別れ
第1章最終話です。
――シュン
「ぬぉ!?またか!」
私たちが転移すると、またカルロスさんの前だった。
「バルドたちにも、これまでの経緯は話しておいたぞ」
「分かった……ガイスたちは目覚めたか?」
「いやまだだ……それでどうだった?」
「あぁ大丈夫だ……皆も聞いてくれ!今、救援部隊が帰国の準備をしているからもう少ししたら転移する……だがその前に皆に頼みがある!」
「頼みとは何だチェイス」
皆を代表してレオーネ様が聞いてきた。
「はい……皆も分かっていると思いますが、今回こうして全員で脱出できたのはこの子のお陰です」
チェイスの言葉に全員が頷く。
「しかし、この子の力は特殊です……その力が知れ渡れば、この子に危険が迫るでしょう……なので今回は偶然いた魔術師に依頼して協力してもらった事にして欲しいのです」
私はチェイスの頼みに驚いた。
「それは確かに……救援部隊には知らせたのか?」
「いいえ、話したのは責任者だけです……彼も了承してくれました」
「そうか……僕はチェイスに賛成だ!皆はどうだ?」
レオーネ確認すると全員が頷いてくれた。
子どもたちは理解しているかは分からないが、何とかなるだろう。
「皆さん……ありがとうございます」
私は感謝を伝え頭を下げた。
「礼を言うのは僕たちのほうだ……本当にありがとう」
「それでは、今から10分後に転移しますので、それまでゆっくりしてください」
皆、嬉しそうに笑いあっていたので今のうちにチェイスと話をした。
{チェイス、ちょっといい?}
{どうした?}
{あのね……私、皆を転移させたら、そこで別れようと思うの}
{それは……もう決めたのか}
{うん}
{分かった……ならディアネス共和国の情報と地図渡しとく}
そう言って紙を渡してきた。
{ありがとうチェイス}
{それはこっちのセリフだ……ありがとう}
チェイスは私の頭を撫でると、セレーナさんたちの元に向かった。
時間になったので皆に手をつないで輪になってもらい、転移場所は合流地点の手前なのを話しておいた。
私はカルロスさんにも念話でお礼を伝える事にした。
{カルロスさん、スキルの事ありがとうございました}
{ 気にするな……嬢ちゃんがいなきゃ俺は死を待つだけだったからな感謝している……まぁ国に帰ってから大変だがな}
カルロスの最後の言葉に罪悪感が込み上げてきた。
(うっ、宰相様の事どうしよう……)
私は宰相の件を話すか迷っていたが、チェイスに言われていたので結局、話さない事にした。
{あの……カルロスさん……ごめんなさい}
{何がだ?}
――シュン
私は聞こえないフリをして転移した。
無事に転移できたので、皆に別れを伝えると驚きながらも口々にお礼をしてくれたが、ウィルが泣き出した。
「やだ!おねえちゃんもいっしょがいい!うわ~ん」
「ウィル君!?泣かないで」
泣きながら嫌がるウィルにチェイスが声をかけた。
「ウィル……おっ、お姉ちゃんは行きたい場所があるから困らせたらダメだ……だいたいこの子ウィルより歳はし――痛ぇ!」
ウィルを諌めていたチェイスが急に叫んだので驚いて見ると、セレーナがチェイスの足を踏みつけていた。
(うわぁ……痛そう)
「チェイス余計な事いわないの!ウィル、お姉ちゃんとは一緒に行けないけど、会えないわけじゃないのよ」
「ぐすっ……ほんとう?」
そう言って私を見てきたので、力強く頷き笑顔で答えた。
「もちろん!直ぐには無理だけど落ち着いたら連絡するね」
「うん!」
ウィルが泣き止み笑顔なったので安心していると、チェイスが紙を差し出してきた。
「???」
私が不思議に思ってると、教えてくれた。
「連絡先だ……手紙書いてそこに送ってくれ」
「分かった!」
嬉しくてニコニコしてると、チェイスが念話をしてきた。
{言っておくが何かあれば念話してこいよ!俺からもするから……セレーナにも言っておくから聞きたい事があれば遠慮するなよ絶対!それとウィルには念話の事はバレないようにな!じゃないと頻繁にしてくるぞ……あと、くれぐれも人拐いには気をつけろよ!お前は顔がいいから直ぐ売られるぞ!いいな!}
{わっ、分かったよ……}
チェイスの勢いに負けて一歩下がった私をウィルが不思議そうに見ていて、セレーナは楽しそうに笑っていた。
「それじゃあ……また」
そう言って転移しようとしたとき、カルロスが声をかけた。
「ちょっと待った嬢ちゃん、さっきのは何だったんだ?」
「えっと……あれは」
チラッとチェイスを見るとカルロスを見ながらニヤニヤしていた。
「カルロスさん……御愁傷様です」
「は?何がだよ!?」
「それじゃあさよなら!」
私は逃げる様に転移した。
その際、カルロスの呼び止める声とチェイスの笑い声を聞いた気がした。
第1章終わりです。
引き続き宜しくお願いします。
 




