私に平穏な休暇を与えてください
初投稿ですがどうぞよろしくお願いします。
「・・・か、かかっ会社!」
社畜 石田賢司は反射的に布団から身を起こした。そしていつものように、布団の横のデジタル時計を見た。
日付と曜日、気温が表示されるそこそこ良い時計を見た。
8:03 3 月 x 日 日 曜日 温度 11.4 ℃
曜日の部分を確認して体の力が抜けた。そのまま布団に寝っ転がる。
今日は日曜日、休みである。
「まったく、休みの日でも出勤日と同じ時間に起きるとは。俺も立派な社畜になったもんだ。」
石田賢司は28歳独身の会社員である。工業高校を卒業し、地元の小さな建設会社に就職してから激減した数少ない休暇を誰よりも愛し、楽しみにしている人間だ。無類のアニメオタクで、中学時代に友人から「何も言わずに見てほしい。」と、あるアニメを勧められて以来、休日は家で録画したアニメをただひたすら見ている。ただ彼の場合鑑賞したり少しグッズや原作をあさるぐらいで、ネットに評価を書き込んだり頻繁にイベントに参加するようなことはほとんどない。
賢司は再び体をゆっくりと起こし、布団をたたみ、台所でインスタントコーヒーを淹れて、ずずっとコーヒーを飲んだ。しばらくボーっとして今日の予定を考える。
「久しぶりに本屋巡りでもするかぁ。今見てるアニメの原作も気になるし。」
いつものジャージに着替え、いつもの肩掛けカバンにスマホと財布を入れて、部屋に置いてある折り畳み自転車をおしてアパートのドアを開け・・・・・・・・開かない。というよりドアが重い。もともと築55年のボロアパートである、ドアがいがんでいるのかもしれない、と全体重をドアにかけてなんとかドアを開けてドアの裏を見ると・・・
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!ドラゴン!ドラゴンだ!」
なんと中型犬ぐらいのドラゴン(?)がスヤスヤと眠っているのだ。アニメとラノベ好きの賢司にとって、このシチュエーションに興奮せずにはいられない。
「(どどどどうしよう、ドラゴン語とかわからんぞ。いや多分言葉は通じる。おそらくこのあと『お前は選ばれたのだ。』とか言われて異世界に飛ばされたりなんかして俺の物語が始まるんだな、うん。)」
やがてそのドラゴンは目を覚ますと、小さい体ながらも威厳のある鋭い眼差しで賢司に向かってこう言い放った・・・
「オカン、飯まだ?」
「いやなめんな。」