試作品
43話目です。
話し合いが終わり、それぞれ準備のために行動を開始した。
帰る時に、エヴァンの背中が哀愁に満ちていたが気にしないでおこう。
私とアルは私の部屋で作業をする事にした。
ライリーとオリビアは準備を手伝うためここにはいない。
「ネックレスはチェーンがいいかな?紐がいいかな?」
「まず宝石をいくつか加工して、それに合わせて考えてみる?」
「いい考えだね。さっそく、やってみようよ」
2人それぞれ、さっきの要領で形を変えながら加工した。
しばらくして、作った物を並べてみた。
宝石の形は丸い物から四角や円筒等もあり、大きさも様々で種類も多い。
「ふぅ~これくらいでいいかな?」
「そうだね。装飾はどうする?」
「う~ん……ちょっとやってみていい?」
「うん」
私は前世の装飾品を思い出しながら作ってみた。
(アンジェラさんなら、エメラルドかなぁ……これにミスリルの台を作ってから)
メイソンに教えて貰ったようにミスリルに魔力を通していく。
(えっと、宝石に沿って柔らかく柔らかく……薄く伸ばして、形を合わせて……できた!あとは小さいエメラルドとダイヤも同じようにして、枠は……ハートにしようかな)
出来たのは、ミスリルのハートの中に丸いエメラルド、ハートの上の部分に小さなエメラルドを1つと、その両脇に小さなダイヤが1つずつ付いてるペンダントトップだ。
「どうかな?アル」
「へぇ~初めて見るデザインだね。もしかして、前世のかい?」
「うん!駄目かな?」
「駄目なんかじゃないよ!宝石の装飾はフェリが考えたので作ろうよ」
「いいの?じゃあ考えてみる」
それから他の物も作り、いよいよ付与をする事になった。
「付与は魔法を込めるんだよね?」
「そうだね。何にしようか?前回は堕胎薬だったから毒物無効はいるよね」
「直接危害を加えられた時ように、回復系とか防御系も入れたいよね」
「あとは……隠匿とか入れたら、お腹が大きくなってもバレないんじゃない?」
「それいいかも!あっ、通信とかできれば直ぐ知らせる事ができるよ」
「ならペアで作って、相手にも付けてもらわないとね」
「あ~そうかぁ」
ああでもない、こうでもないと言いながら、「心眼」を使い許容量を越えないように付与していった。
付与した後、宝石の中に星のような光が宿っていて気になったが後日、メイソンに見てもらう事にした。
いちいち鑑定して、付与した効果を確かめなくていいように、装飾品の種類別に効果を分けることにした。
ネックレス……毒物無効
指輪……防御
ブレスレット……位置把握
ブローチ……回復
髪飾り……隠匿
イヤリング・ピアス……通信
カフス……録音
「メイソンさんに見てもらわなくちゃ」
「明日、来るらしいよ」
「せっかくだから、皆の分も作りたいな。オースティンさんたちに何かあったら大変だし、お父様とお母様にもプレゼンしたいな」
「そうだね。もう少し頑張ってみようか」
「うん!」
追加で、男の人が付けても可笑しくないデザインで作ってみた。
私とアルは、忘れていたのだ。
さんざん皆に‘常識がない’と言われていた事を……もし覚えていれば、この場に他の者がいれば、あんな事にはならなかったのかもしれない。
数時間後、ライリーとオリビアが夕食のために呼びに来た。
家族で夕食をとり、部屋に戻ると今日は疲れていたので直ぐに寝て、朝起きるといつもと同じようにアルがいた。
「おはようフェリ」
「……おはようアル」
目を擦りながら挨拶すると、ちょうどオリビアがやって来た。
「おはようございます。フェリーチェさ……ま!?」
「おはようございます」
「おはよ~」
「アルベルト様!?何故こちらに?」
「ここで寝たから」
ビックリして固まるオリビアの質問に、アルはニッコリ答えた。
「……そうですか」
オリビアが諦めたように言うと、今度はライリーがやって来た。
「オリビア、アルベルト様を知らないか?部屋にいらっしゃらないんだ。寝た形跡もないし」
「ライリー……アルベルト様ならこちらにいらっしゃるわ」
「え?」
「ライリー、おはよ~」
「おはようございます」
部屋の中から挨拶するとライリーが部屋に入ってきて、目を丸くして挨拶した。
「……おはようございます。アルベルト様、フェリーチェ様」
その後、アルは部屋に戻りお互い身だしなみを整えてから、朝食に向かった。
すでに、サマンサとクロードは席についており、私たちが席に座ると食事を始めた。
「そういえば、昨日は何をしていたんだ?魔力を感じたが」
「え!?特に何もしてないです」
「そうなのか?」
ジッと見られ、目を泳がしているとアルが助け船を出した。
「魔力操作の練習をしてたんだよ。大事な事だから」
「確かに大事な事だな」
「偉いわねぇ。でも、新しい生活に慣れるまでは無理しては行けませんよ」
「「は~い。お母様」」
「さて、そろそろ王宮に行ってくる。サマンサ、あまりはしゃいで2人を連れ回すなよ。午後からメイソンが来るらしいからな」
「もう!分かってますよ」
クロードが仕事に行くので、玄関に移動して見送りをした。
「行ってくる」
「お気をつけてくださいね」
「「行ってらっしゃい」」
クロードはサマンサの頬にキスし、私とアルの頭を撫でて馬車に乗り王宮へと出発した。
「フッフッフ……さぁアル、フェリ、買い物に行きますよ!」
「「……は~い」」
直ぐに馬車が来て、買い物をするために出発した。
その後、服屋、雑貨屋、子ども用品店など、たくさん回り帰ったのは昼だった。
「あ~!楽しかった!」
「「疲れた~」」
少し休憩してから、昼食をとりメイソンが来るのを待っていた。
読んでくれてありがとうございます。
次回、「使ってみよう」です。




