報告
28話目です。
チェイスの怒鳴り声に驚いていると、さらに怒られた。
{聞いてるのか!待っても待っても連絡がないし、こっちからすれば弾かれる……いったい何してたんだ!無事なのか!}
{心配かけてごめんなさい……いろいろあって連絡出来なかったの。弾かれたのは多分、結界張ってた時だと思う。今はディアネス共和国の王都にいるの。怪我もしてないし大丈夫だよ}
{本当に大丈夫なんだろうな……というか王都?随分、早く着いたな}
{途中で会った人たちに乗せてもらったの。今日、着いたんだ}
{信用出来るのか?今も一緒にいるのか?}
{とっても優しい人たちだから大丈夫。今はそれぞれ家に帰ったよ}
{ちょっと待て1人なのか!?}
{1人じゃないよアルがいるから}
{……アルって誰だよ}
{え~と……保護者?}
{疑問系か……}
アルの事をとう話そうか考えていると、アルが近付いて来た。
「フェリ、僕もまぜてくれる?」
「うん」
アルが隣に座り、念話を始めた。
{初めまして、チェイス……君の事はフェリから聞いてるよ}
{あんたが……フェリってのは}
{この子の名前、‘フェリーチェ’僕が名付けた。僕はフィアフル……黒龍だ}
{こ!?冗談だよな……}
{本当だよ……油断してたら帝国に捕らえられてね。君たちが逃げた次の日にベイリー家に運ばれて、フェリに助けてもらったんだ}
{……ちょっと待ってくれ、次の日って……まさか逃げてなかったのか!?}
{うっ……気になる事があったから屋敷に戻ってたの}
{気になる事?ちゃんと説明してくれるか……フェリーチェ}
{……うん}
それから、魔道具の事とアルの事、2人で旅してエヴァンたちとの出会い、今の状況を話した。
チェイスは最後まで聞いてから溜め息を吐いた。
{はぁ~何て無茶を……俺が言える立場じゃないが、1人で何でもやろうとするな。相談くらいしてくれ}
{ごめんなさい}
{フィアフル、あんたはこれからもフェリーチェと行動するのか?}
{そのつもりだよ。僕はフェリに助けられたし、何より僕が側にいたいから}
{そうか……フェリーチェ、どうなるか決まったら連絡してくれ}
{分かった……チェイスたちはあれからどうだったの?}
{お前のおかげで無事に帰れた。内通者とその協力者も捕らえたが、まだバタバタしているな}
{ねぇ、チェイスとカルロスさんは大丈夫だったの?宰相様から何か―――}
{やめろ!思い出したく無いんだ……}
{わ、分かった}
{それじゃあ切るぞ?ウィルへの手紙は忘れないでくれよ}
{はぁ~い}
念話が切れたのでアルを見て問いかけた。
「チェイスに黒龍って事、言って良かったの?」
「問題ないよ。彼は無闇に話さないだろうしね」
チェイスへの報告も済んだので、食事を作る事にした。
「じゃあ、変化するから見ててね」
「ちゃんと見てるよ」
(よし!やっぱりイメージだよね……どうせなら私が成長した姿にしたいけど……ん~)
だいたいのイメージができたので、早速スキルを使ってみた。
「変化」
――ポン
私の体を煙が包み込んだので、目を瞑り煙が晴れるのを待った。
少しして、目を開けるとさっきより視線が高くなっていたので、成功したと思いアルを見ると、目を見開き固まっていた。
「………………」
「アル……どうしたの?もしかして、失敗したかな」
声も少し変わっていた。
反応がないので、鏡で見ることにした。
「|鏡|ミラー》」
大きめに出した鏡を見ると、そこには15才位の少女が写っていた。
髪は腰まであり、手足がスラリと伸びて背も160㎝位はあるだろうか……顔はどこか#母親__あの人__#に似ていた。
服も体に合わせて大きくなっているし問題なさそうだ。
「フェリなんだよね?」
いつの間にかアルが側に立っていて、いつもより近い距離に驚いた。
「わぁ!……そうだよ」
すると、アルが私の頬に触れて微笑みながら言った。
「……綺麗だ」
「っ!?……ありがとう」
私は恥ずかしくなったがアルのから目が離せなくてドキドキしていた。
――グゥ~
その時、部屋に大きな音が響いた。
「……プッ……ハハッ……フェリっ……」
「……っ笑わないで!」
鳴り響いたのは、私のお腹の音だった。
アルは、我慢しようとしたが、失敗して吹き出し私は顔を赤くしながら怒っていたが、恥ずかしくて涙が滲んできた。
「ごめんフェリ、泣かないでよ……フフッ……僕もお腹がすいたから作ってくれるかい?手伝うからさ」
確かにお腹がすいてるし、全く悪びれないアルに何を言っても反省しないと諦め食事を作る事にした。
今日は、いろいろあり疲れていたので前にアルが狩ってきた肉を塩と胡椒で焼いて、ロバートさんから貰った野菜のサラダと、オニオンスープを作る事にした、調理用魔道具の使い方はアンジェラさんから聞いていたので、アルに材料を切ってもらい2人で手早く作った。
「ごめんねアル、簡単なものしか出来なくて。明日はちゃんと作るからね」
「気にしないで、美味しそうだね」
「「いただきます」」
ちなみに私は子ども用の椅子が無かったので、変化したまま食べていた。
「アル、部屋なんだけど屋根裏部屋がある方、使ってもいい?」
「構わないよ」
「ありがとう。アルは隣の部屋を使ってね?」
「………分かったよ」
返事に間があったが、私は気にしていなかった。
食事が終わり洗い物をして、子どもに戻って魔法で体を綺麗にしてから着替えて眠りについた。
一方その頃王宮には、
「書いても書いても終わらん……クソッ!あいつら、とっとと帰りやがって……こんなもん終わるわけないだろ……だいたい……」
書類の山に囲まれて、独り言を言いながらひたすら手を動かし続ける男がいたとか。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回、「黒龍とは」です。




