お爺ちゃんの約束
シリアス……だと……!
次こそ、次こそは遊びですよ!
次の日、儂は眠気を感じながらも体を持ち上げた。
脇で澪が「お姉ちゃん……大好き……」と呟いていたので、頭を撫でて上げると……幸せな顔が増して気持ちよさそうな顔に変わった。
ベットは2つあるんじゃが、澪が怖かったのか一緒に寝るって言い出しての。
その時、脳内に誰かの声が聞こえてきた……1人しかいないがの。
――……あの、ありが……とう
「……儂は、出来ることしただけじゃよ」
――それでも……私じゃ……出来なかった
ここにいては澪が起きそうなので、ベットから出てスリッパを履いて扉まで歩きだす。
エントランスにでも行けば大丈夫かの? どうせどこに行ってもしょうがないからの。
お、そういえば髪くらい整えなきゃの。
髪を整え、着替えをしながらも鳴との会話をする。
準備を整え終わり……扉の方へと歩く。
スリッパから靴に履き替え、ペアの鍵を使って廊下に出てエレベーターまで鳴と喋る。
「お前さんは何故……自分の世界に引きこもったりしたのかの?」
――引きこもる……? 違う、私は……死にたかったの……
「死にたい人間だったら、儂とこう喋らん」
そんな会話をしつつエレベーターの矢印を下に押して、少し待つと……扉が開かれ、中に入る。
本当は心の中で誰かに……いや、誰かと一緒に楽しい日々を過ごしたかったんじゃないかの?
1Fのボタンを押しつつ思い出すように考える……昔、儂も多いわけでも無かった、それに鳴は昔の儂と被って見えるのじゃ。
――そ、それは……この体は、私の体で!
「本当は誰かに助けて貰いたかったんじゃないかの?」
――!? ち、違う……
嘘じゃな……と溜息付くと1Fへと到着して、近くにあった適当な椅子へと腰掛ける。
ずっと儂の行動を見ていたのかは分からんが……少なくとも、何かのきっかけで自分自身が動こうと思ったのじゃろう。
素直にもなれず、自分の世界に閉じこもる所……本当に昔の儂にそっくりじゃ、と目を閉じて呟く。
「あら、こんな所で独り言?」
「音羽か……今あの子と喋ってたんじゃよ」
「そう、口調もそのままだし……そんなところだと思ったわ」
声をかけて来たのは音羽だった……目を片目だけ開けて見る、割と6時くらいに起きてるって凄いの、流石に誰もいないかなと思ったんじゃが。
相変わらず、勘が鋭いのか分からんが察してくれるから楽でいいの。
音羽は儂の隣に座って、横から顔を覗き込んでくる。
――あ、あの! 少しその人と……喋っても、いいですか……?
「音羽、少し鳴と喋ってみないかの?」
「あら、ご指名受けるとは思わなかったわ」
目を閉じ、意識を失う様な感覚が訪れる。
そして、切り替わる様に白い空間に儂は座っていた。
というか、こんなに簡単に切り替われるものなんじゃな……新鮮すぎるの。
「おっと、気づいた? 鳴ちゃん」
――は、はい……。
「それじゃ、私に話してみたいことって?」
この感覚に慣れたくはないの……とと、2人の会話を聞かないとの。
テレビを見るように儂は画面を見る……相変わらず目線じゃから、見づらいがの。
――あの人は……その、どんな人なんですか?
「本人に聞けばいいのに……そうね~」
お、それは儂も聞きたいの……音羽が儂の事をどう思ってるのか気になる。
そんな事を思っていると、急にテレビの電源がプツンッと……切れた。
「なんで切れるかの!? 重要なんじゃが!」
そして、少しするとテレビの電源が付いた。
見た感じ……特に変化は無いようじゃが、なんで途中で切れたのかの? 鳴が何かしたわけでも無さそうじゃし。
すると2人の会話が聞こえてくる。
「こんな所ね、私にとっては少なくともそんな存在よ」
――15人も……何故あの人は……
肝心の部分が聞こえてないのじゃが!! うう、聞きたかったの……なんとかもう一度聞けないかの?
それよりも、流石にその内気持ち悪くならないかの? このブレブレだったり、音羽を見たりと。
「貴女は未来があるんだから、お爺ちゃんをこのまま……この世に留まらせるつもり?」
――あの人は……もう死んでるんですよね? なんで私の体に……
「知らないわ、何の因果なんてのは今は関係無いの……貴女は今、何をしたいの?」
音羽が言うと説得力が違うの……儂だったら、優しく言ってしまうわい。
半分くらい女の子とイチャイチャを楽しめたから儂的には、後少しくらいしたらいいかなと思ってるんじゃが……。
それに……夏に入るまでの、途中の……記憶を思い出せないのじゃ。
――今の私には……無理です……。
「そう、私にはどうでもいい事……だけれど、たまには聞いてあげるわ」
目を閉じたのか真っ暗な画面になり、儂の視界が白く染まる……。
その後、意識が戻るように目を開けると……音羽の顔が見えた。
さっきも倒れそうになったのか、ホッしたように胸に手を当てていた。
「先が長そう……」
「儂は背中を押すだけじゃ、後は変われるキッカケがあればの……」
「その点は大丈夫だと思うわよ? 面白い物見たしね」
ウィンクするように、片目を儂に向かって閉じた。
どういう意味かの? 儂にも教えてほしいわい……音羽の考える事が分からなくなってきたの。
聞こうと口を開くと、エレベーターから何人かこちらにやってくる。
「お姉ちゃん……いた~」
「どうしたの? 澪」
「だって、起きたらいなくなってて心配したの」
泣きつくように儂に飛び込んできた、それを受け止め頭を撫でながら少し罪悪感を感じた……後ろにいる人は穂村や雫だった。
心配かけてしまったの、でも流石にあの事は喋りたくないからの。
もし、消える日が来たら……澪は、儂に笑ってくれるかの。
「……鳴、どんなに辛くても死ぬことだけはダメじゃ」
――う、ん……
「それだけは守って欲しいの……約束じゃ」
澪は誰と話してるのか分からない様子だったが、深くは考えてはいないようだった。
音羽は懐かしむ様な表情を浮かべて儂と澪を見ていた。
そして、2人に手を振った。
次は、2月2日?予定です




