お爺ちゃん、これから?
自分で難しい展開にしていく……
意識を失った後、気づいたら何も無い白い空間に……懐かしい前の体で立っていた。
折角若い女子の体じゃったんだがの……というより、ここはどこじゃ?
周りを見渡したり体を動かしたりして見るが、特に何も起きない。
ここは天国……な訳は無いじゃろうな。
「少しあの後が気になるのじゃが、どこかで見れんかの」
服装も死ぬ前に着てたパジャマだし、色々あれじゃがの。
そんな事を呟くと白い空間にポンッとデジタルテレビとリモコンが現れる。
なんか出おった! まぁ関係性のある物かもしれんし、リモコンで付けてみる。
「ほぉ、鳴が動いている様子が見えるのかの! これはこれで不思議な気分なのじゃが……」
映し出された映像は元の主、鳴がどういう風に動いているのか目を通して見える。
ただ、これあれじゃな……何もすることが無いの。
みんなの水着姿いいの、どうせなら一緒に遊びたか……ゲフンッ! それはいいとしても、声まで聞こえないのかの?
「鳴、遅かったね~よし、準備運動して海に飛び込む!」
「鳴もこっちに来たらどうだ?」
――私はいいや、2人で楽しんできて
穂村と雫が着替えて出てきた鳴に対してそんな会話をしていた、それを鳴は断って琴葉が砂浜に立てていた傘の下へ入る。
鳴の去り際に2人は「うん~? なんか変わった~?」「どうしたんだ」「こう、来るまでと雰囲気が違うような~」と話をしていた。
喋り方もさほど変わりは無いと思うのじゃが、2人は一番付き合いが長いから気づかれるかもしれんの。
「あれ? 鳴様、みんなと遊んでこないんですか?」
――う、うん……そういう気分じゃなくて
「はっ! まさか私に真っ先に見せに!」
水分補給用なのかクーラーボックスを肩に担いできて、何時もの様に本気なのか分からないギャグを言ってくるが……鳴はそれを「ははは……」と枯れた笑いを出していた。
琴葉は「それじゃ、私はあっちに言ってますので何かあったら言ってください!」と言ってボックスを傘の影に置いて海へ走っていく。
今度は音羽が鳴の元へ歩いてくる、後ろではカナとヒナが羽田さんとはしゃいでいるのが見える。
「あら、珍しく大人しいじゃない」
――今は、その……気分じゃないので
「……そう、中途半端に戻ってきてまた引きこもるくらいなら、出てこないほうが貴女のためよ?」
鳴は「……え?」と音羽の方を驚いたように向いたが、その頃には背を向けていて1言「自分を変えないと、前と変わらないわよ……」そう言って去っていった。
音羽にはあれで気づかれたのかの? 相変わらず凄いの、儂には出来ない芸当じゃ。
一応少しだけ過去は喋ったがの、儂には頑張り足りんだけな気がしただけじゃがの。
「鳴さん、何か勝負しますわよ!」
――え? わ、私には無理だよ……
「何時もの鳴さんは、どうしたんですの!? ほ、ら!」
位堂さんが鳴の手を引こうとした時に「無理やりするのは良くない」と原野くんが声をかけていた。
原野くんが「気持ちは分かるが、今は他の奴と遊んでくれ」と丁寧に言うと位堂さんも頷いてみんなのいる方に歩いていった。
鳴の横に座って、特にするわけでも無く原野くんは海を眺める。
お、これは恋の予感かの? 儂だったらお断りじゃが、まぁ元は鳴の元じゃからの応援はするぞ。
こんな場所から言っても全然聞こえないと思うから言わないがの。
「う~む、何をして過ごそうかの」
眺めるだけじゃし、暇じゃの。
鳴の様子を見るだけでもありなのじゃがな、儂……お役目御免なら天国に……。
まぁ今はまだ、見守ってやろうかの。
次は、1月14日予定です




