的な王がいる、なら妹の私はそれを支える為武将になる!」
孫権の言っている事は心からの言葉であり、偽りなどなかった。
一刀「雪蓮は・・・・、そうは思ってないようだけどな。」
孫権「きさまっ!! 貴様が姉様の真名を軽々しくよんでいいものではない!」
一刀「雪蓮から許可は得ている・・・、問題は無い。」
そう一刀が返すと、蓮華がチラっと雪蓮の方をみた。
雪蓮は小さく頷いた。
雪蓮の行動から一刀の言い分が本当だと孫権は思った。
孫権「どうやら本当のようだが・・・、しかしっ、貴様は私に何を言いたいのだ!」
一刀「貴方は武人になるのではなく・・・、王になるべきだ。貴方はその才能をもっている。」
孫権「ぬかせっ! 姉様以上の王はおらぬ!」
一刀「貴方は・・・・、貴方の本質をまだ見抜いていない・・・。
だから・・・、ここで俺がわからせる、貴方は武人に向いていないと、俺の勝利という形で!」
孫権「ふんっ! 馬岱にギリギリ勝てたお前が言えた台詞ではないわ!」
孫権のその言葉以降、一刀は何も語ることはなく、すっと刀の柄に手をかけて
構えた。
そして一刀はものすごい殺気を孫権に向けて放った。
孫権「(くっ・・・、なんだコイツ。急に気が鋭くなった・・・!? しかし、負けてたまるか!
私は姉様を支えるんだっ!!)」
孫権は一刀のプレッシャーに負けることなくまた武器を構え、一刀と向き合った・・・・・
孫権「・・・?」
一刀からのプレッシャーが薄くなった違和感を感じた瞬間
風が通り抜けていく感覚を覚えた。