第1章 守護する者 1話 招待
初投稿です!頑張ります!!
転移??年目
「「「せんせい!さようなら〜!!」」」
「はい。さようなら」
今日も元気に帰って行く子供達を見送り、遠くなって行く姿に向かって帰り道に気をつけるよう声を掛けてから屋敷の中に戻る。
「お館様。本日も子供達へのご講義、お疲れ様で御座います」
屋敷に入るとすぐ、長年それが当たり前だったのであろう、貫禄のある姿勢で短髪白髪をオールバックにした老紳士の執事が我が主人へとかしづいて居た。
「ああ、講義と言う程大それた内容は教えてないけどな」
「ご謙遜を。我々従者もですが、村の全員がお館様から知識を与えて頂き、こうして何不住なく生活が送れているのも、全てお館様のご講義有ってのことで御座います」
「そう畏るな、ユウ。小さい頃のお前はもっと親しかったぞ」
「お戯れを。幼少の頃は誠にお恥ずかしい限りです」
過去の恥ずかしい話をされたのに、執事のユウは動揺せず応対する。
時間と経験は人を変える。何度も経験するが寂しさを感じる。
(…私自身も変わったのだろうな)
人間‟だった”時は想像出来なかった事を経験し、永い時を経て今此処に居る自分が、果たして過去の自分と同一人物なのか疑問に感じる事が多くなってきた。
(それだけ‟待たされている”…ってことか)
目の前のユウは初めて会った時とは違い随分成長した。
ユウの両親。他に仕えている者たち。皆主人を残して成長し、そして死んで逝く。
(それに比べ、私の見た目は20代の間々。只時間だけが過ぎて行く。・・・寂しく感じるのも無理ないか)
「お館様、如何されましたか?」
自身と他の者達との差に思わず寂しさを感じていると、ユウから気遣う言葉をかけられる。
「すまない、少し考え事をしていた。何か用事があるのか?」
「そうでしたか。はい、私めの先代よりお館様から仰せつかっております‟観測”にて、反応が出ましたので御報告を」
「!!」
思ってもいなかった朗報に感情が昂ぶる。
すると自身の周囲を風が踊るように舞うが、同時に指輪が光り出し昂ぶっていた感情が落ち着いていく。
「・・・そうか。やっとなのだな。して場所は?」
「はい。お館様が“此処“へ降り立った所で御座います」
「“ゲート”の歪みによる時差か、急拵えの儀式による不備なのか既に知る手立てが無いが、無事“此処”に着いてくれたか」
瞳を閉じ、“此処”に来た場所、その時の感情を思い出す。
開いた視界からは突如木々が生い茂り、手を見れば小さくなっていた。あの時の不安が蘇ってくる。
実際に瞳を開けば、勿論目の前にはユウが居て周囲には今では見慣れた屋敷の玄関ホール。
今の自分の手を見てから優を見る。
「それじゃあ、迎えに行くか!」
「お供致します」
不安と一緒にあの時の自分へ精神が戻る。
ユウは突然幼くなったと思ったに違いない。
だが、幼くなったのでは無く、人間“だった”時の学生に戻った気がした。
◇◇◇
ー原点の森ー
ユウと村を出て島の中心へ1時間。目的の‟原点の森”へ向かっていた。
‟原点の森”は俺が‟此処”へ来た時の森。あの人と出会い、そして希望と絶望を託された森。
「お館様。今までご拝見致したことのないお顔をされていますな」
「ん?そうか?」
「はい。普段でしたら子供達へ向ける・・・そうですな、我らや村全員に等しく穏やかな表情を
しておりました。今は無邪気な笑顔でございますが」
「そりゃあそうだろ。ユウも含め、全員が俺の子供同然なんだから」
揶揄ではなく実際に歳が離れているのだから、必然的に全員を子を見守る親の表情になる。
これから迎えに行く人は旧知の中でも最も古い友人に会う。昔の自分になるのも仕方がない。
「一気に若返られてしまいますと、私がより老けてしまったと実感してしまいます」
「(俺が屋敷で思った気持ちを味わってるのか)俺の気持ちがわかったか?」
ニヤニヤしながら感慨深い表情をしているユウに問う。
「確かに。私の孫にも子が出来たらより実感するのでしょう」
「ぶっ!」
思ってもいなかった感想が出てきて吹いてしまった。
「いやいや。アヤはまだ15歳だろ。嫁にも行っていないんだから」
「おや。てっきりお館様が娶って頂けるものとばかり思っておりましたが違うのですか?」
今度は転けそうになった。態勢を直してユウを睨みつける。
「おい。アヤは綺麗に育っているがまだ子供だぞ」
「アヤはそのつもりでおります。それとお館様から見れば全世界の住人、一部の方々を除いて
皆子供になってしまいます」
「だからって何も俺じゃ無くてもいいだろ。てか、昔言ってきたことをまだ言ってるのか」
「何処の誰かもわからぬ者に託すより、お館様でしたら安心いたします。アヤは日々、
お館様のお役にたつ為努力をしております。その気持ちを無下に致すのでございますか?」
「・・・」
そこまで言われては嫌とは言いずらくなってしまい、かと言って「じゃあ結婚するか」とも
言えない。年齢的に見てもまだ早いのもあるが別の理由もあるにはある。
「・・・条件を出そう。アヤは生まれて此の方島を一度も出たことが無い。世界に出て
色々な文化、人種、土地を肌で感じ見分を広めた方がいいと思う」
「成程。世界を旅して自己を見直し、それでもお館様への気持ちが変わらなければ結婚して
頂けると申されるのですね」
「何だか押し売りをされている気分になってきた」
「滅相も御座いません。それではその旅には‟どの方”が同伴して頂けるのですか?」
含みのある目で此方を見てくる。どう見てもついて行ってくれるんだろうと考えている。
「わかったよ。ただ俺だけじゃない。‟此処”に来る皆も連れていく」
「そうですか。では直ぐにでも皆様をお迎えしなくてはなりませんな」
内心、どうしてこうなったんだと思いながら、足を速め問題を先送りしようと結論付けた。
暫くして目的の‟原点の森”の中心地に着いた。そこには儀式陣が描かれた一枚岩が横たわり、
淡く光っている陣の周りには草木が生い茂っている。
「‟風よ”‟火よ”」
ユウが短く唱えると風で岩の周りにある草木を切り、舞ったそれを火が焼く。
それを見届けてから陣の近づき、元から描かれていた陣の周りに新しい陣を描く。
「お館様、これが例の陣でございますか?」
「そうだ」
描き終えてから数歩下がると、淡い光を放っていた陣と同じく描いた陣も光り出す。
次第に光が強くなるのと同時に魔力の質が上がって行くのを視界と肌で感じる。
「「!!」」
上限に達したのかこちらの方まで強い魔力が吹き荒れる。
そして陣から視界を奪うほどの光が発せられ地響きの様な衝撃が足元を襲う。
思わず目を背け両腕で顔を庇う。
ユウは主を庇う為か、目を閉じようとした瞬間には目の前に立って居た。
「うおっ!!」
「きゃっ!!」
「痛っ!!」
光と衝撃が収まり始めた頃、3人の悲鳴が陣の方から聞こえた。
目を開けるとそこには痛めたお尻を擦っている男と、強く目を瞑って女の子座りをしている女2人が居た。
「如何やら目立ったケガも無く、皆さんご無事でございますな」
「・・・そのようだ」
ユウが目の前を退きながら3人に外傷が無いのを確認し報告する。
それに答えてから3人が居る陣へ歩き出す。
3人も此方に気が付いたのであろう、周囲に向けていた視線を此方に向けた。
「え?」
「誰?」
「ん?お前・・・」
3人の傍に立ち久しい顔を見て懐かしく感じ、何年振りかの涙が溢れてきそうになるのを堪える。
そして第一声は「久し振り」と伝えるかふと思うが、やはりここはこの言葉を贈ろうと思い直した。
「ようこそ!ドラゴンが守護する世界、‟リアノス”へ!」
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