もらえる物はもらいます
ワシはメイソン。
ドワーフ族でA級の冒険者じゃが、鍛冶屋もやっとる。
冒険者の依頼が入ったら息子と弟子に任せとるが、最近の若いもんは既製品の真似事しかせん!
新しいもんを作る事もせん!
ヤル気がないんじゃ!
言ってやりたいが強制されて作っても、いいもんはできんからな。
じゃから、一流の冒険者はワシがおらんと店に寄り付きもせんが、ワシは気に入った奴にしか作らんからのぉ。
最近は、違う意味でも相手を選ぶようになったわい。
理由は材料じゃ。
フィアフルとフェリーチェが、たまに‘いつもお世話になってます。これ、どうぞ’と持ってくる材料。
ある日は、
「メイソンさん、コレどうぞ」
「ん?コレは……見間違いかのぉ……ドラゴンの鱗に見えるんじゃが」
「わぁ~見ただけで分かるんですか?」
「それ、僕の鱗だよ!」
「一杯あるんです。もったいないから、どうぞ!」
分かっとるのか?黒龍の鱗じゃぞ?そんなホイホイ渡すもんじゃないわい。
まぁ、くれると言うなら断る理由はないがの。
またある日は、
「メイソン、コレもらったんだけど、要らないからあげる」
「……見間違いかのぉ……アースドラゴンに見えるんじゃが」
「やだな~メイソン、アースドラゴンだよ!押し潰したから傷は少ないからね」
価値からいえば、黒龍の鱗の方が高いのじゃが、そもそもドラゴンの材料は全て貴重なんじゃ。
何度も言うがホイホイ渡すもんじゃないわい。
もらうがな。
そういう事が何度もあって、ワシのアイテムリングには貴重な材料が、かなり入っとる。
じゃが、息子や弟子には絶対に触らせん!
あやつらに触られたら、材料が泣くわい!
触らせろとしつこい息子たちに、そう言ってやったんじゃ。
それでも食い下がるから、オリジナルの武器なり防具なり魔道具なり、完成させたら触らせると約束したんじゃ。
しかしな、今だに合格したもんはおらん。
何故なら、フェリーチェとフィアフルが来る度に、息子と弟子の心を折るからじゃ。
「ダサいね」
「それ必要ですか?」
「何を作りたかったのさ?」
「買う気にならないかな」
「材料の無駄だよね」
とも言っとったな。
終いには、
「こうした方がいいよ」
と言って、あやつらより凄いのを作ってしまうんじゃ。
何度も何度も心とプライドを折られとるが、諦める気配は今のとこはないのぉ。
見た事がないくらい、ヤル気に満ちとるわい。
さて、息子と弟子が合格するのはいつになる事やら、気長に待つかのぉ。
しかしまぁ……フェリーチェにフィアフルよ、何でもかんでもワシに押し付――持ってくるのは、どうかと思うんじゃが。
今度は何を持ってくるやら。
もちろん、もらうがな。
 




