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目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~   作者: そらのあお
出会い
64/83

誕生祭~パーティー~

63話目です。

ミゲルとネイサンと対面してから1週間がたち、誕生祭が始まった。

誕生祭は5日間あり、1日目は王宮でパーティーがあり貴族や有力者が集まり国王を祝う。

2日目が王家のパレードがあり、国民が国王を祝い、3日目に国外から国王を祝うために来た者たちとの謁見があり、4日目に夜会を開き、5日目に国王のスピーチで終わりだ。

その間、街では国内外の露店が並び賑わっている。

今日は1日目のパーティーで、私たちは正装して王宮に向かっていた。

オースティンとアンジェラは先に王宮に行っている。

馬車の中では、ミゲルとネイサンからこんこんとパーティーでしてはいけないことを、言い聞かされていた。

2人曰く、


1つ 、王家の子息子女に2人だけで近付くな

2つ、王妃の態度を見ても笑うな

3つ、知らない者についていくな

4つ、自分たちが許可した者としか話すな

5つ、1つ目と2つ目は厳守する事


と言われた。

普通は3つ目と4つ目が重要だと思うのだが、クロードが何度も頷くので、余程の事だ。


{なんかあそこまで言われると、逆に興味が出るよね。エヴァンの子どもって}


{確かに……でも破ったら後が怖いよ}


{そこはほら、ようは僕たちから近付かなければいいんだよ}


{成る程、それならいいね}


念話をしながらニコニコしていると、何故かクロードとミゲルとネイサンが諦めたように頭を振り、サマンサはクスクスと笑っていた。

王宮に到着して案内されて会場に入ると、賑やかだった空気が一瞬で霧散し静寂が広がった。

それを気にする事なく、クロードが進むので私たちは後について行くが、私とアルに視線が集中していた。

クロードが立ち止まると、 近付くものが1人いた。


「こんにちは、クロード様」


「ロバート、もう来ていたのか」


声をかけたのはロバートだった。


「少し前に、サマンサ様は今日は一段と美しいですね」


「ありがとうロバート」


「ミゲル様とネイサン様はお久しぶりですね。立派になられて」


「お久しぶりです。私も16になりましたから」


「高等部の1年生で生徒会入りはすごいですよ。ネイサン様も中等部1年生で生徒会でしたよね」


「はい、今は雑用ばかりですけどね。主に子守りですけど」


「懐かしいですね……アルベルト様もフェリーチェ様もお元気そうで」


2人の言葉にロバートは一瞬、遠い目をしたが直ぐに私とアルに話しかけた。

昔のことを思い出したのだろうか。


「こんにちはロバートさん」


「こんにちは」


「こんにちは、お二人ともよくお似合いですよ」


「ありがとうございます」


「ありがとうロバート」


誉められ照れていると、ルイスとメイソンとブレイクも近付いてきた。

挨拶を交わし、それぞれ談笑しながら主役の登場を待つ。

話の中にさりげなくギャレットとレベッカの話をまぜながら、聞き耳を立てている者たちに聞こえるようにする。

その間、私たちに興味を示していた者は誰も近付けなかった。

暫くして、大きな扉が開き王族が登場した。

国王のエヴァンを先頭に王妃のアンドリア、その後ろに少年が2人と少女が1人入ってきた。

更に後ろから、種族代表の3人とオースティンとアンジェラが続く。

王族が段上にあがると、エヴァンが口を開いた。


「皆よく来てくれた。今日から誕生祭が始まり皆も忙しいだろうが、楽しんでくれると嬉しく思う。

ではパーティーを始めよう」


エヴァンの言葉を合図にパーティーが始まり、私たちは早速エヴァンたちの元に向かった。


「陛下、この度はおめでとうございます」


頭を下げるクロードに続き皆で頭を下げる。


「あぁ、ありがとうクロード。ミゲルとネイサンも久しぶりだな。いつも息子たちが世話になってる」


「陛下、お久しぶりです。殿下と過ごす日々は大変刺激的で勉強になります」


「私も兄上と共に、殿下たちを支える事が出来るように精進します」


エヴァンの横で少年が1人、得意気に頷くのをもう1人の少年が呆れたように見ていた。


「サマンサも元気そうだな」


「はい、陛下おめでとうございます。ときに、王太子とゆっくり話したい事があるので、後でお時間頂けますか?」


サマンサが満面の笑顔でそう言うと、エヴァンと少年がビクッとなった。


「あ、あぁ構わんぞ」


「ありがとうございます」


動揺しているエヴァンを見ながら、クロードが私たちを紹介した。


「陛下、実は養子を取りましたので紹介させて頂きたいのですが」


「養子?その子たちか?」


「はい、男児がアルベルトと女児がフェリーチェで2人とも4歳になります」


「初めまして陛下。僕はアルベルト・ファウストです」


「初めまして陛下。私はフェリーチェ・ファウストです」


「4歳の割りに随分しっかりしているな。お前が養子にするだけはある。私は国王のエヴァンだ。横にいるのが、王妃のアンドリアで王太子のアダム16歳と第2王子のディラン13歳、第1王女のグレース10歳だ」


「初めまして、王妃のアンドリアです。よろしくお願いしますね」


「「ブッ!……よろしくお願いします」」


((こういうことか!ヤバイ……笑うな笑うな))


「私は王太子のアダムだ。よろしく頼む。私のことは兄たちから聞いているだろう?」


「「……はい、よろしくお願いします」」


((聞いてるのは、問題児って事だけど))


「私は第2王子のディランです。よろしくね。君たちの兄上たちには、いつもお世話になってるよ。申し訳ないくらい」


「「よろしくお願いします」」


((最後のセリフ、王太子を見ながら言ったよ。第2王子も苦労してるんだろうな))


「第1王女のグレースです。よろしくお願いします」


「「よろしくお願いします」」


((おとなしい子だな~))


「では、我々は失礼いたします」


挨拶が終わり、次の人たちが控えていたのでその場を離れた。


「2人とも、いつまでプルプルしてるんだ。だから笑うなと言ったのに完全に吹き出しただろう」


「「だ、だって……ミゲルお兄様……王妃様のギャップが……ププッ」」


「アンドリア様は、あれでも真面目にやってるんだから笑ってはいけないよ。さぁ、お腹がすいただろう?食事をしよう」


「「は~い、ネイサンお兄様」」


「いや……だから、お前も大概失礼だからな」


私たち4人は料理がある場所に歩きだし、そんな私たちを見ながらクロードとサマンサが穏やかに笑っていた。


「すっかりお兄ちゃんね。良かったわ」


「歳も離れているからな。ネイサンは自分より下が出来て嬉しいのだろう。ミゲルも子どもは好きだからな。さて、私たちは挨拶回りだ。私はエヴァンの元に行くから、君は終わったらミゲルたちと合流してくれ」


「えぇ、分かったわ」


料理の場所に行くと、たくさんの料理があり私たちの分はミゲルとネイサンが取ってくれたので、お礼を言って食べ始めた。

暫く、食べたり飲んだりしていると王子たちが話しかけてきた。


「4人とも楽しんでるか?」


「殿下……もう飽きたのか?」


「失礼な奴だな!あらかた終わったから来たんだよ!俺を何だと思ってんだ」


「兄上の日頃の行いのせいでは?あと、素になってますよ」


「な!?兄に向かって」


「それにしてもネイサン、兄弟が増えたなら教えてくれれば良かったのに」


「無視された!?」


「私たちも帰ってから知ったんですよ。いつも帰らないからビックリさせたかったそうです」


「全く、早く知っていればお土産とかも買えたんですけどね」


「重ね重ね、うちのアホ……兄が申し訳ない」


「おいこら、今アホって言ったか!?」


「気にしないでください。慣れましたから」


「また無視した!?」


(エヴァンさんと扱いが同じだ)


(遺伝だね)


目の前で来り広げられるやり取りに、デジャブを感じながら、少し離れた場所で先程から黙ったままのグレースを見ると、うつむきながらじっとしていたので声をかけた。


「王女様、どうかされましたか?」


「え?…いえ……こういう場所に慣れなくて」


「何で?王族ならパーティーなんていくらでも出てるでしょう?」


「私は……お兄様たちと違って何の取り柄もないんです。魔法も苦手で……剣も持てませんし」


「……そう誰かに言われたんですね」


私の言葉にグレースは、ますますうつむいてしまった。

確かに周りを者たちの、アダムたちを見る目とグレースを見る目は違うように感じた。


(こういうのは気にするなと言っても無理だろうし)


「王女様は魔法や剣は嫌いですか?」


「いえ、剣は苦手ですが魔法は好きです。でも、授業でいつも失敗してしまって」


「では、考え方を変えてみてはどうでしょうか」


「考え方ですか?」


「それはいいかもね。王女様は魔法を使うとき、‘失敗したらどうしよう。怒られる?ガッカリされる?また何か言われる?’とか考えてるんじゃないかい?」


「どうして分かるんですか?」


「なんとなくだよ」


「その考え方をですね……例えば、火の魔法を使ったとして‘小さい火しか出せなかった’じゃなくて‘小さい火が出せた。次はもう少しやってみよう’とか」


「水の魔法なら‘少しの水しか出せなかった’じゃなくて、‘少しの水が出せた。次はもう少し出してみよう’とかね」


「ポジティブ……前向きに考えるんですよ」


「前向きに……」


「最初は難しいと思いますけど、少しづつ変えてみてはどうでしょうか?それに、王女様が王子様たちと違うのは当たり前です」


「っつ……やっぱり私は」


「そうじゃなくて王子様には王子様の、王女様には王女様の良いところも悪いところもそれぞれあります。違う人間なんだから当たり前ですよ」


「そうでしょうか?」


「そうそう、王女様は自分を卑下するよりも自分を好きなる事が必要なんじゃない?」


「そうですよ」


「自分を好きに……はい、ありがとうございます」


その時、見た笑顔は少しぎこちないが、明るいものだった。

そんなやり取りを見ていたアダムたちは、気付いていなかった。

自分たちの後ろに忍び寄る者に。

読んでくれてありがとうございます。

次回、「誕生祭~閑話~」です。

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