行動開始
48話目です。
オースティンとアンジェラが引っ越してきて、数日がたち私は今、アルと一緒に街を歩いていた。
目的は、怪我人や病人を探すためで姿も変えている。
アルは青年の姿に戻り、眼鏡をかけてローブを纏っている。
私は今回、前世の姿――小夜の姿に変化して、ローブを纏った。
この姿なら私とフェリーチェを結び付ける事はないだろう。
「その姿が、『小夜』なんだね。名前もそうするの?」
「うん。違う名前だと反応出来ないかもしれないから。アルは?」
「僕はそのままでいいよ。アルって結構いそうだし」
「分かった。今日は早目に戻った方がいいかな?お母様たち心配そうだったし」
「そうだね。フェリならともかく僕にまでああするとは思わなかったよ」
今回、護衛もつけず外出する事になり一悶着あった。
なんせただの外出じゃなく、トラブルが起こる前提のものだったからだ。
決まってからも心配そうにしていたが、出かける時にその気持ちが強くなったようで、涙目で抱き付いて離れなかった。
クロードと3人がかりで慰めて何とか出発できたのだ。
「お母様にとって、アルが黒龍っていうのは関係ないんだよ」
「そうなのかな?」
アルはその事に戸惑っているようだったが、こればかりは慣れるしか無いと思い、私は特に何も言わなかった。
「それにしても、怪我人とかどうやって探すの?」
「普通は治療所に行くらしいけど、料金が高いからお金を持ってない人は治療を受けられなくて、死んじゃう人もいるってオースティンさんが言ってたよね」
「治療所は教会の管轄だから、国は手が出せないってエヴァンが悔しがってた。国営の治療所を作ろうとしたら教会から‘神への冒涜行為であり、そのまま強行すれば国に災いが起こる’とか言ってきて、中断したらしいよ」
「何それ!」
「神なんて建前で、自分達が儲ける事しか考えてないのさ」
「そんなのおかしいよ……死んじゃう人がいるのに、助けられたかもしれないのに」
「そうだね……ならフェリが今回、少しでも助ければいいさ」
「うん……頑張る!」
取り合えず、治療所を見に行く事になった。
ついてみると、清潔感のある3階建ての建物があった。
ちょうど向かい側にカフェがあったので、テラス席に座り暫く見ている事にした。
「さっきから出入してるのって、馬車で来る人が多いいね」
「しかも、特に悪そうに見えないけど。どれどれ……え~と、二日酔いに胃もたれ?それから、虫刺されに指先の切り傷……うわぁ~あの程度に魔力使いすぎよ……え!?今ので金貨1枚ってバカじゃないの?」
アルが治療所を見ながらブツブツ言い出した。
「ねぇアル、さっきから何言ってるの?」
「え?中が気になったから透視してみたんだ」
「透視!?」
「フェリもできるよ。やってごらん」
アルにコツを教えてもらい、透視してみると患者の症状や治療の仕方、金額を見て無言になってしまった。
「フェリ……気持ちは分かるけど、叫んじゃダメだからね」
「分かってます」
私が気持ちを落ち着けようとしていると、治療所の方が騒がしくなった。
そちらを見ると、20代の男が治療所のドアを叩いていて、後ろに30代の男女と男に背負われぐったりしている10代の少年がいた。
「頼む助けてくれ!仲間か魔物にやられて意識がないんだ!」
「いったいなんの騒ぎだ」
治療所から出てきたのは40代の禿げた男で、訪問者を見るなり顔をしかめた。
「頼む!仲間を助けてくれ!」
「そっちの子どもか?そうだな……なら金貨10枚で助けてやる」
「金貨10枚!?無理だ!そんな大金……」
「なら治療はできん帰れ」
男の言葉に、怪我人を背負っている男と隣の女が口を出した。
「待ってくれ!今すぐは無理だが金は必ず払うから息子を助けてくれ!」
「あたしらA級パーティー『紅い絆』だ。すぐ稼いで来るから頼むよ!」
「バカを言うな。依頼中に死んだら誰が払うんだ。今すぐ払えないなら帰れ……まあその傷では助からんだろうがな」
そう言い捨てて、男は治療所に入って行った。
項垂れる冒険者たちを周りは気の毒そうに見ながらも、声をかける者はいなかった。
「クソッ!何も出来ないのかよ!」
「……せめて家に戻ろう。息子をこんな場所で死なせなくない」
「あんた……うっ、ごめんよ。母さん何も出来なくて……ごめんよ」
冒険者たちが立ち上がり、家に向かって歩き出した。
暫くして、1階建ての家に入り息子をベットに寝かせると扉をノックする音がした。
両親の変わりに20代の男が出ると、2人のローブを纏った者が立っていた。
「悪いが今、立て込んでんだ。何か用か?」
「私たちは旅をしている者です。実は先程、治療所でお見掛けしたので、気になり追ってきました」
「何?……テメェら何が目的だ!」
私の言葉を聞き、男は警戒しながら睨み付けてきた。
騒ぎに気付いたのか父親が出てきた。
「何を騒いでるジョン」
「エリック!こいつら俺たちを着けてたんだ!」
「……用件は?急ぎじゃないなら後にしてくれ。今は……」
「今は、‘息子の死に際’だからかい?」
「テメェ!」
アルの言葉にジョンは憤り、エリックから殺気が漏れだした。
「アル、言い方!すいません、良かったら息子さんを見せてもらえませんか?私、治癒魔法が使えるので」
「本当か!エリック見てもらおう!」
「待て……何が目的だ?あの場にいたなら大金は払えないと知っているだろう」
エリックの指摘に、喜んでたジョンが再びこちらを睨んできた。
「お金はいりません。ただ私たちの頼みを聞いて欲しいだけです」
「頼み?いったい……」
「それより早く会わせなよ。本当に手遅れになるよ」
「……分かった」
「エリック!?……テメェらおかしな真似したら切るからな」
「君が?……まあ好きにしなよ」
「なっ!」
「アル!本当にすいません」
「いや、着いてきてくれ」
寝室に案内され中に入ると、女が警戒しながらこちらを見ていた。
「ケイティ、治癒師だ。ダンテを見てくれる」
「治癒師?……信用できるの?」
「分からん。だが何もしなければ、どちらにしろ死ぬ」
「……分かったわ」
ケイティが場所を移り、私はダンテの側に行き「心眼」で見た。
(裂傷が酷い……内蔵まで傷があるし、骨も何ヵ所か折れてるな……毒もか……でもこれなら)
私はダンテに手をかざし魔力を集中し魔法を発動した。
「『回復』」
ダンテの体が淡く光だし、暫くして光が収まるとダンテの怪我は治り静に寝息をたてていた。
「終わりました。傷は全て治りましたよ」
振り向くと、3人が唖然としていた。
「本当に……治ったのか?」
「あいつら、助からないって」
「……ダンテ~!良かった……グスッ、ありがとう!本当にありがとう!
ケイティはダンテに抱き付き、泣きながらお礼を言ってきた。
「しばらくすれば意識も戻ると思いますので、何か栄養があるものを食べさせて下さいね」
「分かった!俺が何か買ってくる!」
そう言って、ジョンが勢いよく飛び出して行った。
「おい、ジョン!……全くあいつは……改めて礼を言わせてくれ、息子を助けてくれてありがとう。俺はA級パーティー『紅の絆』リーダーのエリックだ。それと、妻のケイティと息子のダンテ。さっき出ていったのはケイティの弟ジョンだ」
「よろしく」
「私はサヨです。よろしくお願いします」
「僕はアル。よろしく」
「立ち話も何だから居間に行こう」
「悪いけど、ダンテが起きるまであたしは側にいるよ」
エリックに案内され、私たちは居間へと移動した。
読んでくれて、ありがとうございます。
次回、「協力者」です。




