お爺ちゃん、体育大丈夫?
体育の授業ね……
儂達の昼食はのんびり行われていた。
木の下に置いてあるベンチに桐花さんと共に、座った。特に人が来る気配もなく、ゆったりとした時間が流れていた。
外はぽかぽか暖かく、校舎の奥に咲いている桜が舞う。儂としては、その下にいる女子が気になるが……今は桐花さんとおるからの。
「そういえば、次の授業体育ですね! 私と勝負してください!」
「どうしたの? 私そんなに運動得意じゃ……ないんだけど」
「何を言いますか、貴女は私以上の腕前を持って!」
儂はそんなつもりじゃないのじゃがな、勝負自体は嫌いじゃないのじゃが……。この体じゃ、すぐに悲鳴を上げて動けなくなるのが目に見えてるわい。
正直、入院している時に医者から「安静にしてください、普段動かないのに無理して動かしたため。体のあちこちがボロボロですよ」と釘を刺されてしまったので、無理ができんのじゃ……。
「あの時はしょうが無いの、無理に動かしちゃったから。派手な動きを禁じられてるの」
「うぅ……、しょうが無いですね何時かは勝負してくださいね?」
「その内にね」
項垂れた桐花さんを儂は少し困り顔で、宥めた。走るくらいには丈夫になってくれないとこの先困りそうじゃな。
うん? そういえば、何かを忘れてるような気がするのじゃが……。凄く、生命な危機以上の幸福が待っている様な……。
そんな事を思いながら食事を終えると、昼休みの終了の鐘がなった。
儂と桐花さんは少し急いで教室に戻った。
そうじゃった……、よく考えたら学校で体育と言えば……着替えか!
儂はくわっと目を見開いた。そこには、パラダイスが……くっ! 儂はこの中で自分の体とも葛藤しながら、着替えねばならんのか! ヤバイぞ、鼻血を堪えるだけでも一大事じゃ……儂は生きるぞ!
そんな葛藤を1人頭の中でしていたら、桐花さんが中々着替えないのか覗いてきた。下着姿のまま。
「どうしたの? 花咲さん」
「い、いえ。何でもないです」
ここはパラダイスの事を考えちゃダメじゃ、このままでは授業に間に合わなくなってしまう。
儂は、周りの女子の声を懸命に受け流しながら、着替えに勤しんだ。危ない、これ以上の刺激は毒になりかねん。
儂は、身だしなみを確認して何とか時間に間に合った。長い髪は色々不便じゃが、綺麗じゃからの丁重に扱わんとな。
「遅れてしまって、すみません」
「「「「おおぉぉ~~!」」」」
男子勢が一斉に歓声が上がった、なんじゃ? 凄く気持ち悪い視線が注がれるのじゃが、何かおかしかったかの?
儂は、歓声を上げられた事がよく分からずにいた。しかも女子の視線まで痛い程やってきた。ただ1つわかったとしたら、胸を凝視する者が多い。
「制服越しじゃ分からない程の、大きさ……尋常じゃないですわね」
儂の後ろから、如何にもお嬢様といった感じの、両手を腰に添え偉そうなポーズで儂を睨みつけてくる。主に胸に。
確かに、儂より小さいとは言えるが、そこまで小さくは無いぞ?
桐花さんが耳打ちしてきて、名前を教えてくれる。
「……位堂 恋香さん、金持ちのお嬢様で迎えはリムジンな上に、お弁当も豪華なの。我儘お嬢様と周りは言われてるけど」
「位堂さん、どうしたの?」
儂は、睨まれる覚えも無い……胸以外は。少し怒ったように顔を強張らせて、儂に講義してきた。
「貴女がここに居るだけでも、嫌気が指しますわ!」
「何で?」
あぁ……そういえばと、記憶を引っ張り出してみる。
高飛車で我儘、金髪でロールという絵に書いたお金持ちのお嬢様。位堂 恋香は少し前に、嫌がらせ(全く見に覚えのない)の被害者。儂としては、事が起きる前でも彼女と交流は無く。今の儂、この子は社交界にも出ることは無いため。接点などあるはずも無い。まして、親にもない。
そんな事を話していると、教師の咲葉先生が止に入ってきた。
「そこまで! それじゃ授業を始めるよ」
「でも、先生!」
「あ? 文句あるのか」
位堂さんは、ビクッてなり「何でもありません」と返した。この先生も中々手慣れておる。普通であったら、お金持ちに恐喝とか言われかねないのにの~。
そんな位堂さんを無視して儂に話しかけてくる。目を合ってしまったが、先程までの脅すような目ではなく、優しげな教師という感じの表情だった。
「体がキツイ時は言えよ、私だって鬼じゃない。あまり運動が得意じゃないのだろ?」
「医者から無理は止められてますけど……走ったりくらいは良いらしいです」
咲葉 加音、体育教師で昔は凄い事までやってるんじゃないかと噂になっている。ただ、一部の人には優しく相談も聞いてくれる人だと言われている。凄く、怖いみたいじゃが儂的には不器用なだけじゃないかの。
「よし、並べ今日やることを言う」
そう思った所で、仕切り直した咲葉先生が喋り、授業が始まった。
次は、9月22日予定です