お爺ちゃん、泣く
いきなりシリアスになって終わる!
昼食を食べるために、ゆっくり雫を覗くみんなで歩いていた。
のんびり歩いていると、みんなはそれぞれ喋っている様なので……千尋と澪で喋る。
誘導する千尋に、澪と一緒に横に並ぶ。
「鳴様、澪様どうしたんですか?」
「2人の時みたいに、素を出してくれると嬉しいんだけど」
「職務ですので、ご遠慮ください」
素を出してくれないのは、寂しいの~。琴葉みたいに、儂に突っ込み入れさせるくらいになって欲しいの。
澪は「千尋さんは、優しいよ」と笑顔で言ってくるので。儂は頭に手を乗せて撫でる。
千尋は「……お嬢様も素を出してくれないくせに」何か呟いていたけど、よく聞こえなかった。
そんな事を話ししている内に、リビングに着いたため。
食事を頂く事にした。何故か、何時もより豪華な気がするのじゃが……大丈夫かの? 予算的な意味での。
千尋に目を向けると「お客様を粗末な食事を、させられませんから」言ってきた。それ儂らが食べてるのは……特に気にしない方がいいの。
「凄い~!」
穂村は、声を上げていた。澪や儂らを覗く、みんなは「美味しそうね」という感じの感想だった。これが金持ちと価値観の違い? なのかの。
みんなと食事を楽しみ……雫がおらんがの。
ゆっくりな時間が進んだ。儂も少し、友達という物がいいの……と思った。
昔は、ずっと1人じゃったからの。生前の話じゃぞ?
友達は、遠い大学に就職していき。両親は共に事故で死んでしまった。
自然と手が止まっていたのか、カナやヒナに「どうしたの?」と聞かれてしまった。とっさに「何でもない」と答えた。
その時、千尋がこっちを見ていた気がした。
勉強会も時間が過ぎて全員が帰った後……。
1人で、本も読まずにベットに座っていると……。ノックの音がした。
入ってきたのは千尋だった……。どうしたのかの? 用事が無いのに来ることは少ないしの。
「鳴様……」
「うん?」
千尋はドアを閉めて……儂に近づいてきた。そうして、言いづらそうにして切り出した。
「いえ……間違っていたら、すみません……鳴では無いのでしょうか?」
そして、言われた言葉は……何時かはバレるかと思っていた。ただ……それ以上に不安だった。
記憶があっても、姿があっても精神は違う。鳴ではなく、儂という精神が……ある。
鳴は何故、儂が入ってくる器になったのか……それとも、やり残した事をやってほしかったのか。
「何時から?」
「……最初からです。小さな、ほんの小さな疑問だったんです」
そう言って千尋は呟いた……「本を読んでいる時の姿、そこから全部が疑問に変わったんです」といい。
諦めた様に、溜息を付くしか無かった。だけど……もし、納得してくれるなら。全てを話して見ようかの。
千尋の目を見て「聞いてくれる?」というと、意思の強い瞳で「はい」と返してきた。
「それじゃ、口調からかの……」
「……」
千尋は黙って聞いている。それを確認して、続ける。最近思っていた……鳴と儂を繋げた、因果を。
「儂は何故ここに、花咲 鳴という存在でいるのか分からん……ただ、記憶では彼女は1人じゃった」
だけど、正確には1人じゃない。澪がいれば、香菜がいる。気づいてはいないけど、見守られている。
1人でいたかったんじゃない、誰かと……友達と一緒にいたかった、それだけだった。
「儂は、鳴でもあるし……違うかもしれん」
「鳴は、本当ならどうなるはずだったんですか?」
「分からん、ただ……あのままバスが横転したままで。犯人が鳴を連れ去られてたかもしれん」
そういう、予想でしか声にだせない。死んでいた所を儂が入ったのかもしれないし、生きていて儂が処理したことが出来なかったかもしれない。
千尋は目を閉じて……頷き、こっちを見て「鳴を助けて貰ってありがとうございます」言いながら頭を下げた。
「儂は、助けたんじゃない……入れ物を貰ってるだけじゃ」
「それでも、ですよ。寂しかった鳴は……今あんなに囲まれて、心から喜んでくれるでしょう。本人はどう思うか分かりませんけどね」
「この話は、2人にも話した方がいいのかの?」
そう思った。バレた以上隠す必要も無くなったしの。千尋も隠すのは辛いと思うし。
すると、千尋は笑って「実はいるんですよ……」と言いながらドアの方に……静かに、静かに歩いて行くと。
扉を開けてみる……すると、帰ってきてたのか母……香菜と澪がなだれ込んできた。まさか聞き耳立てておったのか。
「もう鳴の様子が、おかしいというから聞いてみれば。そういう事なのね!」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ!」
香菜は、半分ヤケなのか開き直ったのか……言ってくる。澪は、ベットに座っている儂に抱きつきながら言う。
千尋も「2人も薄々気づいていたみたいですし……でも鳴が幸せそうならいいって」と言ってきた。
「儂は……この家にいてもいいのかの?」
「あら、鳴は私の子よ? 誰の子でも無いわ!」
「お姉ちゃんは、澪と一緒にいたくないの?」
2人は儂の瞳を見て……香菜は悪びれる訳でも無く、澪は心配そうにそう言ってきた。
鳴じゃない、儂が……ここにいていいのか、何処からか雫が落ちた気がした。昔の儂も鳴も……1人だった。
孫が、儂を言ってきた様に……必要としてくれるのか、と。
目を閉じ、その涙を噛み締めながら。抱きついたまま、何故泣いてるのか首を傾げている澪の頭を撫でる。
「ありがとう……」
そう儂は、その場にいる3人に向けて。涙を流しながらも、笑顔でそう言った。
次は、11月17日予定です。




