表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/53

お爺ちゃんの約束

シリアス……だと……!

次こそ、次こそは遊びですよ!

 次の日、儂は眠気を感じながらも体を持ち上げた。


 脇で澪が「お姉ちゃん……大好き……」と呟いていたので、頭を撫でて上げると……幸せな顔が増して気持ちよさそうな顔に変わった。

 ベットは2つあるんじゃが、澪が怖かったのか一緒に寝るって言い出しての。

 その時、脳内に誰かの声が聞こえてきた……1人しかいないがの。


――……あの、ありが……とう


「……儂は、出来ることしただけじゃよ」


――それでも……私じゃ……出来なかった


 ここにいては澪が起きそうなので、ベットから出てスリッパを履いて扉まで歩きだす。

 エントランスにでも行けば大丈夫かの? どうせどこに行ってもしょうがないからの。

 お、そういえば髪くらい整えなきゃの。


 髪を整え、着替えをしながらも鳴との会話をする。


 準備を整え終わり……扉の方へと歩く。

 スリッパから靴に履き替え、ペアの鍵を使って廊下に出てエレベーターまで鳴と喋る。


「お前さんは何故……自分の世界に引きこもったりしたのかの?」


――引きこもる……? 違う、私は……死にたかったの……


「死にたい人間だったら、儂とこう喋らん」


 そんな会話をしつつエレベーターの矢印を下に押して、少し待つと……扉が開かれ、中に入る。

 本当は心の中で誰かに……いや、誰かと一緒に楽しい日々を過ごしたかったんじゃないかの?

 1Fのボタンを押しつつ思い出すように考える……昔、儂も多いわけでも無かった、それに鳴は昔の儂と被って見えるのじゃ。


――そ、それは……この体は、私の体で!


「本当は誰かに助けて貰いたかったんじゃないかの?」


――!? ち、違う……


 嘘じゃな……と溜息付くと1Fへと到着して、近くにあった適当な椅子へと腰掛ける。

 ずっと儂の行動を見ていたのかは分からんが……少なくとも、何かのきっかけで自分自身が動こうと思ったのじゃろう。

 素直にもなれず、自分の世界に閉じこもる所……本当に昔の儂にそっくりじゃ、と目を閉じて呟く。


「あら、こんな所で独り言?」


「音羽か……今あの子と喋ってたんじゃよ」


「そう、口調もそのままだし……そんなところだと思ったわ」


 声をかけて来たのは音羽だった……目を片目だけ開けて見る、割と6時くらいに起きてるって凄いの、流石に誰もいないかなと思ったんじゃが。

 相変わらず、勘が鋭いのか分からんが察してくれるから楽でいいの。

 音羽は儂の隣に座って、横から顔を覗き込んでくる。


――あ、あの! 少しその人と……喋っても、いいですか……?


「音羽、少し鳴と喋ってみないかの?」


「あら、ご指名受けるとは思わなかったわ」


 目を閉じ、意識を失う様な感覚が訪れる。

 そして、切り替わる様に白い空間に儂は座っていた。

 というか、こんなに簡単に切り替われるものなんじゃな……新鮮すぎるの。


「おっと、気づいた? 鳴ちゃん」


――は、はい……。


「それじゃ、私に話してみたいことって?」


 この感覚に慣れたくはないの……とと、2人の会話を聞かないとの。

 テレビを見るように儂は画面を見る……相変わらず目線じゃから、見づらいがの。


――あの人は……その、どんな人なんですか?


「本人に聞けばいいのに……そうね~」


 お、それは儂も聞きたいの……音羽が儂の事をどう思ってるのか気になる。

 そんな事を思っていると、急にテレビの電源がプツンッと……切れた。


「なんで切れるかの!? 重要なんじゃが!」


 そして、少しするとテレビの電源が付いた。

 見た感じ……特に変化は無いようじゃが、なんで途中で切れたのかの? 鳴が何かしたわけでも無さそうじゃし。

 すると2人の会話が聞こえてくる。


「こんな所ね、私にとっては少なくともそんな存在よ」


――15人も……何故あの人は……


 肝心の部分が聞こえてないのじゃが!! うう、聞きたかったの……なんとかもう一度聞けないかの?

 それよりも、流石にその内気持ち悪くならないかの? このブレブレだったり、音羽を見たりと。


「貴女は未来があるんだから、お爺ちゃんをこのまま……この世に留まらせるつもり?」


――あの人は……もう死んでるんですよね? なんで私の体に……


「知らないわ、何の因果なんてのは今は関係無いの……貴女は今、何をしたいの?」


 音羽が言うと説得力が違うの……儂だったら、優しく言ってしまうわい。

 半分くらい女の子とイチャイチャを楽しめたから儂的には、後少しくらいしたらいいかなと思ってるんじゃが……。

 それに……夏に入るまでの、途中の……記憶を思い出せないのじゃ。


――今の私には……無理です……。


「そう、私にはどうでもいい事……だけれど、たまには聞いてあげるわ」


 目を閉じたのか真っ暗な画面になり、儂の視界が白く染まる……。

 その後、意識が戻るように目を開けると……音羽の顔が見えた。

 さっきも倒れそうになったのか、ホッしたように胸に手を当てていた。


「先が長そう……」


「儂は背中を押すだけじゃ、後は変われるキッカケがあればの……」


「その点は大丈夫だと思うわよ? 面白い物見たしね」


 ウィンクするように、片目を儂に向かって閉じた。

 どういう意味かの? 儂にも教えてほしいわい……音羽の考える事が分からなくなってきたの。

 聞こうと口を開くと、エレベーターから何人かこちらにやってくる。


「お姉ちゃん……いた~」


「どうしたの? 澪」


「だって、起きたらいなくなってて心配したの」


 泣きつくように儂に飛び込んできた、それを受け止め頭を撫でながら少し罪悪感を感じた……後ろにいる人は穂村や雫だった。

 心配かけてしまったの、でも流石にあの事は喋りたくないからの。


 もし、消える日が来たら……澪は、儂に笑ってくれるかの。


「……鳴、どんなに辛くても死ぬことだけはダメじゃ」


――う、ん……


「それだけは守って欲しいの……約束じゃ」


 澪は誰と話してるのか分からない様子だったが、深くは考えてはいないようだった。

 音羽は懐かしむ様な表情を浮かべて儂と澪を見ていた。


 そして、2人に手を振った。

次は、2月2日?予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ