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目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~   作者: そらのあお
出会い
25/83

答え

24話目です。

夜が明けて日が登り始めた。


(う~朝かぁ……起きなきゃ)


私が目を開けると、いつも通り私を抱き締めたアルが笑みを浮かべ見ていた。

最初は驚いていたが、もう慣れてしまった。


「……おはようアル」


「おはようフェリ、さぁ顔を洗おう」


「うん……あれ?ここって……」


顔を洗うために起き上がると、昨日と違う場所にいることに気付きアルを見上げた。


「そのことも含めて話しがあるから、先に顔を洗おうね」


「分かった」


魔法で出した水で顔を洗うと向き合って座り、アルが話し始めた。


「先ずはフェリに謝らないといけない事があるんだ」


「な~に?」


「君に相談せずエヴァンたちに僕らの事を話した。フェリが転生者なのは話してないよ」


アルが申し訳なさそうに言った内容に驚いたが、理由もなくそんな事をするとは思わなかったので聞いてみた。


「!?……そうなんだ……理由を聞いてもいい?」


「もちろん話すよ。フェリ、君は公にされてないとはいえ、アンブラー帝国の貴族の血を引いている……これは変えられない事実だし、君自信の力も子どもとは思えないものだ」


「うん」


「そして僕も人間たちからすれば、強い力を持つ黒龍……帝国の様に手に入れようとする者も少なくない」


「……うん」


アルの話が進むにつれ、私は段々とうつむいていった。


「そんな僕らが、誰にも知られずディアネスに住んだとして、もし正体や持ってる力がバレた時、僕らの意思とは関係なく何らかの争いが起きる可能性がある。その時に、協力してくれる人たちが必要だ」


「それがあの人たちなの?」


「昨日、少しだけど彼等の人となりを見て、話して問題ないと思ったんだ。まだ返事は保留にしているから、もし断られたらフェリには悪いけどディアネスには住めないと思う……ごめんね」


アルが謝ってきたが、私には彼を怒ることも責めることも出来なかった。


「謝らないで……アルの言うとおりだよ。チェイスたちも言ってたもの、私の力は特殊だから知られれば危険だって……まだ、この世界の常識が分からないし、『心眼』だって、アルに注意されなきゃ会う人皆に使ってたもん」


私が初めてアルを見たとき「心眼」を使ったがステータスを見る事は出来なかった。

屋敷を出た後、聞いてみるとステータスを見ようとした事に気付き弾いたそうだ。

その時に、相手の了承なくステータスを見るのはルール違反だし、見られたくない者が攻撃して来ることもあるから、状況を判断してスキルを使うようにと言われていた。


「それは仕方ないよフェリ……僕だって人間の常識なんてほとんど分からないし、一緒に覚えていけばいいさ」


「うん……その事でも、アルの言うとおり協力者は必要だよね……このままだと悪目立ちしそうだし」


「まぁ最悪、人間の国にいれなくなっても僕が住める場所を探すから問題ないよ」


私はアルがそう言ってくれたのが嬉しかったが、同時に不安でもあった。


(アルはきっと同情して一緒にいてくれてるだけ……待ってる人がいるかもしれない……いつまでも頼ってちゃいけないよ……1人になっても生活出来るようにしっかりしなきゃ)


急に黙り込んだ私を見て、アルが心配そうに聞いてきた。


「フェリ、どうしたの?何でそんな泣きそうな顔してるの?」


「え?……何でもないよ!ちょっと想像して悲しくなっただけだから」


「大丈夫だよ。そうならないよう2人で頑張ろう」


「……うん」


その時、足音が近付いてきてブレイクが姿を現した。

私たちが立ち上がり挨拶をするとブレイクも返してくれた。


「おはようございます。ブレイクさん」


「おはようブレイク」


「あぁおはよう。朝食の準備が出来たから呼びに来た」


どうやら朝食を知らせに来てくれたらしい。

私はそれを聞いて喜び、アルの手を引っ張った。


「ごはん!行こうアル!」


「フェリ、慌てなくても大丈夫だよ」


ブレイクに着いて行くと、美味しそうな匂いがしてきて、お腹が鳴ったらアルに笑われたし、ブレイクの肩も小刻みに震えていた。


――ぐぅ~


「プッ……フェ、フェリっ……昨日は食事の途中で寝ちゃったからお腹がすいてたんだね……フフっ」


笑いを堪えきれていないアルに頬を膨らませ怒ったが、その顔は赤くなっていてアルが微笑ましそうに見てきた。


「ム~笑うなんて酷いよアル!いい匂なんだもん!」


「フフっ……ごめんごめん、確かにいい匂いだね。今日は一杯食べるといいよ」


そう言って頭を撫でられ、私はまた頬を膨らませた。

それから直ぐにエヴァンたちの姿が見えてきたので挨拶した。


「おはようございます」


「おはよう」


エヴァンたちがこちらを見てそれぞれ挨拶してくれた。


「「「おはよう」」」


「「「おはようございます」」」


こころなしか皆、疲れたような顔をしてたので私は不思議に思ったが、昨日の事を謝るためにアンジェラの元に向かった。


「アンジェラさん、昨日は食事の途中で寝てしまってごめんなさい」


私が頭を下げると、アンジェラが慌てて止めた。


「気にしなくてのよ!疲れていたんだからしょうがないわ。今日はお腹がすいているでしょう?たくさん食べてね」


「はい、ありがとうございます」


アンジェラに謝れたので、振り返るとアルが笑みを浮かべて見ていたので、さっきのやり取りを思い出して、むくれているとオースティンが聞いてきた。


「どうしたんだ?そんなに頬を膨らませて」


「気にしなくていいよオースティン。さっきフェリのお腹がなって笑ったから、ご機嫌ナナメなんだ」


「そうなのか!フェリーチェ、怒りながら食べる食事は不味くなるぞ?ほら、機嫌直して食べようぜ!な?」


「……はぁい」


オースティンに言われたとおりなので、機嫌を直して食べる事にした。

怒りながらもアルの隣に腰を降ろした私を、皆が微笑ましそうに見ていたので、ちょっと恥ずかしかった。


「「いただきます」」


美味しい食事を談笑しながら食べ終わると、エヴァンが話を切り出した。


「「ごちそうさまでした」」


「少しいいか?……フィアフル、昨日の件なんだがな私個人としては2人が国に住んでくれるのは嬉しく思う。だが、私の立場としては1人で結論を出すわけにはいかないのだ」


「そうだね」


私はエヴァンの言葉に少し落ち込んだ。


(やっぱりダメなのかな……どこに行くか考えないと)


「だから、信頼出来る者と相談して決めたいと思う。その間、国内に滞在して待っててもらえないか?」


「え!?」


続いた言葉に驚く私と違い、アルは目を細めエヴァンを見据えた。


「それは構わないよエヴァン、だけど……昨日、僕が言った事は覚えてるかい?」


「無論だ……その為に2人の事は限られた者にしか話すつもりは無いし、そうならないよう最善を尽くす」


しばらく無言でエヴァンを見た後、アルは頭を下げた。


「感謝するエヴァン」


アルに続いて私も頭を下げた。


「頭を上げてくれ。それとフィアフル、1つ確認したいのだが、帝国はどうやってお前を捕らえたんだ?黒龍を捕らえる程の力を持っているなら、今まで異常に警戒しなくてはいかん」


アルはエヴァンの質問に歯切れ悪く答えた。


「あぁ~それねぇ……言わなきゃダメかな?」


「話してくれ」


「あの日はね、昔馴染みに会ったから挨拶がわりにイタズラしたんだ。そしたら彼、怒っちゃって力を封印されてさぁ‘条件を満たせば解けるから、せいぜい頑張れよ!’て言って帰っちゃった。条件を教えてくれなかったから、全然ダメで疲れて寝てたら捕まっちゃたんだよ。彼等は僕の事、ブラックドラゴンだと思ってるんじゃないかな」


「「「「「「「…………………」」」」」」」


あんまりな理由にエヴァンを始め、話を聞いていたオースティンたちも言葉が出なかった

私は、疑問に思った事をアルに聞いてみた。


「じゃあアルは今も力を封印されてるの?それと、黒龍とブラックドラゴンって違う種族なの?」


「それがさぁ、フェリに鎖と隷属の首輪を壊してもらった時に、力は戻ったんだよね……何でだろ。黒龍とブラックドラゴンは……そうだな……格が違うと言うか、力や能力に差があるんだ。例えば、フェリも知ってるとおり僕は人型や他の生き物に姿を変えたり、多種族と話したり出来るけど、ドラゴンはそれが出来ないんだ」


「へぇ~そうなんだ。力が戻って良かったねアル」


「ありがとうフェリ」


アルが私の頭を撫でていると、黙っていたアンジェラが口を開いた。


「昨日も思いましたが、そうしていると親子見たいですね。フィアフル様も馴れているというか……もしかして、お子様がいらっしゃるのですか?」


(!?……そうだ……子どもをあやすのに慣れてるから、やっぱり家族がいるのかな)


そう考えてると、アルはアンジェラの言葉を否定した。


「子どもはいないよ?そもそも結婚してないし」


アルがそう言うと、オースティンが驚き声を上げた。


「はぁ!?お前、黒龍なら長く生きてるだろ?一度も無いのか?」


「無いよ……龍は寿命が長いからか子孫を残そうとする本能が少ないんだ。だから、一生に一度だけ番を見つけて、番だけを思い続けるんだよ」


「どうやって見つけるんだ?」


「僕はまだ見つけて無いからなぁ……聞いた話だと龍は基本、他者に関心が無いんだけど番の事が大事で大事で仕方なくて離れたくなくなったり、傷つけたり泣かせる奴を許せなくて消そうとしたりするらしいね」


「それじゃあ、もし番が死んだりしたら大変じゃないか?」


「それは大丈夫だよ。番の契りを交わすと、番の命は相手の龍と共有することになるから、番は龍が死なない限り、死なないんだ」


「へぇ~そうなのか」


オースティンが感心してると、エヴァンがオースティンを呼び寄せた。


「オースティン……ちょっと」


「何だ?兄上」


「いや……そろそろ出発の準備をしよう。フィアフルたちはそこで待っててくれ」


「そうさせてもらうよ」


オースティンを呼び寄せ、エヴァンたちは馬車の方へ歩いて行った。


「でも、アルは寝かしつけるのうまいよね。私いつもぐっすり寝れるもん」


「前に人間の国で生活してるときに見たのを真似してるだけだよ。でも、フェリがそう言ってくれて嬉しいな」


実は、アルは私が寝た後結界を張って眠りを邪魔しないようにしてたんだけど、そのれを知ったのは先の事だった。

一方その頃エヴァンたちも話し合いをしていた。


「それで?なんなんだ兄上」


「お前、フィアフルの話しをどう思う」


「取り合えず、帝国に龍を捕らえる程の力があるかは、あの話しだけだと判断できないな。だが、フェリーチェが回収した魔道具は調べたほうが――」


「それもだが……番の事だ」


エヴァンはオースティンの言葉を遮った。


「番?それが何なんだよ」


オースティンは訳が分からないと言う風に聞き返したので、他のものは呆れていた。


「気付かんのか?フェリーチェに対するフィアフルを態度を思い出してみろ」


「はぁ?……たしか………え!?……まさか」


「分かったか?まぁ断定は出来んが」


「まだ、子どもだぞ!?」


「龍は長命だから、歳は関係無いのかもな……成長するのを待てばいい……しかし、本人も自覚は無いみたいだから我々の考え過ぎかもしれんしな」


「そうか?」


兄弟の会話にルイスが入ってきた。


「その件は保留にしましょう。エヴァン様、先に2人の滞在先を決めなければ」


「そうだな……ロバートどこかいい場所はないか?」


「アンジェラさんが手伝っている教会の近くに何件かあります。手入れはしてありますので、直ぐ生活出来ますよ。あの辺りなら、街中から少し離れてますし、短期間ならその方がよろしいかと……あのお二人は目立ちそうですし。住む事になれば、利便のいい場所を紹介しますので」


「フム……それでいいか」


「エヴァン様、私とメイソン、ブレイクは帰り次第種族代表に大まかな事情は話しておきます」


「それなら、今日には着くだろうから、明日の9時に私の私室に来てくれ」


エヴァンがルイスたちに指示したが、返事が無かった。


「どうした?不都合があるのか?」


聞いてきたエヴァンにオースティンが溜め息を吐き、答えた。


「はぁ~……不都合があるのは兄上だろ」


「何故だ?」


「兄上は宰相たちに黙ってトラスト王国に行ったのを忘れたのか?」


「なっ、何を言ってる!ちゃんと言ってあるぞ!」


「毎度毎度、言うがな……置き手紙じゃ‘ちゃんと言ってる’とは言わないんだよ!帰ったら説教されるに決まってるだろう!」


「それに、お義兄様がいない間の執務も溜まっているでしょうし」


「帰ってから説教の後は、徹夜で執務でしょうね……頑張ってくださいエヴァン様」


「なぁに、お主はまだまだ若いんじゃからそれくらい大丈夫じゃろう」


「そうだな。体力は獣人並にあるし、午後から集まれればいい方だと思うが、下手すれば翌日になるな」


「そういう所は学院の頃から変わりませんねエヴァン様」


口を挟む暇なく言いたい放題のオースティンたちにエヴァンも反撃に出た。


「言いたい放題言いやがって……分かってて着いて来たお前たちも同罪だろうが!なんで俺だけ怒られるんだ!」


しかし、その反撃は失敗に終わった。


「口調が素になっておられますよ陛下。我々はいち冒険者でしかありませんので……陛下の‘トラスト王国に行くからついてこい’と言う‘依頼’を遂行したまでですし、ロバートに至っては仕事でトラスト王国に行く時に、学院の同級生に押し掛けられただけですから、宰相様たちはきっと分かってくれるでしょう……残念だな兄上」


オースティンが、ニヤニヤしながら答えるとエヴァンは悔しそうに睨み付けたが、他の者が頷いてるのを見て肩を落とした。


「こんな時ばかり……雇われたと言うなら助けろよ……それでもS級かよ」


エヴァンがブツクサ言ってると、声をかけられた。


「ねぇ、そろそろいいかい?早く出発しないと到着が遅くなるよ」


エヴァンが声のした方を見ると、待ちくたびれたフィアフルが、フェリーチェを抱えて立っていた。

読んでくれてありがとうございます。

次回、「到着」です。

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