顛末
74話目です。
いろいろあった誕生祭も終わり、国民は日常に戻りレグルスたちも国に戻って行った。
帰る際にフェリーチェが‘いつかトラスト王国に遊び行く’という約束をさせられたが、とうぶん無理だろう。
アダムたち4人も学園の寮に戻り、ミゲルとネイサンは休みの日は帰る約束をしていった。
そして、エヴァンはクロードとルイスと青年姿のアルベルトと共に王宮の牢に来ていた。
「気分はどうだ?お前たちは聴取に協力しないそうだな」
「陛下!我々は無実です。どうかお助けください!」
「まだそんな事を言っているのか」
「あれは偽造です!私も娘たちも嵌められたんです!娘たちを見てください!あんなに綺麗だったのに見る影もない……こんな仕打ちをして、慈悲はないのですか!」
「慈悲か……ならば協力しろ。このままなら尋問することになるぞ」
「ですから!協力するもなにも身に覚えがないのです!」
往生際悪く認めようとしない父バッカとグッタリしているクリスティーナとエリザベートを見ていると、アルベルトがエヴァンの肩を軽く叩いた。
「もういいじゃないエヴァン。協力しないなら協力したくなるように、してあげればいいんだよ」
「協力したくなる?何をするつもりですか?」
「悪いようにはしないよ。僕に任せてよルイス」
「エヴァン、ルイス、アルに任せよう。通常の仕事もある。何より、これ以上こいつらに時間を割きたくない」
「それには同意しますが……いいでしょう。任せます」
「おい、ちょっと待て!決めるのは私だ!」
「え?じゃあ、さっさと決めなさい」
「じゃあって……ゴホンッ!……アルベルト、お前に任せる!」
「はいはい」
カッコつけるエヴァンに適当に返事をすると、バッカに近付いた。
「なっ、何だ貴様は!」
「名乗る程の者ではない!……………って、1回言って見たかったんだよね~。僕はアルベルト、宜しくしてくれなくていいからね」
「何を言って……」
アルベルトはバッカを無視して2人の娘を見ながら言った。
「それより、いつまで芝居を続ける気だい。君たちが元気なのはステータス見れば分かるんだよ」
アルベルトの言葉に観念したのか、2人は起き上がり睨み付けた。
「……勝手にステータスを見るなど、礼儀がなっていませんわね」
「きっと礼儀を知らない下賤の者なんですわお姉様」
「ふ~ん……礼儀ねぇ……君たちの礼儀ってさ、奥さんを殺して手に入れたいほど好きな男がいるのに、複数人の男と関係を持つことなのかな?毎晩、違う男で種族もさまざまだし、使用人とか奴隷ともヤってるね。あっ、冒険者?酒場まで漁りに行ってるの?うわぁ何回か妊娠もしてるし、堕胎してる。君たちさぁ、オースティンやギャレットと結婚して……誰の子どもを産むつもりだったの?」
クスクス笑いながら言われた内容に2人は青ざめ震えている。
「なっ……何を言って……でたらめですわ!」
「そうよ……そんな事するわけないですわ!」
「でたらめかどうかは、君たちが一番分かってると思うけど。まぁいいや、君たちの選択肢は2つある。1つ、今すぐ罪を認めて、君たちに協力した者の名前や居場所を教えて処刑される。2つ、僕の考えた拷問を受けて死ぬ。どっちがいい?」
「何よそれ!?結局、死ぬんじゃない!」
「待ちなさいエリザベート。拷問の内容はなんなの?」
「お姉様!」
「クリスティーナ、何を言ってる!?」
示された選択肢にエリザベートが声をあげるが、クリスティーナは拷問の内容を聞いてきた。
「フフッ……君たち今までいろんな種族と関係を持ってるけど、さすがにゴブリンやオークは無いよね?」
「え?……まさかっ……嫌よ……そんなの嫌よ!」
「嫌がってもらえて嬉しいよ」
「貴様!娘に何て事を……それでも人間か!」
「使用人の12歳の娘を孕ませて、家族もろとも殺した男に言われてもね」
「落ち着いてお父様、エリザベートも。そんな事できるはずないわ!」
「できるんだな~それが。この前、トラスト王国との境界の森にゴブリンとオークの群れがいたから巣も確認してたんだよね。取り合えず……1回、行ってみようよ」
「「「え?」」」
アルベルトは3人を連れてゴブリンの巣の上空に転移した。
「はい、到着!ここはゴブリンの巣だよ」
「ヒィ~!高い、助けてくれ!」
「そんな……嘘でしょ?……お姉様」
「バカな……あり得ない」
本当にゴブリンの巣を見せられ唖然としていると、洞窟から何かを抱えたゴブリンが出てきた。
そして、数体がその何かに喰らいついた。
「お姉様……あれって」
「まさか……人間……なの?」
「使い終わった苗床の処理をしてるみたいだね。次、行くよ~」
次に転移したのはオークの巣だった。
そこで見たのは、今まさに陵辱されている複数の男女だった。
「嫌だ!あんなのっ……喋るからこんな酷いことしないで!」
「私も喋る!全部話すから!」
アルベルトは泣き叫びながら言う2人と、気絶したバッカを見てニッコリ笑いながら転移した。
「ただいま~、話すってさ」
「ご苦労様でした。本当に連れて行ったんですか?」
ルイスが3人を見ながら聞いてきたので頷いた。
「まぁね。ゴブリンの方は苗床にされてた人がいたけど死んでた。他に気配は無かったよ。オークは15人位の男女が襲われてたけど、盗賊だったからそのままにしてきた」
「そうですか……アルベルト」
「うん、両方とも潰してくるね」
「すまないなアル、気をつけるんだぞ」
「分かってるよ。早く終わらせて帰らないとね」
そう言ってアルベルトは転移した。
「だから……指示を出すのは私なんだ……その筈だ」
「ブツブツ言ってないで、聴取しますよ陛下」
「早くしなさい陛下」
「………はい……グスッ……」
それから、スムーズに聴取は進んだ。
ゴブリンとオークの巣を潰しに行ったアルベルトは、念のため被害者がいないか探ってから行動を開始した。
『隠密』を使い、被害者の遺留品や盗賊の特定に必要そうな物をアイテムリングに入れていき、オーガやオークキングやオークメイジを殺して死体をアイテムリングに入れると、魔法の一撃で巣を潰して転移した。
「終わったよ」
「「…………エヴァン」」
「え?……いいのか!私が言っていいんだな!」
「「どうぞどうぞ」」
「よし!ご苦労だったなアルベルト!ありがとう!」
「どういたしまして」
「お疲れ様ですアルベルト」
「これ、いろいろ持ってきたから後で確認してもらえる?」
「えぇ、分かりました」
「怪我は無いな?」
「大丈夫だよお父様」
「アルのお陰で早く解決できたよ。今日は早く帰れそうだ」
「一緒に帰る?」
「そうしなさいクロード。アルベルト、持ってきたものは隣の部屋に出してください」
ルイスに言われた通り部屋に出すと、オーガたちの死骸に驚いていた。
「これは私のアイテムリングに入れておきます。臭くなりますからね。さあ2人は帰ってください」
「すまんなルイス。先に失礼する」
「じゃあねルイス!」
クロードとアルベルトは転移で帰宅した。
「さてと……弄り過ぎましたかね」
苦笑したルイスの目線の先には、膝を抱えメソメソしているエヴァンがいた。
「……俺には?……結局ルイスなんだ……グスッ……」
後日、クリスティーナたちに協力した者や、その協力した内容を精査し罪に合わせた処罰が下され、バッカとクリスティーナとエリザベート、そして魔族ゼロは2ヶ月後、予定通り処刑された。
そして数ヶ月後、新しい光が誕生した。
第2章終わりになります。
第3章は冒険者編を予定してますが、間に小話を何件か書きたいと思ってます。




