尋問
15話目です。
「何故だと思う?ガイス!」
――ギィーン
カルロスはガイスの剣を弾き飛ばした。
ガイスが後ろに下がると4人がいた方から呻き声が聞こえ振り向くと、そこに立っていたのはイーサンとリアンだった。
「イーサンとリアンまで……どういう事だ!お前らは監禁されているはず……いやその前に、何で足があるんだ!?」
ガイスの疑問にカルロスが答えた。
「そんなもん脱出したからだろうが!それに足だって最初からあったぜ?」
「ふざけんな!俺は確かにお前らの足を――」
「ほう……俺たちの足を切ったのはお前か……覚悟はできてんだろうなぁ」
カルロスたちはガイスに剣を向け近寄った。
「!?クソッ……動くな!お前ら3人がどうやって抜け出したか知らねぇが直ぐに屋敷に連絡するぞ!分かったら動くな!」
カルロスたちは足を止め、少し笑いながらチェイスに尋ねた。
「だとよチェイス……どうするんだ?」
「そうだな……ガイス、好きにしろ」
チェイスの言葉にガイスは目を見開き固まった。
「は?俺は本気だぞ!家族や王子がどうなってもいいのか!!」
「だから好きにしろって」
「クソッ!」
{おいガイスだ!聞こえるか!獣人が3人逃げ出しているぞ!}
ガイスが屋敷の者に念話で話しかけたが返答はなかった。
「どうなってる!?もう一度――」
「何度やっても同じですよ……貴方の声は届きません」
ガイスがもう一度念話をしようとした時、子どものような声が遮った。
――サク――サク
ガイスが声の方へ視線を向けると、フードを目深にかぶった小さな者が近づいて来て、チェイスの隣で立ち止まった。
「子ども!?……お前は何者だ!……さっきのはどういう意味だ!」
「言葉の通りですよ。此処には少し特殊な結界を張りましたので、念話は届きませんし声や音も外には漏れません。私は……通りすがりの魔術師です」
「バカな!?そんな結界聞いたことねぇ!」
「なら何度でも試してみては?……まぁ出来たとしても意味はありませんが」
「意味がないだと?」
「えぇそうです。貴方はカルロスさんたちが此処にいる理由を理解していないのですね……彼らが自分たちだけで逃げて来たと?」
「……まさか!?」
――サクサク
その時、ガイスの後ろから誰かが近付いて来た。
「本当に内通者がいたのだな……信じたくはなかったが」
ガイスがその声を聞き、ゆっくりと振り返った。
声の主を見てガイスは目を見開きその名を呼んだ。
「王子……」
レオーネの側にはライルとロイが剣を構え控えていた。
チェイスは今回の黒幕を知るためにガイスに問いかけた。
「ガイス、先程言っていた‘あの方’とは誰のことだ?」
「…………………」
ガイスは答えず、沈黙が続いた。
カルロスが痺れを切らしガイスを殴った。
――ドカッ
「いい加減にしろ!お前たちの計画は失敗したんだ!」
「……………………」
殴られてもなおガイスはしゃべらなかったので、チェイスが拷問にかけると言い出し、カルロスが賛成した。
「大した忠誠心だなガイス……だが俺たちもこのまま国に帰るわけにはいかないんでな、拷問してでもしゃべって貰うぜ」
「そうだな……レオーネ様は戻って下さい。イーサン、リアン頼んだぞ」
「「はっ!」」
イーサンとリアンはレオーネを連れて移動した。
その時のレオーネは無言で、顔はうつむいていて見えなかった。
「ライル、ロイ、4人を起こせ!!」
「「はい!」」
2人はチェイスに言われ気絶した4人を1人1人起こしながら縄で拘束していった。
ガイスはカルロスが拘束していた。
「さて、カルロスどうする?お前たちと同じ様に足を切るか?」
「そんなもの生ぬるい!まず、骨を1本1本折って、それから――――」
チェイスとカルロスの会話にガイスたちは震え、逃げ出そうとしたが後ろにライルとロイがいるので出来なかった。
その時、魔術師が2人に声をかけたのでチェイスが不思議そうに聞いてきた。
「あの~ちょっといいですか?」
「ん?どうしたんだ?」
「チェイス、カルロスさんも、拷問にあまり時間はかけられないですよ?いつ屋敷の人が気付くか分かりませんし」
魔術師の言葉にガイスたちはホッとしたようだが、チェイスたちはそうはいかなかった。
「それはそうだが……黒幕が分からないうちは国に帰れないしな」
「チェイスの言う通りだ……このままでは、国に帰った後レオーネ様が危険だ」
「分かっています。なので、時間をかけず情報を聞きましょう。制裁は国に帰ってからでも遅くないでしょう?」
「しかしどうやって」
「まあまあチェイス、ちゃんと考えがあるから。2人ともちょっと………」
「何だ?」
魔術師が手招きしたので2人は近付きしゃがみこんだ。
魔術師が何かを耳打ちして、それを聞きながら2人は頷いていた。
しばらくして話終わったのか、魔術師がガイスたちに近付いて来た。
「どうもお待たせしました。話がついたので、此処からは私がお相手しますね」
「「「「「はぁ!?」」」」」
魔術師の言葉にガイスたちは驚きチェイスたちと魔術師を交互に見ていた。
だが直ぐにガイスはニヤニヤしだした。
「ハッ!てめえみてぇなガキに何が出来るんだ?魔法は多少出来るみてぇだが俺らは絶対話さねぇ」
「いいえ……貴方たちは話しますよ。だって……」
「だって何だよ」
「クスッ……だって誰だって自分の命は大事でしょう?それに、貴方は‘あの方’に対する忠誠心があるみたいだけど………他の方たにちはどうかしら?」
「な!?……命だと?何をするつもりだ!」
「フフフ……ハッハハハ」
突然笑いだした魔術師にガイスたちの緊張が高まる。
余裕ぶっているが、子どもなのに聞いたことのない魔法を使うことや、何よりチェイスたちの落ち着いた態度がガイスたちの不安を煽っていた。
「何がおかしい!」
「クスクス……すいません。これからのことを考えると楽しくてつい……1つ質問です貴方には私がどう見えます?」
「……ただのイカれたガキだ」
「じゃあそのイカれたガキの特技を教えてあげましょう。私の特技は魔法ではないのですよ」
魔術師は更に近付きながら、小さな手をガイスに伸ばした。
「何だと?」
「私の特技は………触れたモノの命を吸い取ることです」
――ピタッ
魔術師の手が、ガイスの額に触れるとガイスの体に異変が起きた。
――ズズッ
「なっ!?力が……どうなっ……」
――バタン!
ガイスが力なく倒れ動かなくなり、それを見ていた他の4人が悲鳴を上げた。
「ヒィッ!」
「待ってくれ!話すからっ!」
「死にたくない………死にたくない……」
「化け物!」
「そんなに怯えなくても話してくれるなら殺しはしませんよ……話してくれますよね?」
魔術師が、手を伸ばしながら問いかけると4人は首を何度も縦に振ったのでチェイスたちに任せて魔術師は離れた場所に移動した。
4人はチェイスたちに今回の関係者について話し始めたが念のためにもう一度、脅しをかけた。
「もし、チェイスたちに話してることが嘘なら……監禁して、私のエサになって貰いますよ。」
魔術師が手をヒラヒラさせながら言うと、4人は直ぐ反応した。
「嘘じゃない!」
「「「そうだ!」」」
魔術師がチェイスとカルロスに視線を向けると、2人が頷いたので4人に視線を戻した。
4人が魔術師を見ていると、突然魔術師の姿が消え、後ろから子どもの声が聞こえた。
「では、しばらくおやすみなさい」
4人の意識は遠退き、やがて闇に飲まれた。
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次回、「一段落」です。




