夫婦の仲
暗闇の中。何かがこっちに向かって近づいてくる。
フルは目を凝らす。
そこには…般若がいた。
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「はああああぁぁぁ!般若ああああああ!」
「う・る・さ・い!」
刹那フルの頭に激痛が走る。
「がぁッ!頭がいっっっっってぇ!」
余りの痛さにもだえ苦しんでいると頭上から声がした。
「ヴォートが起きちゃうでしょ」
いつの間にか寝てしまっていたようだ。
というか、夢にまで出てくるって…どんだけ怖がってたんだよ。
フルが夢の事を思い出し、恐怖のせいか少し震えているとシキチーナが渋々といった表情で昨日の事について答える。
「はぁ…昨日の事はいつかヴォートに言わなくてはいけない事だったので今回は不問にします。」
絶対怒られ…いや、殺されるとさえ思っていたフルは、予想していなかった答えだったせいか、口をポカーンと開けている。
しかし、シキチーナはそんな事気に留めず続けていく。
「でも、いつか言わなければいけない事だとしても、それをヴォートに伝えるのは今ではありません。取りあえずこれからは言動に気を付けてください。わかりましたか?」
「え、あ…は、はい」
昨日の事がかなり堪えたのだろう、完全に下手に出ている。
それでも、とフルは思考する。
シキチーナの言っていることは正しい。確かにこの事は今伝えるべきではない。しかし、もしヴォートが真実を知ったとき耐えられるのか、それだけが不安だったのだ。
「ちょっと!何をボーとしてるの?早く準備しなきゃ!」
なんかシリアスっぽい雰囲気がシキチーナの拳&大声で台無しだ。
まぁ、そんな事を言っても仕方がない。取りあえずシキチーナの言いなりになることにした。